目次
「年金だけでは暮らせない」は、未来の話ではありません
高齢者世帯の家計収支は、現状ですでに赤字です。
2015年・国民生活基礎調査によれば、年間所得は平均297万円。
一方、2016年・家計の金融行動に関する基本調査によれば、年間支出は平均324万円。
ほぼ同じ時期に行われた2つの調査をまとめると、平均で年間約30万円の赤字となっています。
収入の大部分は公的年金で、201万円。
「年金だけでは生活できない」というのは、何も未来のお話ではありません。
そういう時代は、すでに到来しているのです。
それが証拠に、稼働所得がすでに年間60万円となっています。
65歳以上で働いている人は現状で50%を超え、数値は年々増加しています。
収入は減ります
収入の大部分を占める年金収入は減ります。
予想あるいは予測といったお話ではなく、すでに法律で決まったことです。
「年金が減る」という言い方は、正確ではありません。正しくは、「給付水準が下がる」となります 。
本来、年金は物価に連動するカタチで増えたり減ったりします。
物価が変動しても価値を一定に保つためです。
ですから、単純に支給される金額だけでの比較はできません。
さらにそこへ、マクロ経済スライドという調整が加わります。
マクロ経済スライドの目的は、物価変動による年金額の変動(スライド)を一定の範囲にとどめ、支給される年金の相対的価値を下げようという試みです。
年金の支給額は増えているのに、価値は下がっていることが実際に起こりえるわけです。
マクロ経済スライドによる調整は、平成16年に導入されました。
が、平成27年度に、ただの1回だけ発動されたのみです。
今後は、より強硬な調整が進められていきます。この件も、すでに法律で決まっています。
収入はどこまでさがる?
どこまで下がるかと言えば、所得代替率が50%になるまでです。
所得代替率とは、受給年金額がその時の平均賃金をどの程度カバーできるか、という指標です。
現状、約60%です。平成16年段階でも同じくらいの数値でしたから、この間、全く下げられていないのです。
所得代替率に適用される年金額はモデルケースと呼ばれる夫婦2人分の年金額の合計です。
ちなみに、夫は平均賃金で40年間厚生年金に加入、その間、妻は40年間専業主婦であり、かつ、3号被保険者というのが前提条件となります。
支出は増えます
支出については、医療費負担が増えます。
毎月ごと負担する保険料も増えれば、窓口で支払う本人負担も増えます。
直接の原因は、2025年に団塊の世代が後期高齢者となることです。
現状の年間医療費約40兆円が約54兆円にまで増えます。
増加分は年齢を問わず、広く国民が負担することになります。
高麗者の負担増は、特別扱いをなくすというカタチで、すでに始まっています。
高齢者家計の赤字は拡大していく一方です
収入が減り、支出か増えますので、両者のギャップはますます開いていきます。
現状の赤字幅は拡大することはあっても、縮小することはありません。(執筆者:金子 幸嗣)