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「事実婚」でできること・できないこと 人気ブロガー「はあちゅうさん」とAV男優「しみけんさん」の事実婚例から考える 

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「事実婚」でできること・できないこと 人気ブロガー「はあちゅうさん」とAV男優「しみけんさん」の事実婚例から考える 

先日、作家・ブロガーの、はあちゅうさんと、AV男優のしみけんさん、が事実婚の発表をしましたね。

戸籍の入っていない内縁妻」って世間では良く聞きませんか?

昭和の昔、某大物女性歌手が「紙切れ1枚」と称していた「結婚」ですが、「事実婚」とどう違いがあるのでしょう?

「籍を入れない事実婚」でできることとできないことを確認して見ましょう。

事実婚でできることできないこと

事実婚でもできること

まず、事実婚でできることを挙げてみましょう。

「意外と多い」と感じるか「やはり不安定」と感じるか、人によっても異なることでしょう。

1. 同居し、住民票を一緒にする

世帯主が夫、妻(未届)(または世帯主 妻名 夫未届も可能)と届け出ると 住民票では実質的に夫婦扱いになります。

お互いに他の場所から引っ越してきて、新たに2人で転入するときはそれぞれ新住所の市区町村役場に「転出届」を添付し、「転入届」を妻(未届け)で提出します。

もともと同棲していて同じ住所に住んでいるけれど「同居人」で届け出ている場合、「世帯変更」を届け出て、「妻(未届け)」に変更してもらいましょう

2. 健康保険・厚生年金の扶養に入る

健康保険・厚生年金の扶養に入るには、

「収入を証明する書類(市区町村役場の所得証明、源泉徴収表等)」
「双方の戸籍謄本」
「世帯全員の住民票」(妻未届と表示あり)

が必要で、

「事実婚に関する申立書」に民生委員など「第3者の証明」も必要になります

3. 夫婦別姓にする

戸籍を新しく作らないこととなり、夫婦は別戸籍なので、夫婦の名字は別になります

入籍していても旧姓を「通称」として使うことを認めている職場や資格は多いのですが、事実婚は戸籍も通称も別姓となり、逆に同姓にすることができません
 

4. 離婚時の財産分与、慰謝料、子供への養育費

事実婚であっても離婚した場合の財産分与や慰謝料請求はできます。

ただし、別居で経済的にも依存関係が薄い場合、子供がいる場合養育費が請求できます(父親が認知していることが必要)。

事実婚でも請求できる

5. 老齢年金の加給年金・振替加算の対象者になる

加給年金とは、年金版家族手当で夫婦の片方が厚生年金・共済年金に20年以上勤めていて、被扶養配偶者が850万円未満の年収で20年未満の厚生年金・共済年金、老齢基礎年金をもらっていない場合に支給されます。

事実婚夫婦は、住民票、被扶養配偶者の所得証明、夫婦双方の戸籍謄本が必要で、同居であっても「事実婚・同居についての申立書(日本年金機構)」で民生委員等の第3者証明が必要になります。

6. 夫婦別姓を請求できる配偶者となる

遺族年金をもらえる配偶者(現状、妻が多い)には、事実婚妻も入るのです(相続は戸籍上の配偶者のみ)。

ただし、事実婚妻が遺族年金をもらうには法律婚妻より「夫と生計を維持している」証明の手間がかかります

周囲にも夫婦と公言し、健康保険や年金で扶養に入る、同じ住所に住民登録し同居し「未届の妻」にしておく、夫死亡時に喪主を務める…など、実態が夫婦である証拠を常日頃用意しておく必要がありそうです

住民票や第3者の証明、請求者の所得証明はもちろんのこと、お互いに戸籍上の配偶者がいないか、死亡者、請求者、両方の戸籍を用意する必要もあります。

ただ「妻と長く別居中だった80代の元自治体職員の男性が、12年余りの闘病生活の末に亡くなった。

遺族年金をもらったのは、最期を看取(みと)ったのは20年前に離婚した70代の元妻で、現在の妻ではなかった。」そんな話もあるので、法律婚の妻が必ずしも優遇されると決まっているわけではありません

