
65歳以降も返済が残るような住宅ローンを組んでいる方のほとんどが、退職金もしくは計画的繰り上げ返済によって、65歳で完済するような計画を立てています。そして、そのような計画を立てている方の中で、実際に実行できそうな方はほとんどいません。私の実感では、実行可能な計画を立てている方は15人に1人程度しかいません。
では、実行できる方とそうでない方との違いは何なのでしょう?
目次
実行可能な返済計画をしている人の2つのポイント
1. 「返済負担率」の低い住宅ローンの組み方をしている
実行できそうな方の住宅ローンの組み方は返済負担率が低いです。
例えば、住宅金融支援機構の「フラット35」の場合、年収が400万円の方は、他にローンがなければ返済負担率35%まで、つまり月々の返済額11万6千円(=400万×35%÷12ヶ月)までローンを組むことができます(ボーナス返済なしの場合)。
2. ボーナス・退職金をあてにしていない
実行できそうな方の返済計画は、ボーナス・退職金をあてにしていません。
なぜ、この2つがポイントなのでしょうか? それは、この2つのポイントが、3つの憂いを失くしてくれるからです。
住宅購入後の3つの憂い 隠された支出も

憂い1. 家を購入しただけでは、貯蓄体質にならない
繰り上げ返済を計画に盛り込んでいる方のほとんどがローンを組んでから「節約を頑張る」と言いますが、人の習慣はそう簡単には変わりません。
十分な頭金を積み立ててこなかった方が、限度額いっぱいまでローンを借りてしまったら、まず貯蓄は不可能でしょう。
一方、頭金をコツコツと積み立ててきた方は金融機関にとっては同時に信用も積み立てているのです。こういった方は貸出金利が優遇されやすくなります。ただし、家賃プラス積立金の額でローンを組んでしまうと、一気に貯蓄できない家計に変わってしまいます。それは以下の2つの理由からです。
憂い2. 教育費は増加する
子供のいる家庭では、末子が大学を卒業し、社会人になるまで、年々教育費の支出が増え続けます。今現在家計に余裕があっても、子供の成長と共に家計はどんどん苦しくなります。ですから、住宅ローンを組む時は、子供が大学生になった時の家計を想定して、ローンを組むことをお勧めします。
憂い3. 持家の隠された支出
火災保険や固定資産税など、持家に住むと住宅ローン以外にかかる費用はいくつかありますが、見落とされがちなのが修繕費です。
特に一戸建ての場合、マンションのように修繕費積立金が盛り込まれていないため、完全に忘れ去られています。しかし、いくら家の主要構造が30年持ったとしても、水廻りや壁紙などは消耗品であって、何年かおきに修理や張替えが必要になります。
また、いくらマンションが修繕費を計画に盛り込んでいるとしても、それはあくまで共用部分であって、区分所有部分で必要な修繕費は盛り込まれていません。ですから繰り上げ返済用に当てにしていた退職金も、リフォームや建て替え費用に使われる可能性が高いのです。
借りた後では修正できないことがある
ローン金利や返済条件は、ローンを組んだ後でも変更できますが、住宅の購入価格だけは変えることができません。そして不相応な購入価格は家計にとって、致命的でしかも長期にわたって家計を圧迫します。
ローンを組む時の鉄則として、「借りられる額ではなく返せる額」と言うのがあります。しかもそれは今現在ではなく、「将来にわたって返せる額」であることを、この記事を読んでわかっていただければ幸いです。(執筆者:田島 稔之)