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政府は「副業」を推進するも… 立ちはだかる「社会保険や税の問題」

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政府は「副業」を推進するも… 立ちはだかる「社会保険や税の問題」

政府は人手不足解消の手段として、従来多くの企業の就業規則で禁止してきた「副業」を、企業に解禁するよう推奨しています。

しかしこれは国が進めている長時間労働削減と矛盾するところもあり、企業も及び腰です。社会保険や税といったマネーの観点から見ても、課題もあります。


税の問題

「副業」に関する所得は、アルバイトのような雇用契約であれば給与所得、業務委託契約であれば雑所得に該当します。

業務委託でも事業所得扱いにするのは、正社員の副業の場合は困難です。

雑所得になってしまうと、マイナスでも他の所得との損益通算(相殺)は不可です。

 (参照 確定申告で「損益通算」 改正点も含めて正しい知識で申告すると節税にもなる。) 

健康保険・厚生年金の問題

もし副業することで、本業と副業の二カ所で社会保険に加入するようになりますと、「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を、本業の勤務先を通じて年金事務所に提出することになります。

したがって、本業の勤務先には副業していることはバレます


簡単に言えば、各々の給与に応じて社会保険料を按分し、本業と副業の両給与分から社会保険料は天引きされます。

「106万円の壁」により週20時間でも加入のケースが出てきたため、このようなケースが従来よりも生じやすくなっています。

雇用保険の問題

現状では、副業していても労働時間週20時間以上(かつ雇用期間31日以上)の会社で、雇用保険加入となります。

今後、本業と副業で通算20時間になっていれば、それぞれで加入になる方向です。

雇用保険料率は労使あわせて1%前後であり大きな負担とは言えませんが、企業に想定外の負担が出る可能性はあります。

またこのような形で加入すると、本業の勤務先に副業していることを伝える場合もあります。

労災保険の問題


これが企業にとっても一番悩ましい問題になると考えられます。


雇用契約であれば副業先でも労災の対象にはなります。ただ例えば副業の単純作業がケガの原因であれば、副業の給与をもとに補償されるので、補償が十分でない可能性も出てきます

また副業をしていて「過労」で倒れた場合は、本業と副業の勤務先の、どちらが補償責任を負うのかが問題です

加えて本業の勤務先から副業の勤務先へ行く途中に通勤災害にあったようなケースも問題です。これらは難しい問題で、今後国もガイドラインを出す(もしくは法改正する)べき話だと考えられます。

今後想定されること


昔から会社に「副業バレ」するとまずいという風潮があり、確定申告書に記載する住民税の納付方法を「自身で納付」にするとよいという話がありました。


マイナンバーで会社に副業バレするという脅し文句が一時期踊りましたが、従来から(勤務先が徴収する)住民税の課税明細で副業バレしますので(その回避策が上記の方法)、マイナンバーのせいでそのようなことが起きることはありません。

ところが公的保険における改正の動きを見ると、本業の勤務先が副業を解禁してくれることを前提としたものばかりで、公的保険の手続きをすることで副業がバレるようになっています

副業解禁推奨が進むと手続き上の問題で、隠れて副業することはもっと難しくなりそうな気がしてなりません。(執筆者:石谷 彰彦)




《石谷 彰彦》
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石谷 彰彦

石谷 彰彦

1977年生まれ。システム開発会社・税理士事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じFPの資格を取得。行政非常勤職員や個人投資家としての経験もあり、社会保障・確定申告・個人所得税関係を中心にライティングやソフト開発を行う。近年は個人の金融証券税制に重点的に取り組み、上場株式等課税方式有利選択ツールを公開。お得情報の誤解や無知でかえって損をする、そんな状況を変えていきたいと考えている。 <保有資格>AFP・2級FP技能士・日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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