※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

専業主婦の賃金はゼロでも生産はゼロではない。自家生産のありがたみを考える。

ライフ 子育て
専業主婦の賃金はゼロでも生産はゼロではない。自家生産のありがたみを考える。

「専業主婦」とは


年末年始で一気に再放送されていた『逃げるは恥だが役に立つ』略して『逃げ恥』。

星野源さん演じる平匡(ヒラマサ)と、彼に雇われて家事代行サービスをしていた新垣結衣さん演じるみくりとの関係を描いた連続ドラマです。

放送当時から話題でしたが、何と言っても世間を騒がせたのは、このやりとりなんじゃあないでしょうか。

プロポーズのおり「結婚をすれば貯蓄も増え…」と論じる平匡に、

「結婚をすれば私をタダで使えるから合理的…そういうことですか?」

「それは好きの搾取です」

「私森山みくりは愛情の搾取に断固として反対します」

とみくりは反論します。

確かに、結婚することでそれまで受け取っていた賃金がもらえないわけですから、ヒロインの立場から「結婚は損だ」と感じるのは、わからないでもない。

でもみくりさん、それは考え違いです。

ふつう家事代行サービスで働いている人は、自宅と勤務先との2か所(勤務先が複数なら3か所以上)で家事を行っているわけですよ。

自宅以外の家事の対価として賃金を得ています。それが、自宅でしか家事をしなくなり「家事」の生産数が減っているんですから、賃金がゼロになるのは当然です。

専業主婦は生産している

ここで私がポイントにしたいのは、

専業主婦の賃金はゼロで当然だけど労働による生産がゼロというわけではない

というところです。

私は専業主婦ですが、以前の記事で書いたように、キリンのシミュレーションページによると年収約900万円相当の労働をしております。

*ただいま、シミュレーションのサイトはつながりません。ご了承ください。

都市部と農村部の生活水準

別の例をあげましょう。日本でも農村部では、年間所得100万円以下という世帯は少なくありません。月間だと10万円以下です。

これ、都市部ではなかなか苦しい水準ですよね。でも農村部だと生活できる。

なぜか。簡単です。住居費が格安だというのもありますが、農業を営む彼らは、

自家生産した農産物を消費している

からです。

現金が必要な教育などは厳しくなる都市部ではできない芸当ですね。

労働によって自ら生産し消費したものは、公式な経済活動には計上されません

しかし、それでもやはりそれは労働による生産だし、生活を潤しています


自家生産という非公式収入

専業主婦は(外注すれば支出になる)家事を、労働によって自ら生産し、それを家族みんなで消費しているのです。

このドラマにより書かれた著書に「年収600万円以下の夫は専業主婦に正当な対価を支払えていない」という主張がありました。

夫の年収600万円の半分が妻の家事労働対価だということで、

夫の収入から専業主婦の労働を引き算している

ところに疑問をもちました。

これ、足し算しなければならないところだと思います。

夫の収入で購入したものも専業主婦が生産したものも、家族は両方消費します。貯蓄は、夫の現金収入からしかできませんけどね。

我が家の「非公式収入」

専業主婦を妻に持つ私の夫ですが、起床直後に洗濯物を干しお風呂を洗う人です。けっこう早く帰ってきてくれて、毎日子どもと遊んでいます。

彼の家事・育児をキリンのシミュレーションにかけてみると、なんと賃金収入との合計だと私を上回る約1,000万円(先ほどの記事の時から増えている)です!

キリンのシミュレーションの粗さに目をつぶりさえすれば、わが家は夫婦で年収約2,000万円。その3分の2以上は、自家生産という非公式収入です。


GDPだけを増やせばいい?

女性の社会進出が進んで、保育所と保育士が増えて親が自宅で子どもを育てなくなる。

国全体としては分業が進み、効率は良くなるのでしょう。しかし子育ては効率じゃありません。

GDPは増えるんでしょうが、それって見えない生産が見える生産に変わっているだけですよね。

国内の「総生産」はどれだけ増えるのでしょうか。

豊かさは「非地位財」で決まる

こんな指摘もあります。行政書士で富裕層の金森重樹さんの主張です。

金森さんによると、「非地位財」すなわち休暇や愛情や健康や自由のような、それ自体に価値があり喜びを生むものにお金を使うことが、人生の幸福度を増やしていくんですって。

