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日銀の「長期金利の目標導入」は金融緩和ではない 投資商品には近づくべからず

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日銀の「長期金利の目標導入」は金融緩和ではない 投資商品には近づくべからず

今回の日銀の政策は「金融を引き締め」


9月21日、日本銀行が金融政策決定会合を開き、「長期金利が0%程度で推移するように国債の買い入れを行う措置」を発表しました。

NHKは、「金融緩和策強化」と報道しましたが、これは、金融緩和ではありません

なぜなら、2016年9月26日現在の長期金利(10年国債)の利回りはマイナス0.06%。この国債のマイナス金利を0%にまで引き上げるのです経済では、金利を下げると緩和になり、金利を上げると引締めになります

つまり、今回日銀が打ち出した政策は、金融を引き締めたということ。

ですから、住宅ローンなどは、これから少し金利が上がる可能性があります。また、金融緩和なら為替は円安になりますが、今回は金利を引き上げる引締めの様相が強いので、円高になっています。

そして、何より気をつけなくてはいけないのが、金融機関の投資商品の販売が加速すること。本音を言えば、金融機関は、みなさんの預金を預かりたくない。

まとまったお金を預けにくる人がいたら、

「こんな低金利では、預金しても増えません。それよりも、よい投資商品があるので、どうですか」

と、投資商品に誘導していくことでしょう。

では、いま、金融市場に何が起きているのでしょうか。

貸し出しが増えず、金融緩和は失敗


みなさんもご存知のように、日銀は、2年で2%の物価上昇を目指して、「異次元の金融緩和」をしてきましたが、すでにこれは失敗しています。

日銀は、銀行の貸し出しを増やすために、銀行から年間80兆円もの国債を買って、その代金を銀行に渡し、銀行がそのお金を一般に貸し出すはずでした

ところが、企業は景気の先行きが不透明なので、銀行からお金を借りてまで設備投資をしようとは思わない。個人も、給料が上がらないので、借金などしようとしない

ですから銀行は、日銀からどんなにお金をもらっても、貸し出しにまわせない。ところが、日銀からはどんどんお金が来るので、困ってそのお金を、日銀が銀行のお金を預かるに当座預金口座という口座に入れてきました。

なぜなら、日銀に預けておけば、0.1%ではありますが利息がついたからです。

この日銀の当座預金の残高を見ると、日銀が「異次元緩和」を始める前は約58兆円でしたが9月28日現在で約313兆円になっています。つまり、255兆円も増えているのです。

マイナス金利になったわけは…

いっぽう、「異次元緩和」で日銀が銀行に払った国債の代金は236兆円。つまり、日銀が金融緩和のために出したお金のほとんどは、貸し出しにまわされずに当座預金にブタ積みになっていたということ。

そこで日銀は、これ以上お金を当座預金に預けたら、預けたお金に0.1%の金利をつけるのではなく、逆に0.1%の手数料をと言い出しました。これがマイナス金利です

銀行は、これ以上日銀の当座預金口座に預けたら損をする。かといって、お金を貸す先がない。

とりあえず手持ちのお金で国債を買うしかなくなり、みんながいっせいに国債買いに走ったので、国債が品薄になって価格が暴騰し、金利はついに7月にはマイナス0.3%まで下がりました

こんな状況では、金融機関は資金の運用ができないと悲鳴を上げ、日銀もこれに対応せざるをえなくなって、今回の金利引き上げに至ったということです。

投資商品は、個人にはリスクがあるが、金融機関にはノーリスク


金融機関がみなさんのお金を預かりたくないのは、預かっても運用できないからです。

みなさんは、銀行にお金を預けると、微々たる金利であってもノーリスクで増やして返してもらえます。

逆に言えば、銀行は、たとえ日銀の当座預金金利がマイナスでも、国債の金利がマイナスでも、みなさんにはプラスにしてお金を返さなくてはならない。金融機関にとって預金は、損をするかもしれないリスク商品なのです。

けれど投資商品は、どれだけ売っても金融機関は手数料をもらうだけですからノーリスクで、売れば売るほど儲かります

今回の日銀の政策ではっきりしたのは、日銀の金融政策は失敗していて、デフレはまだまだ続くということ。デフレの中では、キャッシュが強い。預金でいいのです

日銀は、株もたくさん買っていて、ブルーミングバーグによれば、2018年には、日経225銘柄の3分の1は日銀が筆頭株主になると予想しています。まさに官制相場ですが、今回、自由市場であるはずの債券相場も、日銀がコントロールすると宣言

どんな結果になるかわかりませんが、少なくともみなさんは、こんないびつな相場の投資商品には、近づかないほうがいいでしょう。(執筆者:荻原 博子)

《荻原 博子》
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荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

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