退職を考えた…体調不良の人は在職中に病院へ行かないと後悔する可能性も 障害年金における「初診日」の重要性を解説»マネーの達人

退職を考えた…体調不良の人は在職中に病院へ行かないと後悔する可能性も 障害年金における「初診日」の重要性を解説

退職、脱サラ、その前に…

在職中に医者へ行こう


脱サラ等で退職を考えている人の中には、多少具合の悪いところがあっても「退職してからゆっくりお医者さんに行けばいいや」と思っている人もいるかもしれません。

しかし、病気は「早期発見・早期治療」が基本。

手遅れにならないためにも、受診を後回しにすることはお勧めできません。

また、退職前に受診していなかったために、傷病の状態が重くて障害年金を請求することになった場合に後悔することもあります。


「厚生年金の被保険者」であるうちに初診日を作っておく意味

障害年金は、その傷病に関連する症状で初めてお医者さんにかかった日(初診日)にどの年金制度の適用を受けていたかによって、支給される給付が異なります

厚生年金の被保険者である間に初診日がある場合は、障害等級3級以上に該当すれば年金が受給できます。

3級」というのは、働くことに著しい制限を受けるような状態です。

傷病が治って、3級より少し軽めの障害が残って働くことに制限を受ける状態の場合は、「障害手当金」という一時金もあります。

一方、会社を辞めてからお医者さんにかかった場合は国民年金だけなので、2級以上に該当してはじめて障害基礎年金が受給できます。

2級」というのは、家庭内での軽い活動はできるが日常生活に著しい制限を受ける程度の障害で、働いて収入を得ることはできない状態です。

障害厚生年金を受けられる人が2級以上に該当すると、国民年金の障害基礎年金も上乗せして受給できます。

障害年金の種類と年金額(平成30年度価格)


障害年金の種類と年金額(平成30年度価格)


● 子の加算額(障害基礎年金に加算)

● 配偶者の加給年金額(障害厚生年金に加算)

たとえば
「うつ病で働くのは難しいけど日常生活で大きな支障があるとまでは言えない」
という状態で3級に認定されたとすると、厚生年金なら年金が受給できますが、退職後の受診で国民年金だけだった場合は不支給となってしまいます。

在職中から症状が出ていたのにお医者さんへ行かなかったその差は、後々大きく響きます。

退職して数年後に重症化しても「障害厚生年金」が受給できる


在職時に受診して、1年6か月後の障害認定日には症状が軽かった場合でも、
数年後に悪化して障害年金を請求するような状態になったときに「事後重症の障害年金」を請求できます。
このとき、すでに退職していて厚生年金の被保険者ではなくなっていても、初診日において厚生年金の被保険者であったなら、「事後重症の障害厚生年金」として請求できます


初診日の病名は、障害年金を請求する病名と違っていても関連性があればよい

障害年金を請求するときにかかっている病院の前に受診したクリニックがあって、診断名は違っていても関連性が認められる場合には、
先に受診したクリニックに初めてかかった日が障害年金を請求する際の「初診日」
です。

病名は関連性があればいい


「うつ病」の事例では・・・


はじめは「うつ病」と気付かず、毎日頭が締め付けられるように痛くて内科にかかり「緊張型頭痛」と診断された。

しかし数か月後にメンタルクリニックで「うつ病」と診断されたケースでは、頭痛で内科にかかった日が初診日とされています。

この場合は、内科で「緊張型頭痛」と診断されたときの初診日が厚生年金の被保険者であれば、メンタルクリニックで「うつ病」と診断されたときには退職後であっても、障害厚生年金を請求できます


在職時にお医者さんへ行くことの重要性

これまでの説明で、
在職時から具合が悪いところがあるなら退職前にお医者さんに行ってください
という意味がお分かりいただけたでしょうか。

実は、今から15年ほど前までは、退職前にお医者さんにかかるというのはごく普通に行われていました。「継続療養」という制度があったからです。

俗に「駆け込み受診」とも呼ばれていて、保険者(健保組合など)にとってはあまりうれしくない制度であったという裏話もありますが…。

しかし、次のような理由から「駆け込み受診」が減ったという背景があります。

退職前の「駆け込み受診」が減った歴史的背景


その昔、サラリーマンが加入する健康保険の被保険者本人は、初診時と入院時に定額の一部負担金を支払うだけで治療を受けることができました

一部負担金も

・ 初診時 200円 → 600円 → 800円

・ 入院時 60円 → 200円 → 500円

と改正が繰り返され、1984年の大改正で定率1割負担が導入されました。

それでも、国民健康保険(国保)は5割負担→3割負担(1968年~)なので、サラリーマンの医療費負担の低さが分かります。

退職して国保に入ると負担が大幅に増えてしまうことから、継続して1年以上被保険者だった人が退職したときにかかっていた医療はそのまま引き続き給付が受けられる、という「継続療養」の制度があったのです。

そのため、大手企業で大規模なリストラがあると、
退職前の「駆け込み受診」が大量発生して健保組合の財政が打撃を受ける
という事態にもなりました。

退職者に関しては保険料(収入)が入って来なくなるのに、保険給付(支出)は終わらないのですから。

しかしその後、サラリーマンの医療費負担も1997年から2割負担、2003年から3割負担に引き上げられ、国保と変わらなくなったことから、2003年3月末をもって「継続療養」の制度が廃止されました。

現在も残っている退職後の継続給付は、「傷病手当金」と「出産手当金」だけです。

病気は「早期発見・早期治療」が基本


病気の基本は早期発見、早期治療


「継続療養」の制度があった頃は「退職前に医者にかかっておくもの」という意識が強かったのですが、制度が廃止され会社を辞めてからでも自己負担が変わらないとなれば、
「仕事が忙しいから、退職してからゆっくりお医者さんにかかろう」
と考えるのも仕方のないことかもしれませんね。

しかし病気は「早期発見・早期治療」が基本です。

気になる症状があるのなら、まだ症状がなくても健康診断で異常を指摘されているなら、早めにお医者さんへ行きましょう。(執筆者:服部 明美)

この記事を書いた人

服部 明美 服部 明美»筆者の記事一覧 http://profile.ne.jp/pf/sr-hattoriakemi/

社労士はっとりコンサルティングオフィス 代表
短大卒業後、広告デザイン会社を経て、社会保障分野の出版社に編集者として22年間勤務。平成18年度社会保険労務士国家試験に合格し独立。平成19年10月、社会保険労務士会登録。平成21年4月、埼玉県桶川市にて開業。桶川市商工会会員。平成23年5月、社団法人日本産業カウンセラー協会に産業カウンセラーとして登録。「お客さまの心に寄り添う社労士」をモットーに、年金とメンタルヘルスに強い社労士として活動中。二児の母。
<保有資格>:社会保険労務士、産業カウンセラー
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