「地位財」つまり所得や社会的地位や車や家のような、他人と比較しないと価値の生まれないものに散財しても幸福にはなれないとのことです。

・ 休暇
・ 愛情
・ 健康

そういうのって、専業主婦が生産しているものです。家事・育児の本質は、家族のケアですから。

家族でまったりするために、働いていますから。ということで金森さんの主張には大賛成。

参照:プレジデントオンライン「幸福にほど遠い」富裕層のお金の使い方

「愛情の搾取」と「非地位財」

『逃げ恥』のみくりさんは「愛情の搾取」と言っていましたが、愛することこそが豊かさです。

そこに価値を感じられないなら、どんなにお金があっても幸せにはなれないのではないでしょうか。

我が家は年収約2,000万円のかなり多くの部分を、「非地位財」に費やしているということです。

これはゼイタクですよ


掃除なんて毎日しなくても、食事の栄養バランスなんて多少崩れていても、寿命が縮んだり病気リスクは増えたりするでしょうが、すぐさま死ぬことはありません。

それでも家事します。子どもにたっぷりの愛情を注ぎたい。

だから専業主婦願望をもつ女性が一定割合で存在するのだと思います。

「子育てがひと段落したら、家計を助けるためにパートを始めないと」なんて言いますが、この「家計を助けるために」は私の場合、方便です。

本心は「育児っていう仕事が減ると自分をもてあますから働きに出たい」です。

働かずにヒマな人生なんて、つまらんじゃないですか。ちょっとでも豊かになりたいじゃないですか。

自家生産のもつ優位

子育て真っ最中の世代が、専業主婦でいるつまり家事・育児を自家生産することのメリットを挙げておきます。

裏返せば、政治家の方々はココをナントカしていただかないと女性の社会進出は進まないよというポイントでもあります。

1. 税金がかからない

賃金を得ると所得税がかかり、家事を外注(外食や総菜など含む)すると消費税がかかる。保育料に消費税はかかりませんが…。

一方で、自家生産だとそういう税金は一切発生しません。

2. 制度の後押しを必要としない

・ 税や社会保険の制度
・ 夫の勤務先の制度
・ 配偶者控除
・ 3号被保険者制度
・ 企業によっては(公務員にも!)依然として残る配偶者扶養手当

共働きだと、夫婦ともに厚生年金を受給できるようになるので、長い目で見ればこちらの方が有利なんでしょうね。

だけど、子どもの教育が目の前にある現状では、子育ての幸せをむさぼるのに、これらの制度が後押ししてしまう。

3. 自宅が職場で保育の場

賃金収入を得るためには働きに出ねばならず、移動に時間と労力がかかります。

子どもを保育所に預けるとなると、自宅-保育所-職場の三角移動を日に2回するんですよね。

きょうだいで保育所が異なる場合もあるとかいう話も聞きます。

この時間と労力に対しては、誰も対価を支払ってくれません。ムダです。

専業主婦は自宅が職場で保育の場です。金森さん、わが家は平日も自宅で数時間「休暇」してますよ。


4. 経費削減

それに外に出るためには身なりを整えないといけないので、コストがかかります。

「103万円の壁」のうち65万円は、本来はこのコスト(給与所得控除)なんですよね?

専業主婦は部屋着でも働けます。

5. 保育料削減

保育料。今度の税制改革案でも、無償化するのは年少さん以上。それまでは負担しなければならないんですね。

専業主婦は自家生産です。しかも、家事しながらの育児時間が長いとはいえ、愛情たっぷりの少人数指導ですよ。

6. 「37.5度の壁」も気にしない

保育所は発熱すると預かってもらえない、通称「37.5度の壁」があります。これキツいんじゃあないでしょうか。

子どもってすぐ発熱しますもの。しかも病児保育の制度なんて、待機児童問題すら解決しない現状では望むべくもない。時給制の人は欠勤せねばならず収入減です。

専業主婦の自家生産保育なら、こんな障害はありません。(執筆者:徳田 仁美)

《徳田 仁美》
この記事は役に立ちましたか?
+0

関連タグ

徳田 仁美

徳田 仁美

関西地方都市在住の30歳代主婦。某私立大学文学部卒。「良いものを長く使う」「不健康が最大の損失」「家族円満は無料で最大の幸福」を心がけて、主婦業を営む。夫の収入で家計を管理する、現在は2児の母。子だくさんでも成立する家計を模索。家計とは別に、結婚前の貯金を株式投資やFXなどで運用する。投資歴は8年程度。最近は新しい時代を作ってくれそうな企業に注目している。 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集