平成29年から改正される医療費控除の大きなものとして、健保組合等から発行される医療費通知(「医療費のお知らせ」など)を添付すると、申告の手間が大きく軽減されるというものです。
マイナンバーによる社会保障と税の連携を前提とした改正でしたが、実際に平成29年分の確定申告期が始まって見ると、この点においては残念な状況と言える現実が見えてきました。
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目次
要件が満たされていない医療費通知もある
添付できる医療費通知には6項目の要件
確定申告の添付資料に使える医療費通知は、現在発行されているものならすべてOKとなるわけではなく、下記6項目の記載が必須とされています。
(2) 治療を受けた年月
(3) 治療を受けた人の名前
(4) 病院・薬局等の名称
(5) 医療費の額
(6) 健保組合等の名称
従来発行されていた「医療費のお知らせ」などは、必ずしも6項目が全部網羅されているとは限りません。
また平成29年分の医療費通知においても6項目の記載を健保組合等に義務化しているわけではないので、医療費通知を確定申告の添付に使えない事態も発生しています。
医療費通知が添付できない自治体の例
たとえば国民健康保険の保険者である横須賀市は、(5)医療費の額が記載されていないとして、確定申告の添付資料として使えない旨告知しています。
この他、神奈川県の多くの自治体でも同様の注意を呼びかけています。(例えば茅ヶ崎市)
医療費通知が確定申告に添付できない場合は、従来通り領収書から集計して計算することになります。
医療費通知を添付できる場合の申告書作成方法
領収書からの入力も含め、平成29年分確定申告書等作成コーナーでの入力を紹介します。
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「医療費通知を利用して入力する」を選ぶのは勿論ですが、利用する医療費通知については「書面の医療費通知を利用して入力する」を選びます。
「医療費通知データを読み込んで入力する」については、次の段落で説明します。
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書面での記載と同じ項目ですが、医療費通知は平成29年1~12月という単位で発行されるとは限らないので、平成28年分が混じっている場合などは、医療費通知に記載された分の全額(A)と、平成29年分を抜き出した金額(B)を両方記載します。
また(C)に関しては医療費通知に記載されていないケースのほうが一般的ですが、疾病や障がいに応じて自治体から医療費の補助が出ていたり、民間医療保険の保険金がおりていたりする場合は、その金額を記載します。
医療費通知以外にも、自由診療や記載外の医療費がかかっていたり、電車・バスでの通院費があったりする場合は、「医療費通知に記載のない医療費の有無」で「はい」を選び領収書から入力します。
通院費を入力する場合
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医療費通知に記載されていない医療費を入力する場合
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国税庁側はデータの受け入れ体制はできているが…
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「医療費通知データを読み込んで入力する」を選択した場合は、XMLの取り込み画面になります。
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健保組合等に用意してもらったXMLファイルを取り込むことになります。
しかし書面の医療費通知ですら確定申告に添付できないものが提供されている現状では、XMLを取り込む方法は一般的とは言えません。
マイナポータルを使った電子申請(行政手続き)もそうですが、国の側で手間軽減の体制を整えたにもかかわらず、自治体や組合側が追いついておらず、メリットを享受できる国民が少ない段階と言えます。
より多くの国民がメリットを感じられるようになると、低迷するマイナンバーカード交付率が向上するのでは…と思います。(執筆者:石谷 彰彦)