相続セミナーでは、よくこう説明されます。

「エンディングノートはあなたの思いを伝えられます。でも、遺言と違って法的な効力はありません。」

 たしかにそのとおりです。しかし、『争族防止』という観点で考えたとき、意外に有効なのがエンディングノートです。それは、遺言にはない多くの利点があるからです。


≪金融機関が作成した無料配布のエンディングノート。市販のものもあります。≫

エンディングノートに必ず書いておきたい内容

 まずは、エンディングノートのおさらいから。

 エンディングノートとは、『自分にもしものことがあった時のために、伝えておきたいことをまとめておくノート』のことです。(@nifty終活サイトより)記載内容は作成者により微妙に異なりますが、必ず書いておきたい項目は次のとおりです。

エンディングノートが争族対策として有効な理由

 エンディングノートが時として、法的効力のある遺言よりも有効な理由。それは次の3点です。

一つ目の理由:家族にとっては死後の対応マニュアルとなる

 エンディングノートは、家族にとってご本人が無くなった後の対応マニュアルになっています。財産の所在から葬儀の方式やお別れの連絡先まで。エンディングノートに記載があればそのとおりにすればいいわけで、残された家族の苦労の大半は解消します。

 当然、遺産分割についても本人の意思が書かれていれば、尊重してくれることでしょう。

二番目の理由:相続争いの回避につながる

 相続争いの主な原因は、遺産の分け方が決めてあっても「なぜそう分けたか」の理由が相続人に分からないこと。理由が分からないと、配分の少ない相続人には不満が残ります。

 遺言にも、「付言事項」と言ってご本人の思いを記す項目があるにはあるのですが、基本的には家族への感謝の気持ちを書くところです。「遺産の分け方の理由」を書くのは現実的には困難です。

 また、法律の専門家が遺言づくりにタッチする場合、法的には無意味で時として遺言の内容と矛盾するかもしれない付言事項には消極的なケースも多いのです。

そして最後の理由:遺言の難しさと不完全さ

 法律上有効な遺言を書くのは、なかなか大変です。詳しくは、今年5月の記事(http://manetatsu.com/2014/05/31774/)を見て頂くとして、初めての人が最初から有効な遺言を書き上げることは大変難しい。遺言が無効な場合、法定相続人の全員による遺産分割協議となります。

 その際、法律上無効で中途半端な遺言の存在はかえって混乱の元。むしろ最初からない方が、協議がスムーズにまとまることも。

 また、たとえ有効な遺言があっても、それと異なる内容の遺産分割協議書があればそちらの方が優先されることはあまり知られていないことです。

まずはエンディングノートからスタートしよう!

 とりあえず、エンディングノートを書いてみましょう。金融機関の相続セミナーに参加すれば、無料のエンディングノートを貰えることも多いです。納得行くまで何度でも書き直しましょう。

 パソコンでも可。鉛筆を使ってもかまいません。なにより遺言と違って、書いて楽しいのがエンディングノートの特長です。

 普通はそこまででOKですが、法律的にきちっと詰めたい方は、「遺産分割の部分だけ」抜き出して遺言に書き直すのもよいでしょう。その場合、エンディングノートの遺産分割部分は混乱を避けるため削除しておきます。

 遺言とエンディングノートはどちらか1つを選ぶものではありません。セットで用意すべきものなのです。(執筆者:綾田 亨)