日銀がマイナス金利を導入して以降、デパートの積立金が注目を浴びているようです。

報道される中、実際にデパートの友の会の加入者は増えているようで、中には前年同期比で加入者が2倍に増えているデパートもあるようです。

なぜ、ここにきてデパートの積立金が注目を集めているのでしょうか?

デパート友の会

デパート友の会とは…

デパートの顧客が毎月お金を積み立てれば、一定期間ごとにそのデパートで使える商品券がもらえるサービス。

一口当たり月5,000円から5万円程度の積立を12ヵ月間続けると、1ヵ月分のボーナスをもらえる場合が多い。

尚、デパートが破たんした場合に元本は保証されない

デパート積立金は高い利回り

毎月1万円積み立てると1年間で12万円の積立金が13万円になりますので年利換算8.3%になります。しかも、一括ではなく毎月の積立なので実際には年利15.8%になります。

というわけで、注目を集めるのも当然と言えます。しかし年利15.8%の積立といえば、マイナス金利導入以前はおろか、バブル期ですら高利回りの積立です。

もっと以前から注目されていてもおかしくないはずです。

なぜ今まで注目されなかったのでしょうか?

デパート積立金は月賦で商品券を買う消費活動

デパート積立金が年利15.8%の高利回りにもかかわらず、資産運用の主役になれなかった理由は、その本質が商品券を分割で購入する消費活動だからです。

満期時に受け取れるのは現金ではなく、あくまでデパートの商品券です。デパート友の会は割賦販売法で規制されています。一方、預金は銀行法、金融商品は金融商品取引法で規制されます。

デパート商品券は通貨に準じていますが、あくまでモノであって通貨ではありません。そのデパートでしか使えないため、使用範囲がかなり限定されます。

落ちてる10円は拾うけど、おちてる10円割引券は拾いません。どこでも使える現金と、いちデパートでしか使えない商品券とでは価値は同じではないのです。
 

消費税還元セールと一緒


そう考えるとデパート商品券の年利換算8.3%は、消費税還元セールと変わりません。

もし日々の買い物をチラシなどを比較して、最も安い店で購入する努力をしている方なら、あまり魅力を感じないかもしれません。 

そのデパートを頻繁に利用する方であれば、その商品券は文字道理年利換算8.3%の積立金と同等の価値がありますが、利用されない方がわざわざ積み立てる価値はないのです。

行動経済学による分析

では、なぜデパート友の会の会員数がここにきて伸びているのか? 行動経済学の2つの力が働いていると思います。

利用可能性

人は思い出しやすい情報に注目し、重視することが多い。

マイナス金利導入という初めての経験に直面するにあたり、誰もが大なり小なり混乱していたと思います。そんな中、報道でデパート積立金を頻繁に耳にするようになり、「預け先としてはデパート積立」という一つの思い込みができてしまったのだと思います。

フレーミング効果

意思決定において、質問や提示のされ方によって選択・選好の結果が異なることがある。

私たちは今回「マイナス金利」という言葉に引っ張られて金利・利回りだけを選択の判断基準にしているように思います。

スーパーで買えば2割安く買えるのに、デパート積立金の利回りにつられて商品券を得ても、むしろ損してしまう可能性があるのです。

ライフスタイルに立ち返る

デパート積立が有効な運用となるのは普段から頻繁にそのデパートを利用している方だけです。

何かに迷ったり、新しいことを始めようと思ったら、まずは自分のライフスタイルに合っているか?立ち返ってみることです。(執筆者:田島 稔之)