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「過払い遺族年金」(受給資格がない人への支給)は18億円以上 マイナンバーで過払いが判明したら返還を求められる

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「過払い遺族年金」(受給資格がない人への支給)は18億円以上 マイナンバーで過払いが判明したら返還を求められる

「遺族年金失権届」


夫の死亡によって受給権が発生した、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金など)を受給している妻が、再婚(事実婚を含む)した時は、その遺族年金の受給権は消滅します。

また親の死亡によって受給権が発生した、遺族年金を受給している子供が、18歳に達した日以後の最初の3月31日を迎えた時は、1級または2級に該当する障害状態にある場合を除き、その遺族年金の受給権は消滅します。

そのためこのような失権事由に該当した日から10日または14日以内に、住所地の年金事務所などに対して、「遺族年金失権届」という書類を提出しなければならないのです。

この手続きをきちんと実施していないため、失権した後も遺族年金の支給が続き、過払いが発生していることが、会計検査院の調査で発覚しました。

約1万人を抽出した調査では、過払いの遺族年金は約18億円と判明

会計検査院は遺族年金の受給者(約540万人)のうち、昨年度までの3年間の受給者である約1万人を抽出し、姓の変更や遺族年金失権届の提出状況を、住民基本台帳ネットワークや戸籍情報を活用して調査しました。

その調査結果によると、再婚などによって遺族年金の受給権が消滅しているにもかかわらず、遺族年金の支給が続き、合計で約18億円が過払いになっているとわかったのです。

また過払いが発生した理由と、その理由別の人数や金額は、次のようになっております。

・ 失権届の提出が遅れた:967人(約17億567万円)

・ 失権届を提出しなかった:25人(約1億6,019万円)

・ 失権届に記載された再婚日などが間違っていた:7人(約760万円)

これは約1万人を抽出した調査結果なので、実際に発生している過払いの人数や金額は、これより確実に増えると推測されるのです。


年金に関連した時効は「2年」または「5年」の2種類がある

国民年金法や厚生年金保険法を読むと、

「保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利」

は、原則として2年が経過した時に、時効によって消滅すると記載されております。

また「保険給付を受ける権利」は、原則として5年が経過した時に、時効によって消滅すると記載されております。

つまり

・ 日本年金機構が年金制度の加入者に対して、保険料などを支払ってくださいとお願いできるのが「2年」

・ 年金制度の加入者が日本年金機構に対して、年金を支給してくださいとお願いできるのが「5年」

なのです。

今回の時効は何年?

今回のような過払いの年金は、「保険料その他この法律の規定による徴収金」の中に記載されている、徴収金の一種と考えられるので、時効は2年です。

そうなると年金の過払いを受けた方は、年金の法律のうえでは、過去2年分だけを返還します

ただ過去に発生した類似のケースを調べてみると、過払いの年金を会計法の規定による「不正受給等に係る返納金」と位置づけ、この時効である5年を適用しているので、過去5年分を返還する必要があるのです。

しかしこのように期間の長い時効を適用しても、約18億円の過払い年金のうちの約8億円は、すでに5年の消滅時効が成立しているため、回収不能です


過去には死亡した事実を把握できずに、年金の過払いが発生している

年金の過払いは今回が初めてではなく、直近では2年くらい前に全国各地で発覚して、大きな社会問題になりました。

それは年金の受給者が死亡した事実を、その家族などが隠したため、年金の過払いが発生したというものです。

この時には両親が死亡したのを隠して、約50年も過払いの年金(総額で約5,100万円)を受け取っていた80代の女性が、詐欺などの疑いで逮捕されました。

今回の遺族年金の過払いとは違い、不正行為によって発生した過払いなのですから、全額返還を求めてもおかしくはないと思います。

しかし上記のように「不正受給等に係る返納金」と位置づけても、時効は5年ですから、過去5年分の返還を求めるのが限界になるはずです。

この女性は市役所に対して、両親の死亡届をきちんと提出していたのに、日本年金機構は不正受給を約50年も見抜けなかったという点には、さらに驚きを感じるのではないでしょうか?

2018年からはマイナンバーで、日本年金機構と自治体が情報連携へ

政府は2017年11月10日に、日本年金機構がマイナンバーを活用して、自治体と情報連携を可能にする政令を閣議決定しました。

これにより例えば

・ 年金事務所で年金を請求する前に、市区町村の窓口まで行って、課税証明書などを取得する必要がなくなります。

・ 市区町村の窓口で生活保護を申請する際に、年金関連の書類を持参する必要がなくなります。

こういった年金分野でのマイナンバーを活用は、2018年1月から稼働テストを開始し、3月以降に順次導入していく予定です。

マイナンバーによる情報連携は、過払いの発生を防止する効果がある


マイナンバーにより日本年金機構と自治体の情報連携が、現在よりも強化されれば、

市区町村に婚姻届や死亡届が提出されているのに、日本年金機構が結婚や死亡の事実を把握できず、年金の過払いが発生する

などといったことは、少なくなっていくと思うのです。

また日本年金機構が年金の過払いの有無を調べるのが、現在よりも容易になるはずであり、過払いが見つかれば過去5年分については、返還を求められます

ですからマイナンバーが年金分野で活用される前に、

「〇〇年金 失権事由」

などといったキーワードで検索して、年金の過払いを受けていないかを、調べておいた方が良いかもしれません。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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