筆者、職業柄、企業の新入社員や若年社員向けの研修を行うことが多いのですが、その際、「人生の三大資金!」について彼等、彼女らに聞くことがあります。すると、多くの人が「結婚資金」と答えます。

 確かに若い人達にとって、これから控える「結婚」と言うイベントには、「とてつもなく多額の費用がかかる!」と考えている人が多いことの表れだと思います。

 しかし、一般的に人生の三大資金と言われているものは、「住宅資金」、「教育資金」、「老後の生活資金」(一般財団法人住宅金融普及協会HP参照)になります。もちろんこれには家庭や個人、地域の事情によって必ずしも三大資金とはならない場合もありますが…。

結納~新生活準備で約534万円必要

 では、なぜ多くの若者が「結婚資金」が三大資金に入ると答えるのでしょうか?

 金融広報中央委員会の「暮らしと金融なんでもデータ」によりますと、2013年の調査で、首都圏の結納・婚約から新婚旅行までにかかった費用の平均額は、

結納式の費用・会場費
両家の顔合わせの費用
婚約指輪
結婚指輪(2人分)
挙式・披露宴・披露パーティー総額
新婚旅行
新婚旅行土産

 まで入れて約459万円となっています。

 しかし、実際には結婚するということは、新婚旅行に行って終わりではありません。むしろ、そこからスタートしますので、最低限の新生活準備のための費用も考慮する必要があるでしょう。

 そこで、同じく「暮らしと金融なんでもデータ」によりますと、2013年調査の平均で、

インテリア・家具の購入総額
家電製品の購入総額
嫁入り道具としての着物の購入総額
嫁入り道具としてのパールの購入総額
賃貸費用/敷金・礼金
引越し費用

 などをあわせて、新生活準備資金は約75万円となっています。

 つまり、結納・婚約から新婚旅行プラス、新生活準備のための費用で、平均的には約534万円かかるということになります。

 確かにこの金額だけ聞くと、若い人達が「結婚はお金がかかる!」、「人生の三大資金のひとつ」と直ちに答えるのは無理もないと思えます。

「結婚資金」が人生の3大支出にならない3つの理由

 そこで、ここからは、「結婚資金が人生の3大支出にならない!」という筆者の考える3つの理由(ワケ)について述べたいと思います。

(1) 「親の援助」の可能性

 「結婚資金が人生の3大支出にならない!」理由の一つ目は親からの援助を受けられる可能性があることです。

 同じく、「暮らしと金融なんでもデータ」2013年調査結果によりますと、結婚資金・新生活準備費用の親・親族からの援助(首都圏)について、親・親族からの援助があった人は、結婚費用で74.6%新生活準備費用で56.3%となっています。

 さらにその平均援助額ですが、

( 結納、挙式、披露宴・披露パーティ、二次会、新婚旅行などあわせて)結婚費用で約189.6万円

(インテリア・家具、家電製品、新居の購入・賃貸費用などの)新生活準備費用で約160万円

 となっています。

 つまり、(もちろん家庭や地域によって差があることは否めませんが)、もし援助を受けられるとすれば、平均的には結婚費用と生活準備資金合わせて350万くらいになるということです。

 さらにこのコラムを書いている12月9日、政府は、「親や祖父母が子や孫に将来の結婚や出産、育児関連の資金を贈る場合に相続税がかからなくなる制度の新設を来年度税制改正で目指す」方針を明らかにしています。

 現在は教育資金贈与を非課税にする制度がありますが、これとは別に「新たな枠組みで創設する方向で検討する」とのことです。もしこれが実現すれば、親や祖父母からまとまったお金を贈与された子や孫は、結婚式や出産費のほか、乳幼児の治療費、保育費などに使用しやすくなりますので、この制度の行方にも注目したいと思います。

(2) ご祝儀という「収入」の可能性

 二つ目の理由として、結婚というおめでたいイベントは「支出」ばかりでなく「収入」も見込めるという点です。

 同じく、2013年の調査結果で、披露宴・披露パーティーのご祝儀額総額(首都圏)は、約223万円となっています。たしかに披露宴やパーティーに呼ばれて、普通「手ぶらで」というわけにはいきません。特に親戚などの場合には、かなりの多額になる場合も多いようです。

 ここまでで、(単純に足し算できないことは重々承知ですが)あえて言うならば、援助資金とご祝儀合計で573万円…。

(3) 「なし婚」という選択肢

 三つ目の理由は、結婚をする際に「挙式、披露宴などを行わない」ことで極力支出を抑えることもできるということです。

 「なし婚」とは、挙式・披露宴「なし」という意味で、厚生労働省が行った調査によると、2011年には67万件の結婚のうち結婚式を行った夫婦は約半分の35万件というデータもあります。つまり近年では「ナシ婚」という選択肢の割合も半数近くもあるというのです。

 たしかに若いうちはなかなかお金がないのも事実です。上記のような「援助」的なものが見込めない場合、さしあたり「なし婚」にして、出世や資金力に余裕がでてからあらためて式やパーティー行うという手もあると思います。

 このように、「結婚資金が人生の3大支出にならない3つの理由」について述べてきました。

 繰り返しますが、もちろん「援助」や「ご祝儀」といった収入見込みを単純に足し算することは出来ませんし、個人差、家庭や地域によって大きく違ってくることには注意が必要です。

 しかし、いずれにしても、若い人達が「お金がかかるので!」という理由だけで「結婚しない」、「結婚できない」と思い込んでいるならば、これら3つの理由を挙げてでも「必ずしも、そんなにかからない!」と力説したいと思います。

 なぜなら、本当の幸福はお金のあるなしで決まるものではありませんし、未来を切り開いていく若者たちにそんなことで希望を失ってほしくないと思うからにほかなりません。(執筆者:阿部 重利)