来年からの相続増税時代に向けて、あらゆるところで相続対策、争続対策、相続税対策といった言葉を見かけるようになる機会がふえてきました。新聞では、相続増税時代に向けての土地活用のセミナーの広告もまことしやかに目立ってきています。TVでは、相続増税時代に向けた特集番組が組まれています。

 相続問題は昔から大きなテーマとして存在していわけですが、今までは相続税という税金に関しては毎年の亡くなる方のうち約4%の方が対象となるということもあって、相続税の心配をされる方はごく一部の限られる方でした。しかし、来年からの基礎控除額の減額によって、都市部の土地の路線価の高い地域では、戸建ての持ち家に住んでいるだけで、その心配が出てくることとなってきました

 今までは、相続税なんて気にしなかったかたでも、都心部の持ち家のかたにとっては、今回の基礎控除額減額は…それはそれは…気になってくるものでしょう。

「小規模宅地等の特例」の要件とメリット

 厄介なのは、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例や、配偶者の相続税額の軽減といった特例規定を適用して相続税額が0円となった場合でも、相続税の期限内申告書の提出が必要となってくることです。

 小規模宅地等の課税価格計算の特例は、来年の改正以降は、330平方メートルまでは評価額の実に80%もの金額が軽減されることとなります。

 例えば、被相続人の居住の用に供していた土地が330平方メートルで路線価が50万円/平方メートルの場合だと、敷地形状等の要素を考えないで、そのまま乗じて計算すると1億6千5百万円の評価額となります。

 その土地を相続や遺贈で取得した者が、被相続人の配偶者であれば、細かな要件を気にすることなく小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例の規定の適用を受けることができます。

 また、その土地を相続または遺贈により取得した者が、その被相続人の子供であれば、一定の要件(同居しているか非同居の場合はその子供およびその子供の配偶者の所有している家に相続開始前3年を超えて居住していないこと等の要件が必要。この要件は細かい規定ですので必ずご自身で再度、確認してください)を満たしていることと相続開始から申告期限まで引き続きその住居を取得した者がその住宅に居住していることがその必要な要件となってきます。

 とにもかくにも、小規模宅地等の課税価格計算の特例の規定の適用を受けることができれば、上記1億6千5百万円の評価額は、その20%の3千3百万円に軽減されます。

 これは、例えば、相続税の超過累進税率が20%の場合であったとすると

165,000,000円×80%(軽減分)×20%(超過累進税率)≒16,500,000万円

 の相続税額が軽減されます。

 もしくは、この特例の規定を受けることにより相続税の課税価格が、相続税の基礎控除額以下となれば、相続税の納付額は0円となってきます。

 この場合のように、税法の特例規定の適用を受けて、相続税額が0円となる場合には、相続税の期限内申告書の提出が必要となってくるわけです。

相続増税に向けて、まず確認しておきたいこと

 これからの相続増税にむけて、まず、確認しておきたいこと。それは、現状で相続税はかかってくるのか、かかるとしたいくらなのかを、概算でいいから、掴んでおきたいところです。

 概算とはいえ、小規模宅地等の課税価格計算の特例の規定等の税法の特例規定の適用可否の要件については、きちんとその要件を確認しておきましょう。いざ、相続が発生し、期限内申告書を提出したら、税法の特例規定の適用が否認されたといったものでは、元も子もありません。

 特に、小規模宅地等の課税価格計算の特例の規定の適用については、子供が同居するか否かで、その適用がうけられるか否かが大きく左右されることとなります。

 もちろん、同居していなくても、受けられる要件もありますが、上記でお話した自分や配偶者の持家の居住要件のほかにも、被相続人と同居していた別の親族がいなかったことなども必要要件となりますので、細心の注意が必要です。

 こう考えてくると、相続増税に向けて、税額のシミュレーションをして、相続税の状況について確認しておく。そして、その次の段階でその税金対策を考える上では、遺産分割を考えなければならないでしょう。

 今回の税制改正では、都心部に住宅を所有しているだけでも相続税がかかってきそうな増税となっていますので、小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例の規定の適用が受けられるのか、否か、受けようとした場合のその住宅を引き継ぐ子供を誰にするのか、そしてその住宅を引き継がない子供への遺産分割をどう考えるのか…等の心の整理をまずはしてみるべきでしょう。

 その考えに沿って、円滑な遺産分割のための遺言書を残しておくとか、代償分割用の資金を生命保険で準備しておくとか…等の具体的な対策が考えられるようになってきます。

 くれぐれも、この逆の流れはお奨めできません。

 もっとも、まずいのは、いきなりの節税対策です。

 たとえば、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)に余裕があるといって、90歳まで無告知(入院していると不可)で入れる生命保険に加入してしまうといったことは、避けるべきでしょう。

 こういった保険を活用することはいいのですが、誰に何を引き継いでいくかによって、保険金の受取人や契約者を考えていく必要があります。遺産分割の青写真が出来上がる前に、相続対策を目的とした相続対策は、土地活用も含めて控えておいたほうがよろしいでしょう。

 まずは、相続税はどうなるのを確認してみる。当然、その確認には財産の棚卸が必要です。財産の棚卸で自分の財産を、再度、確認してみる。そして、今後の老後の生活に必要な資金ややっておきたいことを書き出してみる。幾らくらいは、自分の手許にのこしておいて、あとは、相続の対策で生前贈与をしてしまうとか、その財産ごとの利用区分もしておくべきでしょう。

 以上のような相続の準備や老後の生活のファイナンシャルプランニングをきちんとしておくことで、将来の相続についての心配をすることもなく、充実した老後の生活が送れるのではないでしょうか。何といっても、「備えあれば憂いなし」でしょう。(執筆者:荒木 達也)