「働き方改革」は「残業代2倍」でうまくいく 「残業代ゼロ」や「裁量労働制」は逆効果»マネーの達人

「働き方改革」は「残業代2倍」でうまくいく 「残業代ゼロ」や「裁量労働制」は逆効果

働き方改革で、収入が減る!?

今、国会では「働き方改革」の議論が進められています。

なぜ、「働き方改革」が必要なのかといえば、働く人の人口が減っていくにもかかわらず、生産性が低いために、今のうちに働き方を変えないと、ますます日本の生産性は落ちていってしまうからです。

GDPを見ると、日本は世界第3位の経済大国です。

けれど、IMFが公表している一人あたりの購買力平均GDPのここ3年間の推移を見ると、24位 → 27位 → 30位と、年々低下しています。

つまり、世界第3位の経済大国といっても、一人ひとりの価値の創造力は、毎年落ちているということ。

実際に、労働生産性を見ても、日本は、OECD 35か国中21位と極めて厳しい状況にあります。

これでは、今後ますます生産年齢人口が減少していく中で、現状を維持していくのは難しい。

ですから、生産性を上げるための仕組みづくりが必要ということで「働き方改革」をしようというのです。

中でも焦点となっているのが、非効率な長期労働



ダラダラと残業している状況を改善するために、「高度プロフェッショナル制度」と「裁量労働制」という2つの制度を導入し、残業代を減らそうとしています。


幅広い層に広がりそうな「残業代ゼロ」制度

高度プロフェッショナル制度


高度プロフェッショナル制度」とは、専門性の高い一部の職種に対して残業代をなくして、その代わり成果に応じて一定の賃金を支払う制度

対象は年収1,075万円以上なので、ほとんどの人は自分とは関係ないと思っているかもしれません。

けれど、この制度は別名「残業代ゼロ制度」とも呼ばれ、今まで違う名前で国会に法案が提出されてきましたが、否決されてきました。

なぜなら、現状では、高度な技術を持った人だけを成果主義で働かせるということになっていますが、このハードルが徐々に下がっていくのではないかと危惧されているからです。

例えば、今から32年前、「派遣法」が導入されました。

導入当初は、通訳など一日何万円も稼ぐ高度な技術を持つ13業種が対象でしたが、その後、16業種、26業種と業種が拡大し、今やみなさんご存じのように「誰でも派遣」になっています。

そして、「派遣社員」は、すぐクビにできくる低賃金労働者の代名詞になっています

「派遣法」と同じように、「高度プロフェッショナル制度」も、導入されたらなし崩し的に対象は官位を広げていくのではないかとの危惧から法案成立がみや送られていましたが、先の選挙で与党が大勝したことで、スンナリ通りそうです。

裁量労働制


もう1つの、「裁量労働制」の方は、すでに導入されている制度です。

1987年に導入され、この時には残業がカウントしにくいシステムエンジニアなど一部の専門職のみが対象でした。

その後98年に企業中枢の企画・立案・調査・分析業務にも拡大され、今回は、かなりの分野の人が対象となってきそうです。

「裁量労働制」は、いちいち残業代をカウントせず、あらかじめ労使で合意した金額の範囲内で働くというもの

金額は決まっていますが、働く時間は決まっていないという制度で、野党は「定額働かせ放題制度」と言っています。

ただ、「働き方改革」では、残業の上限が決められました。

上限は、厚労省が定めた過労死ラインで、それを超えて働かせてはいけないことになっています。


「残業代ゼロ」ではなく、「残業代2倍」を!



「高度プロフェッショナル制度」の導入や「裁量労働制」の残業代が減れば、それはそれでいいのですが、問題は、残業代が減ると、家計の収入も減ってしまうということ。

大和総研は、「働き方改革」で残業代の総額は8.5兆円減ると試算しています

政府試算でも、4兆円から5兆円の残業代が減る。つまり、年収600万円の人なら、年間10万円から15万円の収入減になるということです。

しかも、人によっては目標達成まで今まで以上に働かなくてはならないケースも出てきそうで、そうなると、充分な休息がとれずにますます生産性は下がっていくのではないかと思います。

では、どうすれば生産性が上がるのか


私は、今、政府がやろうとしていることの真逆のことをやればいいのではないかと思います。

つまり、

「残業代ゼロ」ではなく「残業代を今の2倍」にする

今まで支払っていた残業代に比べて、これからは2倍の残業代を支払うとなれば、雇う側は余分な給料を支払いたくないので、労働時間内にどうやれば仕事を終わらせられるかを必死で考えることでしょう。

無駄な会議をなくしたり業務見直しや合理化するのはもちろん、機械化や外部発注などでとことん生産性を追求していくはずです。

そうなればサービス残業は一掃され、残業は激減するはずです。

定時に終われば副業をする余裕もうまれる


しかも、残業がなくなって定時に仕事を切り上げられれば、社員には、副業をする余裕ができます。

残業代が減ったぶんを副業で取り戻すとなれば、こちらも必死で副業の技を磨いていくはずですから、仮にリストラにあっても、副業で家計を維持していくことができるかもしれません。

実は、これを実践して、抜群の生産性を上げている国があります

それは、ノルウェー、ベルギー、デンマークなどの北欧の国です。

どこも、残業代がバカ高いだけでなく、そもそも残業するという発想自体がなくなっている。

どこも生産性は日本の1.5倍くらい高い。つまり、日本人が9時間かかってやる同じ仕事を、彼らは6時間で終わらせてしまうということです。

中でもデンマークは、「世界一幸福な国」と言われています。

複雑な制度をつくるよりも、残業代を今の2倍にするということを決めるほうが簡単なはず。

こんな簡単なこともできない政府の「働き方」こそ、まず改革してほしいものです。(執筆者:荻原 博子)

この記事を書いた人

荻原 博子 荻原 博子»筆者の記事一覧 (34) http://www.ogiwarahiroko.com/

経済ジャーナリスト
1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「どんとこい、老後」(毎日新聞社)、「お金は死ぬまえに使え」(マガジンハウス)、「ちょい投資」(中央公論新社)など著書多数。
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