いよいよ、相続税の基礎控除額が60%となり相続増税時代の幕があけました。基礎控除額が減額になること=相続税の課税価格が増えることから、相続税の課税価格を下げられる商品の販売が盛んになってきています。

続税の課税価格を下げられる商品と注意点

 生命保険の商品でいえば、会社によっては90歳まで無告知で加入できる終身保険も用意されています。ほとんど、預けたお金が死亡時に支給されるものでしかないのいですが、それでも、生命保険金等の非課税枠(500万円×法定相続人の数)に満たない死亡保障しか加入していない方にとっては、この生命保険の商品に加入するだけで節税効果は得られることから人気の商品となっているようです。相続税法の非課税の規定を余すことなく利用できますので、確かにメリットはあるでしょう。

 その他、最近の目立った動向では、2世帯住宅の建築告や貸家建築広告、さらにはタワーマンションの公告等が目立ってきている感じがします。

 2世帯住宅建築と相続税の関係は、小規模宅地等の居住用宅地等の特例の適用を見据えてのことでしょう。完全分離型の2世帯住居でも上記の特例が使えるように改正になってからは、その売り込み公告が目立ってきています。

 最も、2世帯住居で同居はあいてみたものの税制改正で小規模宅地等の特例そのものの見直しがないともいえませんので節税目的だけで2世帯住居の建築を決めるのにはリスクは伴いそうです。同居はしてみたものの嫁、姑の関係が上手くいかずに結局は同居を解消するといったこともあるやもしれません。

 さらには、2世帯住居で暮らしていたものの遺産分割のことを何も気にせずにいて遺言書の準備もしていなかった場合、いざ、相続が発生し、遺言書が遺されていなかったことから遺産分割協議の話に入ったところ、相続財産に占める2世帯住居の敷地の割合がものすごく高く、結局は遺産分割のために2世帯住居を売却して遺産分割を行わざるを得なかったということも考えられるでしょう。

相続税の節税には円滑、円満な遺産分割が不可欠

 そして、相続税法においては、申告期限までに遺産分割協議が纏まっていないと相続税の負担を軽減できる特例が使えないものがあります。それは、配偶者の相続税の減額、小規模宅地等の特例、特定計画山林の特例、農地・非上場株式等の納税猶予等です。申告期限までに相続人間で分割協議が纏まらなかった相続財産については、上記の特例は適用の対象外となってしまいます。

 このように考えてみると、相続税の軽減ばかり考えて相続対策を練っても、本末転倒な結果となりかねません。まずは、遺産分割…相続人間の遺産分割をどのように着地させるかが重要です。

 相続人全員全てが、満足のいく円満な遺産分割といかずとも、少なくとも手続上は円滑に済ませられるような遺産分割の準備はしておきたいところです。

 そして、いかに、円満な遺産分割にできるか。円滑、円満な遺産分割が相続税の節税には不可欠です。節税できるか否かによって、相続税の納税の準備の方法もかわってきます。遺産分割が思うに任せず、本来は売却しなくとも何とかやりくりできたものを、相続税の納税のために虎の子の土地を売却せざるを得ないということも起こるかもしれません。

土地活用も節税より事業を念頭に

 先ずは、遺産分割に考えの重きをおいてみる。そして、節税方法の王道と言うべき土地活用。更地の上に貸家を建築する、建物部分は固定資産税評価額に借家権を差し引いた70%を乗じた金額が相続税の評価額となります。

 一般的に建物の固定資産税評価額は建築価格の5~6割程度といわれています。して固定資産税評価額に70%を乗じますから、相続税の評価額は建築価格の約40%程度となってきます。

 更地に関しては更地のままを1の評価額とした場合、更地に貸家を建築すると【1-1☓借地権割合☓借家権割合】の評価額となります。つまり、借家権は30%と決まっています借地権が60%か70%のときには、おおよそ、約20%の評価減が得られることとなってきます。

 これが、貸家を建築した場合の節税の仕組みです。ケースによっては、小規模宅地等の貸付事業用の特例が受けられることもあります。

 以上の様な節税効果を求めるあまり、時には事業性のリスクの高い立地であるにもかかわらず建築業者の奨めるままに貸家建築に踏みきってしまうと、結局は、築10年を過ぎたあたりから空室が目立つようになり、結果、建築資金の借入金を返済できずに、任意売却や競売で、その貸家と土地を安く処分してしまうということもありますので注意が必要です。

 相続対策は節税という税金対策ばかりに目をとらわれず、円滑・円満な遺産分割や事業としての土地活用を大前提として考えて行かなければなりません。本末転倒な相続対策とならぬよう…くれぐれもご注意ください。(執筆者:荒木 達也)