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【平成29年度から実施予定】低所得者にも容赦ない「社会保障」の具体的な改正点3 つ

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【平成29年度から実施予定】低所得者にも容赦ない「社会保障」の具体的な改正点3 つ

最近新聞を読んでいると来年度、つまり平成29年度から実施される予定の、社会保障の改正案について、よく掲載されております。

新聞によって若干の違いがありますが、次のような内容の改正が実施されると記載されておりました。

(1) 70歳以上の現役並み所得者に適用される高額療養費の改正
(2) 後期高齢者医療の軽減特例の廃止
(3) 介護保険料の計算方法の改正

いずれについても改正されれば、該当する方の負担増となり、具体的な改正内容は次のようになっております。


1. 70歳以上の現役並み所得者に適用される高額療養費の改正

70歳以上の医療費の自己負担は現在、次の表のようになっており、中央に記載されているのが、病院や診療所の窓口で支払う、医療費の自己負担の割合です。


≪出典:高額療養費制度の見直しについて(厚生労働省保険局pdf)≫

ただ医療費の自己負担には上限が設けられており、同一月(1日から月末まで)に支払った医療費の自己負担が、一定額(自己負担限度額)を超えた場合には、その超えた部分が払い戻されます。

この制度が「高額療養費」であり、表の右側にはそれぞれに適用される、自己負担限度額が記載されております。

年収370万円までの一般に該当する場合

例えば「~年収約370万円」の「一般」に該当する場合、外来の自己負担限度額は1万2,000円、外来と入院を併せた自己負担限度額は4万4,400円です。

また「年収約370万円~」の「現役並み所得者」に該当する場合、外来の自己負担限度額は4万4,400円、外来と入院を併せた自己負担限度額は

「8万100+(総医療費-26万7,000)×1%」

です。

最後の計算式は少し複雑なので、総医療費が100万円になった場合の例を示すと次のようになり、自己負担限度額は8万7,430円です。

8万100+(100万-26万7,000)×1%=8万7,430

そのため総医療費100万円の3割である30万円を、すでに病院や診療所の窓口で支払っていた場合、次のように21万2,570円が払い戻されます。

30万-8万7,430=21万2,570

年収約1,160万円からの方の場合

平成29年度から実施される予定の社会保障の改正案は、70歳以上の現役並み所得者に適用される自己負担限度額を、次のような70歳未満の自己負担限度額に、合わせるというものです。


≪出典:高額療養費制度の見直しについて(厚生労働省保険局pdf)≫

この表の中の上限である「年収約1,160万円~」の方が、100万円の医療費を支払った場合、次のように自己負担限度額は25万4,180円です。

25万2,600+(100万-84万2,000)×1%=25万4,180

現在の70歳以上の自己負担限度額は、上記のように8万7,430円になりますから、この例の場合には「25万4,180円-8万7,430円」で、16万6,750円も自己負担が増加する可能性があります

2. 後期高齢者医療の軽減特例の廃止

原則75歳になると加入する後期高齢者医療の保険料は、経済的な能力に応じて負担割合が変わる「所得割」と、全員が負担する必要のある「均等割」で構成されております

このうちの均等割は収入によって、7割、5割、2割の軽減措置がありますので、低所得者についても保険料はゼロにはなりませんが、他の加入者の3割~8割程度の負担で済むのです

なお現在は均等割が7割軽減されている世帯において、例えば後期高齢者医療に加入している全員の年金収入が80万円以下で、かつ年金以外の収入がない場合には、9割軽減という軽減特例が実施されております。

また均等割が7割軽減されている世帯において、例えば夫の年金収入が80万円超168万円以下で、かつ妻の年金収入が80万円以下の場合には、8.5割軽減という軽減特例も実施されております。

その他に所得割についても、例えば夫の年金収入が153万円超211万円以下で、かつ妻の年金収入が80万円以下の場合には5割軽減という軽減特例があるのです。

平成29年度から実施される予定の社会保障の改正案は、このような軽減特例を廃止して、「本則上の軽減(均等割の7割、5割、2割の軽減措置)」だけにするというもので、これをまとめると次の表のようになります。


≪出典:保険料軽減特例の見直しについて(厚生労働省保険局pdf)

この廃止は平成29年度以降に、新たに75歳になる方を対象に実施され、すでに75歳以上の方については、3年かけて段階的に廃止するようです

3. 介護保険料の計算方法の改正

介護保険の財源の30%は、主に中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」と、主に大企業の従業員が加入する「組合健保」が負担する、介護納付金で賄われております。

そのため協会けんぽや組合健保は、40歳以上65歳未満の介護保険の加入者から、介護納付金に充てるため、介護保険料を徴収しているのです。

協会けんぽや組合健保が負担する介護納付金の金額は、それぞれの制度に属する、介護保険の加入者の人数に応じて決まります

こういった仕組みを「加入者割」と言い、単純に人数が多くなるほど、負担が重くなります。

平成29年度から実施される予定の社会保障の改正案は、こういった計算方法を変更して、介護納付金の3分の1については、「総報酬割」で計算するというものです。

総報酬割とは大まかに表現すると、協会けんぽや組合健保に属する、介護保険の加入者の月給や賞与の総額を算出し、その金額が大きいところの負担を増やし、小さいところの負担を減らす仕組みです

そのため月給や賞与の総額が大きい、主に大企業の従業員が加入する組合健保は、介護納付金の負担が増えるので、40歳以上65歳未満の方から徴収する介護保険料を、以前より多くする必要があります。

ただ月給や賞与の総額が小さい、主に中小企業の従業員が加入する協会けんぽは、介護納付金の負担が減るので、40歳以上65歳未満の方から徴収する介護保険料を、以前より少なくできます。


保険証を回収された時は「無料低額診療事業」を活用する

このように平成29年度から実施される予定の社会保障の改正案は、現役並み所得者や、大企業の従業員という、比較的に収入のある方だけでなく、年金収入が少ない方にも負担を求めており、低所得者に容赦しない内容になっております

そのためこのような改正案が実施された場合、後期高齢者医療の保険料の納付を滞納して、保険証を回収されてしまい、必要な医療を受けられない方が発生するのではないかと、懸念されているのです。

そういう事態になってしまった場合に備え、全日本民主医療機関連合会が実施している「無料低額診療事業」については、事前に知っておいた方が良いと思います。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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