実態が夫婦である証拠を残す

7. 体外受精など特定不妊治療

平成26年に日本産婦人科学会は体外受精を事実婚夫婦にも認めることを決めました

ただし、事実婚夫婦は多くの自治体で特定不妊助成金を受け取ることはできません

8. 加害者への損害賠償請求

例えば、配偶者が交通事故に遭った場合、事実婚夫婦の配偶者は加害者へ損害賠償を請求することができます。

9. 携帯電話会社の家族割引

同居の事実が確認できれば、事実婚夫婦、同棲などでも携帯電話会社の家族割引は受けられるようです。

2人分の身分証明や健康保険証、住民票など公的な証明が必要になるようです。

現在、格安スマホ会社等も多くあり、ご利用の携帯電話会社に確認してみましょう。

家族割引は受けられる

10. 保険会社によって異なるが生損保の受取人になれる方向に!

平成27年3月に渋谷区で「同性パートナー証明書」が発行できるようになりました。

これを受け大手生命保険会社の中には、同性パートナーを死亡保険受取人に指定できるようになった会社もあります

同性パートナーは正に「事実婚」です。

その意味では、異性同士の事実婚も保険金や給付金の受取人にできる会社は拡大するでしょう。

事実婚でできないこと

入籍していないと事実婚ではできないことも多いものです。確認してみましょう。

1. 夫婦同姓にすること

入籍していないと夫婦が同じ名字になることはできません。

別の戸籍、別の名字になりますが、住民票には「妻(未届)」との表示にできます

2. 子供を「嫡出児」にすること

事実婚夫婦に子供が生まれると、母親の戸籍に自動的に入るようになります。

婚姻関係ではない男女から生まれるので戸籍上「非嫡出児」扱いとなり、未婚の母が子供を生んだ扱いとなります。

事実婚では、父親に子供の扶養義務等を負わせるためには、父親が「認知」するというひと手間が必須なのです。

もちろん、胎児のうちから、または出産後すぐに父親が「認知届」を提出すると、父親欄が空白になる期間はないそうです。

出産前後だけ入籍し、その後ペーパー離婚すれば、子供を「嫡出児」とすることが可能ではあります。

子供に対しての共同親権も事実婚には認められていません

3. 税金で配偶者控除・配偶者特別控除の対象者になること

配偶者控除も配偶者特別控除も受けることができません

事実婚夫婦は、税制上は法律上の夫婦と見なされず、他人となるので、配偶者控除も配偶者特別控除も受けることができません

もし内縁夫が年収600万円で内縁妻が年収120万円なら、事実婚夫婦の夫は法律婚夫婦の夫より年間3万8,000円所得税を多く払わなくてはなりません

4. 配偶者死亡時の相続

税制上、法律上の夫婦とみなされないので、内縁妻も内縁夫も配偶者が死亡したときに財産を相続することができません

例え遺言があっても、配偶者の特別控除3,000万円などは使えません

先日決まった「民法改正」で、配偶者はより強い保護を受けられることとなりました。

配偶者居住権」といい、配偶者が遺産として居住権を選べば、自宅の所有権が子どもや他人に渡ってもそのまま住み続けることができる制度です。

配偶者が高齢になるほど安くなり、所有権より低く評価されるため、所有権より、多くの遺産を取得できるのです。

配偶者に「自宅と生活費」を充分に保障する制度と言えます。

残念ながら、法律婚夫婦だけで事実婚夫婦は対象になっていません。

不慮の事故等めったにありませんが、事実婚夫婦は日ごろから「遺言」を意識して暮らした方が万一のとき配偶者に財産を残すことができるでしょう。

5. 体外受精など、特定不妊治療の助成金を支給しない自治体が多い

事実婚夫婦も体外受精自体はできるようになりましたが、国で行う特定不妊治療の助成金は受けることができません

国の上乗せで助成を行う自治体も事実婚夫婦の特定不妊治療に対しては、助成金を支給しない方針の自治体が多いのです。

