銀行員一筋30年の筆者が教える「銀行の不動産現地調査」 銀行は担保のココを見る(4)~地下~

銀行視点の担保不動産の見方

第1回:銀行は担保の前後を見る

第2回:銀行は担保の左右を見る

第3回:銀行は担保の上を見る

第4回:銀行は担保の下を見る
 

第4回:銀行は担保の下を見る

不動産担保の地下チェック


下とは
担保となる不動産の地下、そして地下に何かが埋まっていた場合のこと
超能力でも無い限り、当たり前ですが地下の様子は透視できませんが、実際にはいろいろ調べる方法があり、現地調査では必ず下を見ます。

土地の地下を、高速道路や地下鉄が通っていた場合や、土地の下に何かが埋まっていた場合の影響はどのくらいあるのでしょうか。


1. 地下鉄や高速道路

正確には地下鉄や高速道路の隧道をいいます。

地下を地下鉄や高速道路の隧道(トンネル)が通過しちる場合、一般的には「区分地上権」が登記されています

区分地上権とは?


区分地上権とは、簡単にいえば土地の上に部分的に設定された権利のことです。

地下鉄の隧道や、第3回で述べた高圧線などが代表的なものです。

その土地の上(上部、ではなく権利上の意味)に設定されています。

区分地上権は登記簿で確認できます。

担保評価額への影響


税法上の評価額は、区分地上権があることで減額されます。
上下に何かがある土地の評価は下がる
という理屈です。

銀行でも同様に、区分地上権がある分担保の評価は下がります。

つまりは、売れにくい土地と定義されてしまうわけです。

現地調査の方法


登記後でチェックする


上述のように登記簿で確認します。

高圧線の地上権の場合は、公図にも表示がある場合があります。

地下鉄については登記簿記載の内容で確認するしかありません。

地下鉄がどこからその土地の下を通って、どこに通じているのかなどは鉄道会社や市区町村に確認すればわかります。

ただし、それがわかったとして土地の評価に特段の影響はないのであえて調査しません。

地図でその土地が中間地点となる地下鉄の駅を探して線を引けばことが足ります。


2. 埋蔵物

京都や鎌倉に代表される、古都ともいう地区では、地下に埋蔵文化財がありそうな場所は公表されています

こうした土地のことを「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます。
「あそこにはほぼ間違いなく文化財が埋まっていそうだ」
ということですね。

このような土地は、売買したり造成工事をする前にあらかじめ届け出をした上で試掘をし、遺跡が見つかったりしてしまうと工事が何か月も先延ばしになったり、調査費用の負担も問題になってきます。

ただし上述のとおり、もともと文化財がありそうな土地だということは知っているわけですので、ある意味仕方ない、想定の範囲とも言えるでしょう。

問題は、全く想定外に遺跡や「他の厄介なもの」が出てきた場合のことです。

想定外に遺跡が出てきた場合


周知の埋蔵文化財包蔵地であれば、ある意味遺跡が出てきても「待ってました」と役所の対応もそれなりにスピーディーで、費用を出してくれるかもしれません。

では、想定外にそれこそすごい遺跡が出てきてしまったら?
   
見なかったことにして、こっそり埋め戻してはもちろんいけません。
   
ちゃんと届け出をして発掘調査をしてもらわなければなりません
   
問題は、時間とカネです。
   
発掘が長引けば何もできないまま時間だけ無駄に過ぎてしまいます。
      
銀行が担保にした土地は、借金の抵当となった土地です。
   
借金して買った土地を、何も利用できずに時間が過ぎれば利息が無駄になる。
   
更には、調査費用も自分が負担しなければならないかもしれません。
   
借金して買った土地から遺跡が出てきてしまったら、踏んだり蹴ったりで、何も良いことがありません

借金して買った土地から遺跡が出てきたら良いことない


厄介なものが出てきてしまったら?


ここでいう厄介なものとは、以前の建物などのコンクリートや鉄筋など俗に言う「ガラ」などです。

これは、その量と程度にもよります。

さほど影響ない程度なら業者などに頼んで廃棄すれば良いでしょうし、場合によってはそのまま埋めておいてもいいわけです。

問題なのは、大量で処分に困るようなケースです。


瑕疵担保責任が明暗を分ける

不動産の売買で、売主が負う責任がこの「瑕疵担保責任」です。

これは不動産という商品に、売主が売主として責任を持つという意味です。

今回のガラなどが悩ましいケースです。

なぜなら見えざる瑕疵になる恐れがあります。
  

見えざる瑕疵は、売主も責任を負わない


売買契約書や重要事項説明書にはよく
「見えざる瑕疵について売主は責任を負わない」
とうい一文があります。

不動産売買では、重要事項説明書でそれこそ重要な事項は全て説明しなければなりません。

不動産に瑕疵があれば、前もってしっかり説明済みであり、買主は当然それを承知で買うわけです。

売買したあとで何か問題が出てきたとしても、売主がその問題を知らなかったとすれば瑕疵担保責任を問うことはできません

これが見えざる瑕疵です。

もちろん「売主が知らなかった」という点が重要です。

もしも、売主が瑕疵を隠して売ったとすれば、売買自体を取り消すことも可能です。

ただしこの場合、隠していたと証明するのが非常に困難で、このあたりが不動産売買の怖いところです。
「工事したら、大量のガラが出てきた」
この場合、売主に負担を求めるのは難しいでしょう。

不動産売買に銀行が介入してはいけない


不動産売買に銀行が介入してはいけない


地面を掘って、銀行が見えざる瑕疵の調査をするようなことは絶対にありません。

担保にするとはいえ、不動産はあくまで購入した顧客のものですし、売買するまでは当然ながら売主の所有物です。

契約に基づき売買される予定の不動産を、銀行が試掘して調査などすれば、「銀行が売買の妨害をした」といわれかねないので、試掘など絶対にしなせん。

実地調査はせず、売買契約書や重要事項説明書を読む


瑕疵担保については、瑕疵の有無や内容を調べるだけです。

担保評価に影響する内容がないか、最初から最後まで文字通り熟読します。
「売買契約書や重要事項説明書は後ろから読め!」
と銀行では教育されます。

契約書や説明書に共通することですが、注意事項や問題点など、端的にいえば「悪いこと」は最後に書いてあります

俗に言う事故物件などは心理的瑕疵といい、それも最後の最後に「告知事項」、「容認事項」といった表現で記載があります。

売買契約書や重要事項説明書はしっかり後ろから読むべきです。(執筆者:加藤 隆二)

参考:銀行員の売買契約書や重要事項説明書の読み方

この記事を書いた人

加藤 隆二 加藤 隆二»筆者の記事一覧 (9)

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。
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