アベノミクスで成長として位置づけられているカジノ運営を合法化するための統合型リゾート施設を推進する法案(IR推進法案)いわゆる”カジノ法案”の審議が今月始まりました。治安や風紀上の問題とかがいわれていましたが、オリンピックの開催が追い風となっていっきに成立しそうな勢いであります。

 安倍首相が5月にシンガポールを訪問した折に「マリーナ・ベイ・サンズ」や「リゾート・ワールド・セントーサ」を見学し、”こんな活気のある施設を日本でも”と思うのは分からなくもありません。個人的にはカジノは負の部分も多いですが”大人のレジャー”であるのでそれをコントロールできる運営ができれば治安の悪化とか青少年への悪影響は軽減できるのではないかと思ってます。

 シンガポールではカジノを含むリゾート施設が出来たことにより約1,000億円の経済効果と35,000人の雇用創出があったと言われているので、日本でもその波及効果を期待する人は多いと思います。

 しかし我が国でも同等な効果を得るためは、”街づくり”の観点からの議論がやや乏しいことが心配されます。

 なぜなら、カジノはやはりエンターテイメント産業であるので、その他の施設として世界中から人が来て働くビジネスエリアがあり、彼らとの商用のため訪れる人へサービスする一流ホテルや一流のコンベンションセンターを備え、いわゆるMICEの環境が揃っているからこそ多くの外国人がやってきて繁盛するものと考えるからです。

 そのエンターテメントだって、シンガポールの場合、カジノだけでなくユニバーサルスタジオやF1の誘致など様々なターゲットに向けて重層的な戦略を練っています。また、人が来るためにはアクセスしやすい空港や都市インフラの充実と海外の優秀な研究者を呼び込む施設を作り、発展性の高い企業を誘致する税制改正をしています。

 そしてなによりも、外国人と渡りあえるように自国民の”教育”を最重要国策と捉えて人的資源への投資を進めています。

 このようにカジノはヒトも含めた総合的な街づくりにより、国民のレベルを上げたうえでこそ楽しめる大人のレジャー施設であって、例えるなら地道にインフラや人的資源に投資をして、しっかりした土台を作った結果に咲く”都市の華”のような気がしてなりません。

 国民が貧乏で生活に不安があったらカジノなんかやらないでしょうし、例え外国人をターゲットにするにしろ、降り立った空港が老朽化し、首都高のトンネルは崩れそうなら来たくもないし、カジノで働いているのは年金が不安なため働かざるを得ない高齢者か、ロクに英語が話せない若者なら、テンションも下がってしまうんじゃないでしょうか?

 そういうのを分かっているか分かっていないか知りませんが、カジノさえつくれば一発逆転ができると考えていらっしゃる一部の政治家さんは、どこかの会社の御曹司とは比較にならないほどHigh-Rollerであると言わざるをえません。(執筆者:田井 能久)