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財産承継対策に不可欠な不動産相場の将来予測の難しさ

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財産承継対策に不可欠な不動産相場の将来予測の難しさ

 今年に入って、相続税の基礎控除額の減額の税制改正にあいまって相続対策についての話題でもちきりです。銀行や生命保険会社、証券会社等の金融機関もさることながら不動産関連業者も相続対策のコンサルティング業務を前面に打ち出してきています。

 目の前の利益よりも長い目でじっくりとその人、その人なりの人生によりそってその人にとってベストとまでいかなくてもよりモアベターな結果となるべくお手伝いをさせていただく。そして、その過程でお役に立ちながら相続対策の実行支援のなかで売り上げをあげていく。

 とにもかくにも、相(争)続対策といっては、生命保険やアパートをやみくもに売ってしまおうといった風潮からは少しばかりの変化の風をささやかに感じるようになってきました。

優先すべきは遺産分割対策

 相続対策や事業承継対策といったものが人が亡くなった時の財産の移転の際に起こり得る問題に事前に対処しておきたいものの総称と言えるでしょう。

 具体的には、円滑さらには円満に各相続人に財産を承継できるように準備しておきたい遺産分割対策、この対策が優先順位一番とも言われています。遺産分割が決まらなければ相続財産は相続人の共有財産とみなされ、この相続財産で何をするにしても相続人全員の合意が必要となり、実質的には、その相続財産は塩漬け状態のものとなってしまいます。

 また、税務的には相続税の計算上、遺産分割協議がまとまっていない未分割である相続財産には相続税法の特例措置が使えないこととなっています。配偶者の相続税額の軽減や小規模宅地等の課税価格計算の特例、農地や非上場株式等の納税猶予などがその代表的なものです。

次に考えたい納税対策

 続いては財産の承継にあたって発生する税金を納付するために準備しておきたい納税対策があります。どの程度の税金が発生するものかを想定しあらかじめその負担相当額をどのように工面しておくべきか考えておきたいところです。

 毎年、こつこつと貯金をしておく。ただ単に自分名言で貯金だけしただけでは、その貯金にさらに税金がかけられてしまいます。名義預金や定期贈与にならないように注意して、こつこつと毎年すこしずつ各相続人に贈与税の非課税枠を利用して贈与していく方法はよく採られている方法です。

 そして、その財産承継にあたって発生する税金を少しでも和らげておきたいための節税対策があります。これは、読んで字のごとく、税金をいかに低く抑えて行くことができるかを練っていく対策です。この対策の優先順位は遺産分割、納税対策の次になるといわれています。税金を低くすることだけを考えて遺産分割や納税を考えていないと本末転倒な結果となりかねないからです。

 いかに、効率よく理想的なかたちで次世代に財産を承継できるか、この方法を考えることはとても難しいことです。この難しくしている要因は相続財産の過半を占めると言われている不動産でしょう。分割しにくい、換金しにくい、権利が複雑、都市計画法や建築基準法などの制限等々、その取り扱いには前門的知識は欠かせません。

 そして何といっても価額が分かりにくい。価額が分かりにくいという事は、将来の財産承継に備えた対策を考えるうえでは致命的に悩ましい問題となってきます。

 何といっても、相続財産の過半は不動産が占めています。この過半という数値は全国平均、それも路線価ベースでの数値です。大都市圏内においては、過半は70%や80%という数値となって表れてくるでしょう。

 この価額が分かりにくい不動産は、近年、さらに分かりにくくなってきています。

バブル弾けてまたバブルか? 不動産相場の行方


 いまは、東京圏をはじめとする大都市圏の不動産や株式はバブル化しているようです。東京圏の不動産は東京五輪を控えたインフラ整備とその後の利便性の期待感もありバブル化していると言われています。このバブルは東京五輪前に弾けるとも言われています。

