「かぼちゃの馬車事件」はなぜリテラシーの高い人も騙されたのか 「不動産投資の現実」と気を付けておくべきポイント

先日来、「かぼちゃの馬車」というシェアハウスによる不動産投資を紹介、サブリースを行っていた「スマートデイズ」という会社が、経営破たんしました

主に融資を付けていたスルガ銀行も巻き込み、大きな問題になっています

この件について、被害を受けた投資家の中には大手金融機関や弁護士といった、いわゆる金銭的あるいは法的なリテラシーが高いと思われる職業の人達も含まれているようです。

事業のスキームだけでなく、投資を促した会社の営業スタンスも含め大きな問題に波及しています。

先日、不動産に関係する人たちでの集まる機会があり、何が問題だったのかについてそれぞれの考え方を話す機会がありました。

この事件をきっかけに「不動産投資」を行おうとする人たちに気を付けておくべきポイントが伝わればと思います。

かぼちゃの馬車事件からみる不動産投資

なぜ、リテラシーの高い人たちも「引っかかった」のか

今回の件で問題を大きくしたキーワードは「金融機関の融資」と「サブリース」だと思います。

金融機関が融資を承認することで、「事業スキームにお墨付きがついている」と勘違いしてしまう傾向にあるように感じます

金融機関が事業スキームを全く考慮しないわけではありませんが、保証するわけではないのは冷静に考えれば当然です。

さらに今回の事業は「サブリース」、すなわち「サブリース会社が一括で物件を借り上げて賃料を支払うので、オーナーに空室リスクはない」と説明されていたであろうことです。

