「後継者がいない」
「子どもに迷惑をかけたくない」
等と言った理由で、実家の墓じまいをし、近くのお墓等に移す「改葬」を希望している方も増えているようです。
遺骨を自分の希望する所に動かすことができるのでは? と思っていた時期もありましたが、実は自由に改葬を行うことはできません。
「墓地・埋葬等に関する法律第5条第1項」により市区町村の許可を受けなければならず、勝手に行うと、刑罰の対象になってしまうので注意が必要です。
どのような手順が必要なのでしょう。各自治体によって異なりますが、一般的な流れと、気になる費用の目安にもふれていきたいと思います。
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目次
1. 遺骨の移転先を決め、「受入証明書(使用許可証)」をいただく
まずは改葬先の管理者から、受入証明書をいただきましょう。この時、これからかかる費用を確認しておくことが大切です。
墓石の建立費用、永代使用料、管理料、檀家になることによって発生する負担等が考えられます。墓石の建立費用だけでも、最低でも100万円かかるという話も聞きます。
お墓を新たに建立せず、納骨堂の合同墓(永代供養墓)に改葬を予定しているAさんからお話しを聞きました。そこでは永代供養者(遺骨)を受け入れるにあたって、納める金額は1体20万円。Aさんは5体をお願いしたいと考えているので、100万円にもなるそうです。
2. 現在の墓がある市区町村役場から「改葬許可申請書」を取り寄せて記入
自治体によってフォーマットが異なりますが、この申請書には、遺骨(亡くなった方)の本籍、住所、火葬した場所、年月日、改葬の理由や改葬先等を記入します。
また、「遺骨4体まで1枚での申請書可」、「遺骨1体につき1枚」等、自治体によって取り寄せる枚数が異なる場合もあるので、よく確認をしておきましょう。
3. 現在の墓の管理者から「埋葬証明書(納骨証明書)」をいただく
証明書には、墓地使用者や管理者の氏名、捺印、遺骨の氏名が記入されています。これをいただく際に、「車1台が買えるほどの離檀料(お布施)を要求された」という話もあるようですね。
離檀料はこれまでのお礼、仏様への感謝の気持ちとしてお渡しするものなので金額に決まりはなく、高額な離檀料を支払う必要もないというのが大方の見方です。
金額に納得がいかない場合は、「適正な金額なのか」、「どのような理由でその金額になるのか」、「減額に応じてくれるのか」等、確認してみるようにしましょう。檀家総代、石材店、専門家等に相談してみるのも良いですね。
4. 現在の墓がある市区町村から「改葬許可証」をいただく
受入証明書、改葬許可申請書、埋葬証明書を現在の墓がある市区町村に提出すると、改葬許可証がいただけます。
この時、申請者と遺骨の間柄がわかる戸籍謄本、遺骨の死亡年月日の記述が確認できる戸籍謄本、申請者の住所がわかるもの(住民票や免許証写し等)が必要になることもあります。
私の住む札幌市では、戸籍謄本1通取るのに450円、住民票1通350円かかります。
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5. 現在の墓から遺骨を取り出す
この時、閉眼供養(へいげんくよう)を行います。これは、墓に宿った魂を鎮めて抜き取る供養のことで、「魂抜き」とも言われています。線香、ろうそく、花、供物を供え、身内だけで行うのが一般的です。
身内だけと言っても、僧侶にお経をあげていただきますから、お布施が必要です。公営墓地、霊園墓地の場合はお布施2~5万円、お車代5千~1万円。寺院墓地の場合は、お布施やその他の謝礼も含めて、2~15万円が相場のようです。
6. 古い墓の解体、撤去を石材店等に依頼し、更地にする
更地にしてお返ししなければなりません。50~60万円程度で済む場合もあれば、敷地面積によっては100万円を超えるケースもあるようです。
石材店数社から見積もりを取るのがベストですが、民間霊園、寺院墓地の場合は指定石材店制度があり、依頼できる石材店が決まっている場合もあります。
7. 移転先に「改葬許可書」を提出し、遺骨を埋葬
これでやっと改葬が終了します。なお、遺骨を移す際ですが、大切な遺骨なので、なるべく自身の手で運ぶことを優先したいものです。飛行機代、タクシー代等、どのくらいの交通費がかかるのか確認しておきましょう。
自身の手で運ぶことができない場合、国内では郵便局の「ゆうパック」が対応可能のようです。宅配は、多くの業者が規約で遺骨の引き受けをしないと決めているので、難しいようです。
改葬には時間や労力がかかります。
「高齢で体力に自信がない」等、自分達で動くことができない場合は、改葬手続きを専門に行っている行政書士、石材店にお願いするのも良いでしょう。
また、費用分担はどうするのか、頭の痛い問題です。兄弟姉妹や家族としっかり話し合っておきましょう。(執筆者:横井 規子)