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景気が良くなると工場が消える?

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景気が良くなると工場が消える?

 企業の業績が回復し、景気が上向きになってきたようなニュースが多い今日この頃ですが、今月から来月にかけボーナスが支給され、その金額によってはより多く方が景気回復を実感できるのかもしれません。

 こと愛知県は自動車関連産業を筆頭に各種の製造業が集積し工場などで働く方が多いので、企業の動向が我々の生活に与える影響は極めて大きいと思います。

 派遣から正社員への登用も進んでいるようですし、企業の業績も回復したので、仕事も失うこともなかろう…と我々労働者側は考えたいとこですが、この景気の回復により実は仕事場がなくなる可能性もなきにしもあらずと考えられます。

 先般発表された愛知県が試算した南海トラフ地震の被害想定は国の予想を上回り死者が最大2.9万人と見込まれ、直接被害で約13.9兆円、間接被害でも約3兆円と試算されました。

 製造業は運搬を考慮して海沿いに立地しているため津波の影響を受けやすく、生産活動への打撃が心配されます。

 自治体としてもいろいろな減災対策を考えているわけですが、企業は行政に頼らず自主的な対策を行い、その究極な選択肢として津波のリスクが高いエリアからの工場移転を選びます。

 現実に静岡県では河合楽器、旭化成、スズキ自動車などが工業移転の検討や決定を発表しており、愛知県内でもミツカンが内陸に移転を決めました。

 なかなか工場を引っ越すといっても簡単なことでなく、特に地場の企業では取引企業との関係やコスト面でその踏ん切りがつきにくいでしょうが、全国的な工場を持つ大企業は明らかに震災のリスクが高い場所に立地している工場をこの業況の回復により余剰資金ができたことで、本格的に移転を進める可能性があると考えられます。

 ちょっと前の海外移転ブームで踏みとどまってくれた工場が、今度は国外でも臨海から内陸に移転する事になり、海沿いの工場が少しづつ閉鎖され、働く場所がなくなっていく…。

 大地震も恐ろしいですが、景気が回復して仕事場がなくなり特定の地域の失業者が増えるなんてのも恐ろしい話であります。うまくバランスがとれる総合的な対策が期待されます。(執筆者:田井 能久)

《田井 能久》
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田井 能久

執筆者:不動産鑑定士 田井 能久 田井 能久

株式会社 タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/専任不動産鑑定士 大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドに転職し、資産評価業務を担当。全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。1,000件以上の評価実績を有し特に相続や訴訟に関連する案件を得意とする。海外事業では滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」業務を行い、2015年にマレーシアの企業と業務提携開始。MM2H取得アドバイス業務や海外不動産投資アドバイスを行い(https://malaysia-longstay.com/)自身も2018年にMM2Hを取得。元愛知大学非常勤講師で現在セミナー活動もしながら各種WEBメディアに記事提供を行う。 <保有資格>:不動産鑑定士 寄稿者にメッセージを送る

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