体外受精は100万円以上かかることもザラにあり、高度な不妊治療をする場合は法律婚夫婦よりお金がかかることになるでしょう。

特定不妊治療の助成金を支給しない自治体が多い

6. 特別養子縁組ができない

6歳までの子供に対して親権をもてる特別養子縁組をできるのは法律婚夫婦だけです。

特別養子縁組は、実親より強い親権を持てる縁組です。

事実婚夫婦が子供に恵まれなかった場合、強い親権を持つ特別養子縁組は組めないので、養子を持つ場合は普通縁組になります

事実婚の配偶者が死亡! 遺族年金について

配偶者が亡くなった時に頼りになるのは、やはり遺族年金です。

亡くなった人が自営業などは遺族基礎年金のみ、会社員だと遺族厚生年金(基礎年金と2階建て)です。

遺族が遺族年金をもらえるのは、亡くなった配偶者が保険料納付要件を満たしている、または、25年以上年金期間があることが必要です。

遺族厚生年金をもらえる人には、1位に事実婚も含む配偶者、となっています。

2位の18歳年度末(障害1,2級の状態だと20歳)までの子供は、父または母と同居している場合は支給停止されるので、実質的には、配偶者が遺族厚生年金を受け取ることが多いのです。

「遺族年金の支給要件が複雑」な配偶者

遺族基礎年金と遺族厚生年金では、配偶者に対する支給要件が違います。

年収850万円以内の収入の妻(生計維持関係にある)で、夫に扶養されていなくても遺族年金をもらえる点、事実婚の配偶者も請求ができる点は、遺族基礎年金も遺族厚生年金も同じです。

遺族基礎年金は、残された夫(平成26年4月の死亡より)や妻に18歳年度末までの子供がいないと支給されません。

夫については年齢制限等があり、妻死亡時55歳以上、または子供が18歳年度末までで遺族基礎年金を受けられる間でなければ遺族厚生年金は支給されません

事実婚は法的な保護を個別の事情に応じて受ける

事実婚は当人同士の強い意識が必要

法律婚夫婦だとどんな生活をしていても、税制上、社会保険の扶養、相続、離婚時の取り扱い等、法律で決まった保護を受けられます。

事実婚は内縁夫婦の個別の事情によって、法律上受けられる保護が異なってくるのです。

例えば、平成16年11月最高裁の判決で、16年間事実婚で共同生活をしていた夫婦関係を一方が突然解消したケースで、解消された側からの慰謝料請求は認められませんでした。

この事実婚夫婦は共働きで、同居せず、2人の子供の養育を第3者に任せていたため、「法律婚に準じる関係ではない、法的保護を与える関係ではない。」と最高裁は判断したのです。

事実婚の法的保護は法律婚より弱い」、と言っていいでしょう。

法律による保護が弱い分、事実婚は当人同士の強い意識が必要な形なのかもしれません。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)

《拝野 洋子》
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拝野 洋子

年金相談員、保険・家計アドバイザー ファイナンシャル・プランナー(上級資格のうちライフ、保険、タックス、相続、金融を科目合格) 大手地方銀行にて外国為替、内国為替に携わる。税理士事務所等にて、社会保険、助成金申請代行、損保代理店業務、行政書士補助、記帳代行などの業務に携わる。400件以上の電話年金相談に対応。東京都中央区で算定相談員、川崎市で街頭相談員、社団法人の労働施策アドバイザーを経験。趣味はクラリネット演奏 音楽鑑賞 読書。平成25年4月よりオールアバウトガイド 平成29年4月より年金相談員 <保有資格> 社会保険労務士、FP技能士2級、AFP、日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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