※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

「テーマ型」投資信託がダメな理由 5つの問題点を整理します

投資 投資信託
「テーマ型」投資信託がダメな理由 5つの問題点を整理します

よく売れているテーマ型投信

最近、「テーマ型」と呼ばれる投資信託がよく売れています

資金流入が大きいファンドをリストアップすると、上位に複数顔を出すことが多い。

テーマ型ファンドを買わない理由

テーマ型とは、例えば

「AI(人工知能)」
「ロボット」
「環境関連」
「バイオ(医療・生化学)関連」

など、特定のテーマに合った業種や企業に投資することを謳う投資信託だ。

投信業界としては、古くからある商品カテゴリーの一つである。

テーマ型のファンドは、筆者が批判するまでもなく、投信関係の評論家やライターから、

「長期投資に不向きだ」

「一時の人気で株価が上昇した銘柄を高値づかみするリスクがある」

などと、要注意だとの評価を受けることが多い。

しかし、こうした人々のコメントは、何が問題なのかが十分整理されていない場合が多く、例えば「短期投資でなら、買ってもいいのではないか?」と思うような投資家の疑問が解消されていないようだ。

以下、架空の記者と筆者がやり取りする形で、テーマ型ファンドの問題点について整理してみよう。

(1) テーマ型ファンドは何が問題なのか?

記者「山崎さん、こんにちは。今回は、最近よく売れている商品である、テーマ型投信について取材しています。

山崎さんは、いわゆるテーマ・ファンドについて、どうお考えですか?」

山崎「わざわざ、私に取材するということは、テーマ・ファンドについて、批判的なコメントが欲しいのですね?」

記者「はい。図星です! 

ただ、テーマ型投信について、何が問題なのかが今一つスッキリ整理できないので、よろしくお願いします」

テーマ型ファンドは何が問題なのか?

山崎投資信託の最大の長所は、少額でも実質的に分散投資のメリットを得られることです。

しかし、テーマ型ファンドは、投資する業種や銘柄をテーマで絞り込んでしまうために、せっかくのメリットを放棄しています

例えば、TOPIXのインデックス・ファンドのリスクが20(%。リターンの年率標準偏差)であるテーマ・ファンドが25(%)だとすると、同じだけのリスクを取るならTOPIXのインデックス・ファンドに投資する方がテーマ・ファンドの1.25倍の金額を投資できます

期待できるリターンが同じなら、リスクを小さくできる分散投資を行う方が有利なのです。テーマ・ファンドはこの原則に逆行しています」

(2) 長期投資に向かないの点には手数料の影響もある

記者「その他に問題点はありますか。 テーマ・ファンドは長期投資に不向きだと聞きますが、どうしてなのでしょうか? 

例えば、AIは今後長期に亘って使われる技術だと思いますが、ダメなのでしょうか

山崎「長期で保有する場合には、先に申し上げたように、リスクがより小さく抑えられてる方がいいのですが、手数料の影響も見逃せない問題です。

テーマ・ファンドの具体的な商品を見ると、販売手数料が2%~3%くらい、信託報酬が1.5%程度のものが多いようです(手数料はいずれも税抜き)。

そもそも、この手数料水準はテーマ・ファンドではなくても高すぎます。

1,000万円投資したら、1年目には35万円くらい手数料を払う計算ですから、これでは勿体ない。

加えて、テーマ・ファンドの場合、テーマのブームが去ると売りたいと思う心理に陥りやすい。

そして、また別の商品に乗り換える時には、販売手数料が掛かる

2年に一度2%の手数料が掛かるとすると、ノーロードの投信に換算しても、信託報酬が1%高いのと同じくらいの大きさの負担です」

手数料が高すぎる

(3) 長期投資に向かない投信は、短期にもダメ!

