「老後の生活は何も心配しなくていい」なんていう人は今の日本には少ないのではないでしょうか。

定年まで家のローンを支払いながら必死に働けば、定年後は年金によって生活を保障してもらえるはずなんだけど…と不安が残るのが日本の年金制度かもしれません。

とにかく、「ややこしい」という印象があるのは私だけでしょうか。

一方、オーストラリアの年金制度はいたってシンプル

自分が働いている間に積み立てておくSuperannuation(年金)と政府が生活を保障してくれるAged Pension(老齢年金)の2種類です。

一見すると、日本の厚生年金と国民年金のように聞こえますが、内容は全く違います

今回はオーストラリアの年金制度について紹介します。

オーストラリアの年金は会社が負担する

まず、オーストラリアで仕事をするにはTax Number(タックス・ナンバー)の取得とSuperannuation(以下スーパー)への加入が義務付けられています。

税金の支払いと年金の積み立てです。

年金の積み立てについては、個人が給料から積み立てるのではなく、会社側が個人のために積み立てを行わなければならないことになっています。

2016年現在では年収の9.5%となっています。

会社は個人に対して給料の支払いとは別に、個人の積立年金にも給料の9.5%を支払わなければならないのです。

個人が望めば、そこに自分のポケットマニーから上乗せをして、積み立てることも可能です

政府が個人の積み立てを促すように、個人の積み立てた額と同じ額を上限付きで政府も支払う、というキャンペーンも行っています。

例えば、個人が自分で3万円をスーパーに積み立てると、政府も3万円振り込んでくれるという有り難いキャンペーンです。

政府がどうしてこのようなキャンペーンを行っているかというと、次にお話しする老齢年金に関わってくるからです。

税金でまかなっている老齢年金を減らすために、政府は個人の貯蓄であるスーパーを増やしたい思惑があるからです

また、課税前の給料から年金口座へ積み立てることも可能で、収入が多い人は税金対策になるという仕組みです

スーパーに幾らのお金が積み立てられているかは一目瞭然

スーパーは老後のための蓄えですから、政府が定めた年齢になるまでは基本的に引き出すことができないように決められています。

しかし、自分の口座にある貯蓄と同じですから、いくらの積み立てができているかは、常に確認ができるようになっています。

スーパーを運営する会社も、幾つかある中から自分で選べて、気に入らなければ会社を変更することができます。

スーパーを運営する会社とは、もちろん加入者から集めたお金を運営することを仕事としていて、積み立てたお金の運営方法は個人が選べる仕組みになっています

キャッシュのまま口座に保持しておくことも可能ですが、リスクは少ない分、利益も少なくなるわけです。

キャッシュの他に、「国内の株に投資する」、「国外の株に投資する」、「国内の不動産に投資する」、「国外の不動産に投資する」などから選ぶことができて、投資額の割合も自分で考えることができるようになっています。

また、世の中の流れを見極めながらいつでも運営方法を変更することが可能です

スーパーの運営会社に運営資金を支払う必要はありますが、それなりの利益が生じるようにできています。

スーパーが十分に貯まっていない人のためにあるのが老齢年金

では、スーパーで十分に蓄えることができなかったらどうなるのかというと、そこで登場するのが政府からの年金システムです

Aged Pension(ペンション)とよばれています。

政府の決めた年齢に達すると申請できますが、資産調査をされるので、生活するのに十分な蓄えがあると判断されると、ペンションは支払われません

日本の国民年金というよりもお年寄りのための生活保護という感じでしょうか。

ペンションは税金でまかなわれていますので、政府はこのペンションの支払い額を減らそうと、スーパーへの個人の積み立てを推奨しているというわけです。

オーストアラリアでは年金支給額を計算するために、ややこしい計算があるわけでも、住んでいる地域によって差があるわけでもありません。

自分の給料に合わせて積み立てられたスーパーを老後に使うことができ、それでも十分な生活が行えない場合に限って、政府が生活を保障する、という分かりやすい構図になっています

オーストラリアでも高齢化に伴い、ペンションの支給年齢が引き上げられていますから、問題が全くないわけではありません。

もちろん所得税や消費税も高いですが、少なくとも自分が働いて蓄えたはずの年金が戻ってこないかもしれない、という不安はありません

老後の生活を見通しやすく、人生設計を立てやすいシステムでもあるでしょう。(執筆者:松下 歩)