出産や育児をしながら働こうと決めた女性には乗り越えないといけない山がたくさんあります。職場の上司の反応を心配したり、産休から帰ってきて自分の居場所があるかも心配になるかもしれません。産休が問題なくもらえるか、職場への復帰する時に保育園はスムーズに見つかるかなど悩みは尽きないと聞きます。

出産をするのは女性である以上はオーストラリアも似たような悩みがあるはずです。今回はオーストラリアの産休制度とその実情を紹介したいと思います。

マタハラは日本だけ?


日本ではマタハラが社会問題として大きく取り上げられています。

大企業だから安心という事実もないようで、初めて妊娠を経験する女性にとっては運試しのようなところもあるのでしょうか? オーストラリアで私自身、産休を2回経験していますが、全くそのような問題はなく、大きなイベントとして盛大に祝福された思い出があります。

女性が多いシフトの仕事であったことは大きいでしょう。実際、日本でも看護師は子供を産んでも働き続ける人が多くいました。

もしかしたら、オーストラリアでも職業によってはマタハラもあるのかもしれないと、「Maternity Harassment」と英語でグーグルしてみました。出てくるトップ記事はほぼ日本に関係するものばかり。先進国として恥ずかしい事実です

会社にとって、マタハラによる痛手は産休による痛手よりも大きい


会社にとって、社員に産休を取られることは痛手であることにはオーストラリアも日本も変わりはないのです。オーストラリアの会社も、翌年に妊娠するとわかっている女性を採用することは避けたいというのが本音だと思います。

日本では中途採用の面接に行ったときに、プライベートな質問を受けて嫌な思いをした人もいるのではないでしょうか? オーストラリアでは仕事の面接において、仕事に直接関係のない個人的な質問をしてはいけないということが法律で決まっています

例えば、「幾つですか?」、「子供はいますか?」、「結婚していますか?」というたぐいの質問です。妊活中です! という女性を喜んで雇う会社はありませんから、わざわざそのような法律が設けられているのです。

面接時だけでなく、会社内においても、英語が未熟であったり、文化や宗教が違うということで何か言われたとなると大きな問題となります。もっと言えば、会社に限らず、公の場でもそうです。実際、電車で他人の宗教や人種に関する差別発言をした動画をネットにアップされて逮捕につながるという事件が起こっています。

私が働いていた施設では不当な扱いを受けたと思えば、相談する人が職場で設定されていましたし、毎年、職場でのいじめに関するビデオの勉強会がありました。もちろん直接、政府機関に訴えても構いません。

英語での「Maternity Harassment」の検索では、日本の記事が目立ちましたが、中に興味深いオーストラリアの記事を見つけました。2014年の出来事ですから、そんなに古い話ではありません。産休明けにアパレルショップに復帰した女性がいじめを受け、会社にA$237,770の支払い命令をしたというものです。

参考記事:Large payout in recent bullying case for empoyee returning from maternity leave

内容はというと、産休明けにお店に戻った女性が新しい店長のいじめを感じて、4日後に州のトップマネジャーに改善を願い出ます。州のマネージャーはいじめを追跡せず、店長に電話をかけることで事を終えてしまいました。

女性にはその後も7日間いじめが続けられ、女性は更に州のマネージャーに対応を願い出るも断られてしまいます。後に精神障害を患ったとして、結局、A$240,000の支払い命令が会社にくだされました。A$240,000というと1ドル100円で計算して2400万円です。

11日間のいじめによって出された金額です。責任ある立場の人が差別やいじめをの事実を軽視して放置したことに対するペナルティーなのでしょう。経営者に与えるプレッシャーとしては十分な額です。無視できる金額ではありません。したがって、オーストラリアのほとんどの職場では、法律を厳守する行為がとられるわけです。

オーストラリアの産休制度の実情


実際、オーストラリアの産休は本人の希望で1年間までもらえます。私も産前から1年間もらいました。雇用形態は関係なく、一定期間(1年)同じ職場で働いていた場合にとることができます。

妊娠期間は短くないですから、職場を変わって数か月さえ働けば、その後は妊娠しても年休は確保できる計算です。多くの女性は産前に有給を使って休みに入ります。そしてお産と共に育児休暇へ切り替えです。

以前は、雇用者と特別な契約がない限り無給でしたが、最近では最低賃金が政府から18週間にわたり支払われるようになっているようです。

また1年たった後に、希望があれば更に1年間の育児休暇の延長が許されています。政府に請求する最低賃金の対象者は、メインで赤ちゃんの世話をしている人ということですから、理屈では父親でも大丈夫ですが、だいたいお母さんでしょうね。

お父さんもパートナー休暇として2週間の最低賃金の支払いが請求できるようです。州により細かな違いはありますが、内容を見る限り、日本と特別に変わりがない制度ではないでしょうか。大きな違いは、制度が形にとどまらずに、制度として利用する権利がきちんと個人に与えられているという点です。(執筆者:松下 歩)