個人ができる節税の方法として、「医療費控除」、「生命保険料控除」、「ふるさと納税」などがよく知られています。
どれも手軽にできる節税方法ですが、「医療費控除」、「生命保険料控除」については節税の効果は小さく、「ふるさと納税」は節税というよりも様々な品物をもらえるということに魅力があります。
今回はそれら以外の節税方法、とくに自営業者やフリーランスができる節税の方法についてお話します。
目次
1. 個人型確定拠出年金への加入による節税
個人型確定拠出年金の掛け金は全額所得から控除することができます。一般的な個人年金などと比べ、節税効果が高いと言えます。
また、将来給付金を受けた場合も、個人年金に比べ税制上優遇されています。次に説明する小規模企業共済とともに、将来の資産を形成していく上で税制上の優遇が非常に大きなものとなっています。
2. 小規模企業共済への加入による節税
小規模な自営業者や会社経営者は、小規模企業共済という小規模事業者のための退職金制度に加入することができます。
共済掛け金は個人型確定拠出年金の掛け金と同様、全額所得から控除することができます。
3. 法人化による節税
事業を営む方や不動産の賃貸を行っている方は、
事業等の状況によっては法人化することにより節税を図ることができます。
通常、所得が高額であるほど節税の効果は高く、逆に所得が低ければ節税の効果も低くなります。所得が低い場合、法人化により逆にコストが増えてしまう場合もあります。
以下法人化することにより節税が図れる仕組みについて、その概略を説明します。
(1) 税率の差
個人の場合、所得税については所得の金額に応じて税率も高くなる累進課税という制度が取られています。税率は5%から45%という幅があります。
また、これにプラスして住民税の10%が課せられますので、最大55%という税率になります。
中小企業である法人の場合、実効税率は所得金額800万円以下の部分については25%弱、800万円超の部分については35%弱となります。
この税率の差を利用して節税を図ることができます。
(2) 役員報酬による節税
会社の役員は、会社から役員報酬という形で給料を受け取ることになります。この仕組みを利用して節税を図ることができます。
ア. 給与所得控除の利用
個人事業主が事業で500万円の所得を上げるのと、会社の役員が役員報酬で500万円の収入を得るのとでは税額に違いが生まれます。
役員報酬は給与所得になるので、給与所得控除168万円控除後の342万円が課税所得となります。
事業所得の場合、青色申告特別控除(10万円又は65万円)の控除はありますが、この場合は給与所得控除の金額の方が大きく、法人化による節税が図れることになります。
イ. 所得の分散
家族を役員にすることで所得の分散を図ることができます。
青色申告の場合も専従者給与を支払うことができますが、事業従事期間や専従の必要性など様々な要件を満たす必要があります。
法人化することで家族への給料(役員報酬)の支払いによる所得分散が図りやすくなります。
また、「法人」という分散相手があらたに生まれるので、より分散効果は高くなります。
(3) 経費化できるものが増える
例えば、生命保険料については個人事業主の場合は事業上の経費にすることができませんが、法人の場合は契約条件により、経費にすることができます。
また事業主の所有不動産を事業で使用している場合、法人化すれば賃借料を計上することができます。
その賃借料は役員(事業主)の所得になりますが、先程説明した税率の差などを利用することができます。
(4) 消費税の節税
中小企業は一定の場合を除き、設立後2年間は消費税の免税事業者となります。
また、免税期間終了後も、先程説明した事業主への賃借料の支払いなどを利用した消費税の節税(法人が課税事業者、役員が免税事業者の場合など)を図ることができます
4. まとめ
以上、個人型確定拠出年金、小規模企業共済、法人化による節税についてお話ししてきました。
法人化については、税金以外にも社会保険料の負担や社会的信用という側面も含めて総合的に考える必要があります。
安易に節税のために法人化して、逆に損をしてしまうということのないように慎重な判断をするようにしてください。(執筆者:高垣 英紀)