投資家・不動産オーナーが負うリスクの一部を排除したように見せた問題があります

他のサブリース事業でもそうですが、サブリース契約はずっと、あるいは何十年も一定の賃料をサブリース業者が支払うような契約にはなっていません。

2年ないし3年程度で賃料の見直しができるようになっている契約がほとんどです。

満室時の想定賃料のうち10~15%程度を差し引いた金額でオーナーとサブリース業者が一括で賃貸借契約を結びます。

契約期間中、オーナーには空室の有無にかかわらず契約で決められた賃料が支払われます。

各入居者とはサブリース会社が転貸する形で契約が結ばれます。

ですからオーナーは各入居者と個別に契約を結ぶ手間もなく、入退去の管理、空室の入居者募集なども行いますので、オーナーにとっては楽だと思います。

サラリーマンなど他の仕事がある方でも自身の物件管理に手間をかけることなく安定した賃料収入が得られると思われます。

ただしこれは「ちゃんと埋まれば」の話です。

サブリースの仕組みと物件オーナーの責任

当初、サブリースによる不動産投資を促した会社が示した賃料が周辺相場とかけ離れたものであれば、想定した賃料では空室は埋まりません。

その結果、賃料を下げるか、空室を許容するかしかなくなります。

契約当初の2年ないし3年は契約賃料を支払ってくれるかもしれませんが、契約更新の際には賃料を含めた条件の見直しがあるでしょう。

サブリース会社も営利企業です。損を出し続けることはできません。

条件で合意できなければ、契約が更新できなくなります。

しかし、オーナーは借入金の返済を続ける必要があります事業収支に対するリスクは不動産所有者が負うのです

低金利のもと、多くの投資マネーが不動産に流れ込んでいる

最近は市場金利が「超低金利」であることもあり、不動産にも投資マネーが流れ込んでいます。

多くの不動産投資では利回りで10%を超える様な物件はありません(あれば、市場に出回ることなくプロが買うでしょう)。

しかし他の方法で運用してもほとんど利息はつきませんので、不動産投資に資金が流れます。

特に1戸のワンルームマンションなど物件では、入居者がいなければすべてオーナーかサブリース業者の持ち出しになります。

空室のままでは大量出血が止まりませんので、賃料を下げてでも埋めざるを得ないでしょう。

ローンの返済よりも賃料収入の方が小さく、毎月キャッシュフローで赤字になるケースも珍しくありません。

新築の時は想定した賃料で入居者がいても、周辺に競合物件が多い場合には、入居者の入れ替わり時に賃料が下がってしまうこともあります

さらに不動産所有者には固定資産税などがかかり、支出はさらに増えます

自分自身で投資する責任を理解する

自分自身で投資する責任を理解すること

昨今は不動産投資を身近なものとして喧伝する会社が増えています。

中には堅実に営業をしている会社もありますが、ちょっと行き過ぎの感が否めません。

「頭金なしでもできる」

「将来の年金代わりに」

「生命保険代わりに」

といったような宣伝文句を使いながら、不動産投資を促しています。

全てが間違っているとは言えません。

ただし、投資ですので、それぞれの人が考える投資スタンスや長期にわたるキャッシュフローなども考えて、取り組むかどうかを自分自身の意思で決めなければなりません。

これからの日本は人口減少社会に突入していきます。

多くの自治体が「コンパクトシティ化」を進めようとしていますが、先日日経新聞にも書かれていたように、実際には多くの自治体が実現できていません。

ある投資について教育を行っている専門学校のようなところでも「不動産投資」について「どんな立地でも住む人はいる」という方がいらっしゃいました。

今はそうでも、これからは保証されているわけではありません。

「立地」と「賃料」は将来の予測も必要

不動産を取得する際「立地」は動かすことができないものです。

その場所が今後どのようになっていくかについて考えることが最重要だといえます。

さらに、不動産投資をする場合、当たり前のことですが、物件を紹介されたときにその物件の周辺の募集相場がどのようになっているかくらいは調べなければなりません

方法は簡単です。

インターネットで、自分が賃貸物件を探すのと同じように、その物件の近くに住もうと思ったらいくらくらいが相場なのかを見ればいいのです。

At HomeやHome’s、SUUMOなどさまざまなサイトで見ることができます。

さらに、周辺環境の変化などにも影響を受けますので、少なくとも物件に数回は足を運び、自分の肌で環境を確認すべきです

この時は実際に住む人の立場で環境を確認するために車ではなく、公共の交通機関と自分の足で確認しましょう

「シェアハウス」の特殊事情

話を「かぼちゃの馬車」に戻します。

被害を受けた投資家の方々は「シェアハウス」とはどういうものなのか、については説明を受けていたことと思います。

シェアハウスとは「自分の部屋以外に共用のキッチンや食堂、浴室、共有スペースがある賃貸住宅」と言えるでしょう。

わかりやすいイメージは、一軒家の各個室に別の人が住んでいて、お風呂やトイレ、食堂は共有、というイメージです。

各戸にキッチンや浴室がない分、賃料は周辺のマンションやアパートよりは割安になるはずです。

一方で、他の入居者のコミュニケーションが生まれたり、ワンルームでは到底実現できないジムやシアタールーム、プロ仕様のキッチンなどを備えたりしている物件もあります。

プライバシーは犠牲になりますが、安い賃料とこれらの設備が売りになる物件と言えると思います。

誰でも入居したくなる物件とは言えないでしょう。

気の合う仲間同士で共同生活ができれば、という気持ちでシェアハウスを選ぶ人もいます。

シェアハウスに投資する人はご自身が住むわけではないと思いますが、自分だったら住みたいか、自分の子供を住まわせたいかといった観点で物件を見ることも重要だと思います。

自分だったらどうするかチェックする

まとめ

今回、破たんしたスマートハウスの「かぼちゃの馬車」は駅から徒歩20分以上や、周辺のワンルームのアパートやマンションと同等の賃料が設定されている物件もあるようです。

冷静に考えて「この事業収支は実現可能か?」と疑うべき内容があったはずです。

スマートハウスの売り込み方にも問題があったでしょうが、投資である以上本来は投資家の自己責任です。

スマートハウスだけでなく、昨今の不動産投資を促す会社には「言葉巧み」で「押しの強い」業者も少なくありません。

周辺環境と将来性などを含めた立地、賃料を含めた事業収支とその裏付けと合わせ、投資の目的なども考え、納得して始める必要があります。

不動産投資は、あまり頭金を出さなくても始められるかもしれませんが、多額の借り入れを伴う「事業」です

失敗すると大きな損失につながることもあり、場合によっては自分や家族を巻き込んでしまうかもしれません。

事業者、投資家として、追うべき責任とリスクを理解して取り組んでいただきたいと思います。(執筆者:西山 広高)

この記事を書いた人

西山 広高 西山 広高»筆者の記事一覧 (36) http://www.nishiyama-ld.com/

西山ライフデザイン株式会社 代表取締役
慶應義塾大学卒。大手建設会社に入社し、主に建築営業とお客様の不動産の活用提案業務に従事。2015年に退職、西山ライフデザインを設立。ファイナンシャル・プランニングと不動産の知識と経験でクライアントの「ワンダフルライフ」の実現をサポートする。趣味は2006年から始めたマラソン。第1回東京マラソンに出場。その後、ウルトラマラソンやトレイルランニングの大会も出場、完走歴あり。妻と2人の子供の4人家族。1968年生まれ。東京都大田区在住。
<保有資格>:宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、住宅ローンアドバイザー、ビジネス法務エキスパート
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