記者「なるほど。確かに、テーマ・ファンドを買うと、そのテーマが旬ではなくなったと思った時に、売りたくなりそうな気がします。

結果的に、余計な手数料が掛かりそうです」

山崎「それは、現実的に正しい理解でしょう。

商品を売る側でも、すぐに乗り換えの勧誘をするのは拙いけれども、顧客が次のテーマに興味を持ったときに乗り換えてくれ易いということについては、好都合だと思っているにちがいありません

記者「しかし、長期の投資に向かないとしても、短期投資にならいいということはあり得ませんか?」

山崎「まず、短期投資だと、運用期間当たりの販売手数料の重みが大きくなることの不利があることを知っておくべきです。

加えて、AIにせよ、ロボット関連にせよ、自分で有望な企業を見つけられないから投資信託に投資するような知識の投資家が、いいタイミングや、現在は投資するに当たって魅力的な株価なのかについて、判断できるとは思えません。

セールスマンの話に乗せられて、一時の気分で手数料もリスクも大きな投資に踏み出すのはいかがなものでしょうか。

『いいタイミング』というものは素人だけでなくプロでも判断が難しいのですが、そうだとすると、長期でダメな運用商品は、特に販売手数料がある場合には、短期だとなおさらダメなのだと考えるのが正しい推論です

記者「相変わらず逃げ場のない批判ですね。確かに、理屈はその通りでしょう。

では、全てのテーマ・ファンド、は投資するに値しないのでしょうか?」

山崎「そう考えるのが、素直ではないでしょうか。

少なくとも、ファンドに銘柄選択を任せるような人が、良いテーマファンドとその投資タイミングを事前に見分けられるとは考えられない

投資家は、もっと自分の実力を省みるべきでしょう。誰にとっても、テーマファンドへの投資は、止めておくのが正解でしょう」

(4) たぶん、毎月分配型投信の代わりに売られている

ご説明を聞かないこと

記者「テーマ・ファンドが良い投資対象ではないことはよく分かりました。

しかし、だとすると、なぜテーマ・ファンドがこれだけ売られていて、現実に売れているのでしょうか?」

山崎「一つの推測ですが、これまで売りやすかった毎月分配型の投信に対して金融庁の見る目が厳しくなったので、別の手数料稼ぎの手段としてテーマ・ファンドが注目されているのではないでしょうか。

そこまで意図的ではないかも知れませんが、テーマには話題の旬の期間があって、旬が終わると別の物に関心が移りやすいことも販売会社にとっては好都合です。

それに、例えば『AIは凄いし、今後は大いに使われるだろう』と金融マンに言われた時に、これに正面から反論できる投資家は少ないのではないでしょうか。

夢と可能性を語るといいので、テーマ・ファンドはファンドを売る側から見て売りやすい商品でもあります。『ご説明』を聞かないことが大事です」

(5) 個別株投資の方が気が利いている?

記者テーマ株ファンドを買うよりは、個別の株式を自分で選んで買う方がいいのでしょうか?

山崎「リスクの大きさや、銘柄選択の難しさを考えた場合に、個人投資家が自分で銘柄を選んで投資する方が結果がいいだろうと自信を持って言うことは、残念ながら私にはできません。

個別株投資をする場合、銘柄とウェイトの組み合わせを自分で適切に行うスキル(技術)が必要です。

しかし、個別の銘柄を選ぶのと同じくらい高度な判断ができるのでなければ、テーマ・ファンドに投資する適切なタイミングなど判断できないだろうということは言えそうです。

これは、絶対的な良し悪しではなくて、私の好みが混じった意見ですが、私は、他人が運用するテーマ・ファンドに投資するよりも、自分で銘柄を選んで投資する方が遙かに面白いし、人間として気が利いていると思っています。

特に、金融マン等の他人から勧められたテーマ・ファンドに投資するのは、いかにも中途半端でつまらないように思います。

加えて、現実の商品の手数料は大きすぎるので、(結果論はともかく)現在の選択肢としては、どれもはっきりダメだと言い切っていいでしょう。全く惜しくはない」

記者「よく分かりました。

どのような角度から見ても、テーマ・ファンドはつまらない商品なのだと思うようになりました」(執筆者:山崎 元)

《山崎 元》
この記事は役に立ちましたか?
+3

関連タグ

山崎 元

山崎 元

経済評論家 株式会社マイベンチマーク 代表取締役 1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、野村投信、住友生命保険、住友信託銀行、シュローダー投信、NBインベストメントテクノロジー、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、第一勧業朝日投信投資顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所に勤務。楽天証券経済研究所客員研究員、国家公務員共済組合連合会資産運用委員会委員。1994年東洋経済高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。2005年1月に株式会社マイベンチマークを設立し代表取締役に就任。 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集