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[読者の質問に回答] 消費税率が10%になったら、年金はもらいやすくなるの?

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[読者の質問に回答] 消費税率が10%になったら、年金はもらいやすくなるの?

【読者の質問】

46歳ですが、これから厚生年金に入るか、迷っています。平成29年4月に消費税が10%になると、25年しばりから10年になりますか?

以上のようになりますが、読者の方の質問は、

1. 厚生年金に入った方が良いか
2. 25年しばりから10年になるか

の、2つに分けられると思います。

私は後者の質問を読んだ瞬間、ジャーナリストの池上彰さんがよく使う、「いい質問ですねぇ!」という言葉が、頭の中に浮かんできました。

その理由としては、この質問に回答することにより、消費税率の引き上げが年金に与える影響について、多くの方に理解してもらえると思ったからです。


1. 厚生年金に入った方が良いですか?

厚生年金が適用される事業所に、常時使用される70歳未満の方は、国籍や性別などを問わず、厚生年金に加入することになります。

ただパートやアルバイトなど非正規労働者については、全員が加入するわけではなく、1カ月の所定労働日数及び1日の所定労働時間が、正社員の概ね4分の3を上回る方のみが原則として、厚生年金に加入するのです。

また平成28年10月1日からは、厚生年金の適用が拡大されるので、次のような要件をすべて満たすと、厚生年金に加入する必要があります。

・ 1週間の所定労働時間が20時間以上
・ 給与の月額が8万8,000円以上(年収なら106万円以上)
・ 勤務期間が1年以上
・ 学生でないこと
・ 社会保険の対象となっている従業員数501人以上の事業所に勤務していること

このように厚生年金に加入するか否かは、上記のような要件を満たすか否かで決まるので、本人の意思で決められるものではありません

そのため読者の方は、

「厚生年金の加入要件を満たすほど、労働日数や労働時間を増やした方が良いのか」

「労働日数や労働時間は増やさないで、引き続き国民年金に加入した方が良いのか」

について、質問しているのだと推測されます。

労働環境を考える

私の個人的な意見としては、労働日数や労働時間を増やせる環境にあるなら、それらを更に増やして、厚生年金に加入した方が良いと思うのです。

平成28年度の国民年金の保険料は、前年度より670円値上げされ、月額1万6,260円になりました。

一般的に厚生年金の保険料は高いというイメージがありますが、給与や交通費などの合計額を、月額で「18万5,000円以下」にした場合、給与から控除される厚生年金の保険料は、この国民年金の保険料より安くなります。

しかも厚生年金に加入すれば、原則65歳になった時に、国民年金から支給される老齢基礎年金と、厚生年金から支給される老齢厚生年金を、どちらも受給できます

その理由として厚生年金の保険料には、国民年金の保険料も含まれているので、厚生年金の保険料を納付すると、国民年金の保険料も納付したことになるからです。

なお厚生年金と健康保険は原則として、セットで加入する必要があるので、上記のような要件を満たして、厚生年金に加入する方は、健康保険にも加入します。

ただ健康保険には、病気やケガで仕事を休んだ時に支給される「傷病手当金」や、出産で仕事を休んだ時に支給される「出産手当金」など、国民健康保険にはない保険給付がありますので、厚生年金と同様にメリットの方が大きいのです。


2. 25年しばりから10年になりますか?

最近は民進党の野田元総理の姿を、あまり見かけなくなりましたが、実は野田内閣の時代に年金制度は大幅に改正され、我々の生活に影響を与えているのです。

例えば

厚生年金と共済年金の統合
父子家庭への遺族基礎年金の支給
上記の厚生年金の適用拡大

などは、この時代に決定されました。

年金に関して野田内閣が決定したものは、すでに実施された、もしくは実施される日が決まっておりますが、次の2つに関しては、まだ実施されておらず、また実施される日もはっきり決まっておりません

(1) 受給資格期間の短縮

原則65歳から老齢基礎年金、またその上乗せとなる老齢厚生年金を受給するには、厚生年金や国民年金の保険料を納付した期間、国民年金の保険料の免除を受けた期間、合算対象期間などを併せた期間が、原則25年以上必要になります。

この原則25年は「受給資格期間」と呼ばれますが、これを原則10年に短縮することが、野田内閣の時に決定されました。

「25年しばりから10年になりますか?」という読者の方の質問は、この受給資格期間の短縮は実現するかについて、質問されているのだと思います。

(2) 年金生活者支援給付金

老齢基礎年金や老齢厚生年金の金額は、保険料の納付済期間や、免除期間などの月数を元に算出されるので、(1) の受給資格期間の短縮は、無年金の方を減らす一方、低年金の方を増やすことになります。

そのため老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受給できる、一定の低所得者を対象に、その不足をカバーするため、「年金生活者支援給付金」を支給することが、野田内閣の時に決定されました。

例えば老齢基礎年金の不足をカバーするために支給される、「老齢年金生活者支援給付金」の金額は、保険料の納付済期間や免除期間などの月数によって個人差はありますが、月額で5,000円程度になります。

なお選挙対策のバラマキではないかと、野党から批判を受けていた、3万円の「年金生活者等支援臨時福祉給付金」は、安倍総理の説明によると、年金生活者支援給付金の前倒しという側面があるようです。

おわりに


以上のようになりますが、これらは消費税率が10%に引き上げされる、平成27年10月から実施される予定でした。

しかし皆さんもご存知のように、消費税率の引き上げが延期されたため、これらの実施も延期になりました。

今のところは平成29年4月の、消費税率の10%への引き上げと同時に、実施される予定です。

あとは安倍総理の決断次第ですが、もしかしたら消費税率の引き上げが、また延期される可能性があります。

そのため国民年金の保険料の免除制度や後納制度、または国民年金の任意加入制度などを利用して、これらの実施が延期されたとしても、受給資格期間を満たせるようにしたいところです。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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