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「消費税を引き上げると誰にどのような影響があるのか」あなたはどこまで知っていますか?

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「消費税を引き上げると誰にどのような影響があるのか」あなたはどこまで知っていますか?

衆議院議員選挙が始まる


10月10日に公示された衆議院議員選挙(投開票10月22日)の争点の一つでもある消費税。その税率を引き上げるのか、はたまた使い道をどうするかについて議論されています。

しかし「消費税がどういうものなのか」を、身近過ぎて実はよく分かっていない人も多いようです。

そこで、消費税の仕組みを解説し、もし消費税を引き上げると誰にどのような影響があるのかについても解説したいと思います。

*このコラムでは、地方消費税も含めて「消費税」と表記します。

消費税について

消費税は間接税と呼ばれていますが、これは「税金を負担する者」と「税金を納める者」が異なることを意味しています

消費税を負担するのは、私たち「消費者」です。しかし、私たちがいちいち消費税の確定申告をすることなどありません。消費税を納付するのは、商品を売った「事業者」だからです。

逆に、所得税や法人税のように、「税金を負担する者」と「税金を納める者」が同じ税金のことを「直接税」と呼びます。

ここで、つい誤解されてしまうのが、

「事業者だって商品を買う(仕入れる)んだから、消費税を負担するじゃないか」

ということです。しかし、事業者は消費税の「負担」はしません。次のようなケースで考えてみましょう。

ケース1 事業者側から消費税


この場合、製造業者Aは8円の消費税を預かり、その8円を税務署へ納付します(材料仕入が無かったと仮定)。製造業者は預かった8円を納めただけなので負担は0円です。

販売業者Bは一時的に8円の消費税を払っていますが、その代わり消費者Cからは24円の消費税を預かっています。差額16円のお金が残ることになるので、それを税務署へ納付します。

「預かった24円-払った8円=納付した16円」

です。

結果として、販売業者Bは消費税を全く負担していません。結局、消費税を負担しているのは消費者Cのみです。

つまり、消費税をあえて悪く言えば、「消費者のみに負担させる税」と言い換えることができます。

仕組み上、商売をしている立場からすると、消費税率の引き上げは計算のパーセンテージが変わるだけに過ぎません。

だからこそ、事業者側から消費税率引き上げに関して、大きな反対の声が上がってきません

事業者にとって消費税率の引き上げが経営にダメージを与えないか?

いえ、着実にダメージを与えます。

一般的にも言われている通り、「消費を冷やす」と考えられます。たとえば、たばこ税を引き上げる際には、税収増と共に喫煙者の減少を期待します。

税負担が増えることで、その消費が減るのは当然です。

同様に、消費税率を引き上げれば、消費全体が減るのも当然です。とはいえ、昨今は消費税率5%時の消費を取り戻しつつあると言われています。

結果的に元に戻るのであれば、消費税率を上げても長期的に問題ないではないかとも考えられます。特に、ヨーロッパを始めとする先進国では、20%前後の消費税率もあたり前になっています。


日本は消費税を上げる余地があるか?

まだまだ、日本も消費税を上げる余地があるという人が多いのも事実です。

しかし、ヨーロッパは移民の受け入れや少子化対策によって人口が拡大し、ある程度の消費維持が期待できる経済基盤があります

その一方で、日本では人口の減少が始まり、消費の減少が懸念されています。

はたして、今の日本経済が消費税率引き上げという、消費減退策に耐えうるだけの経済基盤を有していると言えるのでしょうか?

消費税先進国のヨーロッパで導入されている「軽減税率」

結論から申しますと、消費者にとって軽減税率は無意味です。

ケース2 軽減税率


消費者Cは値段が高くなるため、支出が増えます。このままでは生活が困るので、消費者C以外の人たちが買い控えるようになります。販売業者Bは売上数量が減って困るので、値下げをします。

あくまでも机上の計算ですが、売上数量を保つことを優先すれば、税込金額で消費税引き上げ前と同様の水準に至るまで値下げすることが想定されます。

一般的に、消費税率を引き上げると物価が上がると思われがちですが、実は大して変わらない、それよりも実質的に物価を下げてしまう結果を生みます

販売業者Bは、このままでは利益が減ってしまうので、製造業者Aにも値下げ交渉するものと予想されます。

一皿100円の回転寿司が平日限定で90円にしたり、大手牛丼チェーン店が割引券を配って実質的な値下げをしている姿を目にしますね。

具体的に軽減税率が適用されたケースを考える


つまり、この商品が食料品だとして、ケース2のように税率を引き上げず、ケース1のままだったとした場合です。

結論はもう、お分かりですね。

単に販売業者Bが「値下げしない」だけです。消費者Cの支出に変化はありません

事業者側・消費者側共に

「これは軽減税率適用の商品か?」
「適用されない商品か?」

を考える手間が増えるだけです。

そもそも、軽減税率を適用しているイギリスやフランスで、日本よりも安く食料品を買うことができるのでしょうか?

もちろん、赤字が続く財政を立て直すためには、消費税率引き上げを含めた税収増の議論が必要でしょう。

しかし、併せて

「消費税以外に税収を増やす方法は無いのか?」

「歳出を削減する余地はないのか?」

といった幅広い議論も望まれるところです。

投票日まで時間をただ消費するのではなく、建設的な議論が行われることを期待しています。(執筆者:小山 信康)

《小山 信康》
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小山 信康

小山 信康

1999年中央大学商学部経営学科卒。 IR専門印刷会社にて上場企業の情報開示書類制作業務に携わった後、ファイナンシャルプランナーとして独立。 現在、企業の従業員に対する投資教育等の活動を行なう傍ら、大学や専門学校等においても講義を行なっている。 また、家計の見直しから投資まで幅広く相談業務も行っている。 <保有資格>:CFP、FP技能士1級、1級企業年金総合プランナー 寄稿者にメッセージを送る

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