1. 国民年金保険料納付状況


厚生労働省の「平成23年国民年金被保険者実態調査結果の概要」によりますと、調査対象とした国民年金第1号被保険者1,737万1千人のうち保険料滞納者が455万1千人(総数の26.2%)となっており問題となっています。

国民年金保険料を納付しない理由をみると、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」が74.3%と最も高く、次いで「年金制度の将来が不安・信用できない」(10.1%)、「うっかり忘れていた、後でまとめて払おうと思った」(3.9%)、「厚生労働省・日本年金機構が信用できない」(3.2%)などとなっています。

上記の滞納者のうち世帯の総所得金額が500万円以上の者は16.1%であり、1,000万円以上の者も3.0%います。世帯の総所得金額が1,000万円以上であっても55.8%が「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」と回答していますが、実際には保険料を支払っても将来年金がきちんと受け取れるのかわからないという意識が高いのではないでしょうか。

2. 忘れてはいけない所得控除


国民年金保険料はその支払った保険料の全額が社会保険料控除として所得控除を受けることができます。さらに国民年金第1号被保険者には国民年金を補完する制度として個人型確定拠出年金や国民年金基金といった制度があり、これらの掛金も全額所得控除の対象となります。しかし、国民年金保険料が未納の場合にはこれらの制度の掛金を拠出することができません。

国民年金第1号被保険者の場合個人型確定拠出年金または国民年金基金の掛金は最大で月額68,000円です。国民年金保険料月額15,590円と確定拠出年金の掛金68,000円を支払った場合の所得控除の効果をみてみましょう。

所得控除の額は、

(15,590円+68,000円)×12月=1,003,080円

となります。

たとえば、総所得金額が550万円で、配偶者控除38万円と基礎控除38万円の適用があったとします。

550万円-(38万円+38万円)=474万円
474万円-1,003,080円=3,736,920円

課税総所得金額が330万円超695万円以下の区分に適用される所得税率は20%ですので、この所得控除1,003,080円は税率20%が適用される所得を減らすことになります。住民税は一律10%で、復興特別所得税も考慮すると

1,003,080円×(20%+10%+20%×2.1%)=305,136円

の税額を削減する効果があります。

課税総所得金額が900万円超1,800万円以下の区分に適用される所得税率は33%ですので、上記の例で総所得金額が1,100万円の場合には、

1,003,080円×(33%+10%+33%×2.1%)=438,275円

の税額を削減する効果があります。

3. 国民年金保険料と比較すると

国民年金保険料は平成27年度で月額15,590円ですので1年間では187,080円になります。上記の総所得金額が550万円の例では国民年金保険料を払っても

305,136円-187,080円=118,056円

得になります。総所得金額が1,100万円の例では

438,275円-187,080円=251,195円

も得になります。

必ずしも確定拠出年金の掛金を拠出する余裕はないかもしれませんが、高額所得者で国民年金保険料を未納にしている人の中にはその余裕がある人もいると思います。国民年金保険料を納付せずに税制優遇のない(または少ない)方法で老後資金を準備することは効率的ではありません。また、未納の場合万一のときに障害年金や遺族年金を受け取れない恐れもあります

「平成23年国民年金被保険者実態調査結果の概要」によると、国民年金保険料は全額所得控除の対象となるということの周知度は、保険料納付者では65.3%と高いものの滞納者では41.2%と5割を下回っています。確定拠出年金や国民年金基金の掛金に係る所得控除の周知度もあまり高くないと思われます。

滞納者について、世帯の総所得金額階級別に保険料を納付しないことについての意識をみると、所得が上がるにつれ「制度の意義や有利な点が理解できれば納付するつもり」と考えている者の割合が高くなっています。このコラムを読んで国民年金保険料を納付する方が少しでも増えることを願っています。(執筆者:犬山 忠宏)