今年からの税制改正で相続税が増税となりました。一方、贈与税は非課税の特例が拡充されるなど、生前に次世代に財産が継承されることによる景気対策がとられました。相続税の基礎控除額の減額にともなった相続税対策として生前贈与をいかに上手に活用できるかがポイントとなってきました。

 そんな生前贈与の注意したい点をいくつか紹介していきたいと思います。今回は、贈与そのものの行為についてご紹介したいと思います。

2種類ある生前贈与

 贈与とは、財産の一部や全部を誰かにあげる行為を言います。この誰かとは、一般的には配偶者や子ども、孫などの家族が多いのですが、全くの第三者にもあげることもできます。また、その対象となる財産は、現預金にかぎらず、家や土地などの不動産、株式、保険金の権利、車、ゴルフ会員権等、財産となるものはその全てが対象となります

 この贈与には、税法上、2種類の贈与があります。あくまでも、税金の計算上の分類ですので税金の計算上のお話とご理解下さい。

1. 暦年贈与

 一つには、暦年贈与といわれるもので、毎年110万円までの贈与には税金が課されないこととなっています。この110万円は、その1年の内に贈与でもらった財産の全てが対象となりますので、例えば父から100万円、母から100万円を贈与で財産をもらった場合、合計の200万円のうち110万円が課税の対象外となり残りの90万円が課税対象となります。

2. 相続時精算課税

 もう一つは、相続時精算課税というもので、贈与をした人毎に2500万円までがその贈与をした人の相続発生までは贈与税はかからないこととなります。

 これは、贈与税が非課税となるのではなく、相続時精算課税制度を選択した後の贈与は、その贈与をした人の相続税の計算の時に、その贈与で取得した財産の贈与時における評価額を相続税の課税価格に加算することとなっており、その加算後の課税価格とみなされた金額で相続税を計算することとなります。読んで字のごとく、まさに相続時において精算の計算をするということです。

 暦年贈与課税と相続時精算課税のどちらの贈与の方法がいいかは、その人、その人の状況や目的によって、千差万別、異なってきますので、一概にどちらがいいとは言えないこととなります。

贈与が成立する条件

 この贈与という行為は、あげる人ともらう人の両者の合意があって成立する契約の一種といわれています。このことから、税務上は、例えば、父親が子どもに内緒で子ども名義の口座に預金を積んでいた場合、贈与があったとはみなされずに父親の相続財産として相続税が課されることがあります

 また、税務上、贈与と認められるのには、贈与で財産をもらった人がその財産を自分で所有、管理しながら自由に使える状態であることも大きなポイントとなってきます。

 たとえ、あげた人ともらった人の間で、贈与の合意があったとしても、例えば、もらった人名義の預金の通帳を渡していなかったというような場合には、贈与として認められないということになりかねません。

生前贈与が成立するポイント
・あげる人ともらう人の間で合意があること
・もらった人が財産を自由に管理・使用できる状態でること

 さらに、安全をみれば、贈与契約書なるものを、都度、両者で交わしておくべきというお話も良く耳にします。税務上は、名義預金という名称で、相続税の調査の時には、厳しくチェツクされるところとなります。

 生前の預貯金のお金の流れは、税務署は銀行等に情報開示を求めることができますので、徹底的に調べられますので、注意が必要です。これは、善意、悪意にかかわらず、その事実があれば、その事実通りに課税されることとなってきます。知らずにやったことでも、税務上は、知らないことが悪いということになってきます。そうであれば、もっと、分かり易い税金計算にして欲しいとも思いますが、それを言ってみても仕方ないことです。

「親の気持ち」と名義預金の葛藤

 現実的には、親の気持ちとしては、生前に贈与でお金を渡してしまうと、子どもは安心して貯金しなくなるとか、散在してしまうとかで、内緒で贈与してしまうケースが多いと思います。

 税務上は、それは、名義預金といってきますから、子どもに自由に使われないように、贈与したお金で生命保険やNISAを利用した金融商品等に加入させると良いと思います。

 税務上は、贈与の契約の成立云々を取りざたしますが、遺産分割上(民法)は、贈与した人がこの人にあげるとはっきりと意思表示したものですから、贈与としての契約が成立していないから、その財産は贈与された人のものではないといったことにはならないでしょう。

 そういった意味では、名義預金は、税務上は問題はありそうですが、遺産分割上の有効な方法とはなりえそうです。ただ、特別受益の持ち戻しの対象となりますので、持ち戻しの計算までして考える必要はでてきます。

 税務上、名義預金に目を光らせるのは、親から子どもに黙って子どもの預金に積み立てて行くわけですから、当然、贈与税の申告がなされずに時効期間である7年間が過ぎて、結局、贈与税も相続税も課税できなかったということが、多くあったからでしょう。

 親の気持ちとして、子どもに財産を遺してあげてることを知らせたくない、使われたくない、結局、名義預金となってしまう。いっそのこと、あげた者から贈与税の申告ができるようにすればいのではと思ってしまいます。

 とはいうものの、現実的なお話ではないでしょう。相続税の基礎控除減額にともなって、生前贈与を考え始めているかたは多いと思います。名義預金にせずに、子どもにきちんと大事に遺していって欲しいという場合には、やはり、贈与であげた資金を元手に生命保険に加入するのが、いい方法と思います。

 終身保険で、なるべく、利率のいい商品か、ドル建ての積立もいいかもしれません。ただ、単に、贈与をせずに、贈与した後の使い道を、きちんと示唆してあげた方がいいかもしれません。気持ちが大きくなって、いきなり新車の高級車で里帰りということにならないように、自分と子どものライフプランを考えながら贈与計画を練られることをお勧めします。

 たかが贈与、されど贈与、しっかりと贈与計画を練ってみて下さい。(執筆者:荒木 達也)