 平成始めのバブル崩壊までは不動産の価格は上がりこそすれ下がることは考えも及びませんでした。そのバブル崩壊では多くの人が大きな衝撃を受けました。このバブル崩壊を機に、不動産の証券化が始まりファンドという名の投資機関が日本の不動産を安値で買い叩いていきました。その分、日本の金融機関は多くの不良債権をかかえ公的資金を注入しその場を何とか切り抜けてきました。そして、生き残れなかった金融機関のいくつかは時代の犠牲となりました。

 そして、バブルの崩壊は都心部の住宅市場に大幅な価格の下落をもたらし、一般のサラリーマンでも都心に住居が購入できることとなりました。いわゆる、都心回帰の始まりです。都心部のマンションが売れ行き好調となりマンションデベロッパーは息を吹き返すことができるようになりました。

 一方で商業地は不動産の証券化にともなってファンドがSPCを組成しては商業用の不動産を信託受益権化して買いあさるようになりました。ここで、またもやファンドのミニバブルが形成されてきました。その後に、リーマンショックがおきてバブルは崩壊し日本経済は沈静し、さらには東日本大地震の発生により更なる打撃を被りました。

 そして、ここにきてのアベノミクスの効果なのか再度、バブル傾向となってきています。

 前回のファンドバブルのときは、不動産の価格上昇の理由がとても明白で分かりやすかったのですが、今回のバブルは東京五輪を控えているという要因はあるものの、原油安やイスラム圏の政情不安、ウクライナ問題、ギリシャ問題を抱えたEU、等々様々な問題を抱えての時代背景のもとにあります。

 これらの問題の行く末によって、このバブルの行く末も大きく左右される様な気がします。さらに、人口減少による空き家問題に見られるように、そもそも住宅用の不動産は過剰気味となってきています。

 このように考えると不動産の将来の価値はどうなるか…?

 個人的には立地条件の優れたシンプルに優良な不動産に価値がのこり、その他の不動産は処分にも困るといったものになっていくような気がしています。

 財産承継という観点で考えて行くと、いまある不動産という財産をそのまま次世代に上手に承継していくのか、先々のことを考えて将来の価値に多少の不安のある不動産は処分できるうちに処分して変わりの優良な財産に組み替えて優良なポートフォリオを形成していくのか、といった選択を考えていく必要があります。

 一部の投資顧問を業としている人の意見では、グローバルなポートフォリオを考えた方がいいという意見もあります。米国その他の不動産や金融商品に組み替える等、日本の財政リスクにも備えておくべきとの意見です。不動産の価格も時代に応じて変動していくようになってきたような気がしています。

 これからの財産承継では、ただ単に先代からの不動産を次世代に継承していくという発想だけではなく、よりよい財産に組み替えてよりよいポートフォリオを形成していくといった発想の転換が必要な時期になってきたなと実感しています。

 時代の流れに応じて、不動産も売っては買ってといったような投資商品的な見方も必要になってきたのではないでしょうか。(執筆者:荒木 達也)

《荒木 達也》
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荒木 達也

株式会社ARK財産承継コンサルタンツ 取締役 (荒木不動産コンサルティングFP事務所 代表) 不動産会社での経理業務、大手不動産会社系列の住宅メ-カ-での住宅・不動産の営業、財産コンサルティング会社での財産コンサルティング業務、会計事務所での相続税等税務全般の申告業務に従事した後、相続対策での不動産対策の重要性を痛感し、公平中立な視点で提案を行う不動産・相続をメインとしたFP事務所を開設し今春新たに法人化。株式会社ARK財産承継コンサルタンツ(荒木不動産コンサルティングFP事務所)は、CFP、不動産コンサルタント、トータルライフコンサルタントである一人のコンサルタントの視点で、財産の現状分析から税務、不動産、相続、保険、資産運用等の総合的な財産コンサルティングを行います。不動産・相続・ライフプラン・保険・資産運用・住宅取得・住宅ローンなど、お気軽にご相談ください。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、証券外務員2種、住宅ローンアドバイザー、トータルライフコンサルタント、MBA・税理士試験(簿記論・財務諸表論取得)、日商簿記1級 寄稿者にメッセージを送る

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