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仮想通貨流出の被害者が補償されたら所得税・住民税が課税される場合がある。

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仮想通貨流出の被害者が補償されたら所得税・住民税が課税される場合がある。

被害に遭ったうえに課税?

2度の痛手

仮想通貨取引所コインチェックの仮想通貨NEM流出事件は、不正流出総額が約580億円とも言われています。

コインチェック社は流出の被害者に約460億円の補償を行う方針であると発表しています。

この補償金に課税される可能性があることは、麻生財務大臣が平成30年2月6日閣議後の記者会見で見解を示しており、2月27日では同内容の答弁書を閣議決定しています。

被害に遭ったうえに課税とは踏んだり蹴ったりに見えますが、

どういう理屈で課税の可能性があることになるのでしょうか?

損害補償=損害額の場合:非課税

冒頭と食い違うことを言うようですが、資産に対する損害につき支払われた補償金、損害賠償金は、損失額ぴったり補填する分には非課税所得です。

損失を穴埋めするための補償金や賠償金に課税するのは、負担能力や社会政策上の配慮から言ってもおかしいからで、これは税制の大原則です。

損害補償>損害額の場合:超過分が雑所得課税

損害額を上回る補償を受けた場合は話が変わってきます。上回った差額に対して課税されます。

損害額(取得額)が100万円でもらえる補償金が110万円(レート上昇により補償の時価が増大)であれば、

110万円―100万円=10万円

に課税されます。

所得税率20%・住民税率10%であれば3万円が税額です。

仮想通貨の売買・使用による所得は総合課税の雑所得ですが、収益を補償するものとして損害額を上回る補償金も総合課税の雑所得にあたります

損害補償<損害額の場合:雑損控除が利用できるか?

自分はどうなのか計算してみよう

補償金が損害の額に達しなかった場合、損をしてしまいます

盗難や横領などの被害に遭った場合、損害額をもとに雑損控除(所得控除の一種)が活用でき所得税・住民額を引き下げることが可能です。

雑損控除に該当する場合は、

損害額 - 総所得金額等(各種所得の合計)×10%

所得から差し引ける雑損控除額です。

なお雑損控除の対象となる財産は、生活に必要な財産ですので、仮想通貨が該当するか微妙なところがあります。

雑損控除でなく総合課税雑所得の経費になる可能性も

不正流出で生じたような損害が雑損控除の対象になるかはこれから国税庁が方針を示すと考えられますが、雑損控除にならないとすれば、雑所得を生ずべき業務用資産に関する資産損失に該当する可能性があります。

損害額 - 補償金額 が雑所得の必要経費となりますが、この場合は同じ年(平成30年)内に仮想通貨で儲けが出ていたり、他に総合課税の雑所得(公的年金・個人年金・副業収入)などが無かったりしないと通算ができない点は注意が必要です。

計算例1:総合課税の雑所得が生じてない場合

仮想通貨に儲けはあるか

・平成30年の仮想通貨流出損害額が100万円(補償金を差引後)

・平成30年の所得が給与所得のみ(年収670万円、総所得金額等が483万円)

仮想通貨流出が雑損控除に該当する場合は

100万円 ― 483万円 × 10% = 51.7万円

です。

しかし雑所得の必要経費にあたる場合は、この損害額100万円は他の所得と損益通算できず、翌年以降への繰越もできませんので、税額の引き下げに寄与しません

計算例2:仮想通貨の儲けがある場合

・平成30年の仮想通貨流出損害額が100万円(補償金を差引後)

・平成30年の所得が給与所得(年収670万円)および仮想通貨の儲け550万円

この場合は、

損害額100万円<(総所得金額等483万円+550万円)×10%

となり、流出が雑損控除に該当したとしても使えません

しかし雑所得の必要経費にあたる場合は、総合課税の雑所得は550万円から損害額100万円が差し引け、損害額が税額の引き下げに寄与します

【補足】4月17日公表の国税庁見解

2018年4月17日に発表した国税庁のタックスアンサー

No.1525 仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合
http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525.htm

によると損害補償<損害額の場合、雑所得の損失になると判断でき、雑損控除については触れられておりません。

さすがに雑損控除と雑所得の選択適用ができるとは考えにくいので、雑損控除として確定申告するのは厳しくなってきました。

他に総合課税の雑所得が無ければ、損失が税負担を軽減することが無くなってしまいます。(執筆者:石谷 彰彦)

《石谷 彰彦》
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石谷 彰彦

石谷 彰彦

1977年生まれ。システム開発会社・税理士事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じFPの資格を取得。行政非常勤職員や個人投資家としての経験もあり、社会保障・確定申告・個人所得税関係を中心にライティングやソフト開発を行う。近年は個人の金融証券税制に重点的に取り組み、上場株式等課税方式有利選択ツールを公開。お得情報の誤解や無知でかえって損をする、そんな状況を変えていきたいと考えている。 <保有資格>AFP・2級FP技能士・日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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