離婚する夫婦が直面する「養育費」の問題 子供が高校生なのに定年退職してしまうと、そのあとの養育費はどうなる?

今回の相談者・二橋直美(53歳)の第一声は「主人と離婚を考えています」でした。

夫の退職金や年金、結婚中の貯金や実家の遺産…そんなキーワードが直美さんの口から発せられたので、てっきり「熟年離婚の相談だろう」と決めてかかったのですが、直美さんが一番心配していたのは「子供の教育資金」でした。

孫ではなく子供の養育費を指していたので私は驚きました。

厚生労働省が公表している人口動態統計によると、第1子出生時の母の平均年齢は40年間で5歳も上昇しています。(昭和50年は25.7歳、平成23年は30.7歳)

また40歳から44歳で出産した女性は30年間で6倍に達しています。(昭和60年は8,224人、平成27年は5万2,558人。)

さらに初婚年齢は40年間で男性が6歳(昭和50年は27.8歳、平成27年は33.3歳)女性は6歳(昭和50年が25.2歳→平成27年の31.1歳)上昇しており、結婚年齢と出産年齢は比例するのは当然といえば当然です。

晩婚化に伴う高齢出産と離婚(養育費)の問題

今回のケースで直美さんが出産したのは40歳。

高齢出産という枠に入るのでしょう。

直美さんの場合、「晩婚化に伴う高齢出産」と事情が離婚の問題を複雑化させていたのです

これはどういうことでしょうか?

家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)

夫:二橋 健一 57歳(会社員) 年間の手取額 496万円

妻:二橋 直美 53歳(契約社員) 年間の手取額 240万円

長男:二橋 漣 13歳(双子)

長女:二橋 凛 13歳(双子)

資産状況

夫の退職金 1,200万円(見込み額)

夫婦の預貯金 670万円

妻と子の収入(離婚後の予想、月額)

離婚後の予想収入

妻の月収(手取額) 20万円

夫からの養育費 17万円

妻と子の支出(離婚後の予想、月額)

家賃 11万円
水道 8,400円
ガス 2万6,000円
電気 9,600円
食費 5万8,000円
インターネット 7,300円
固定電話 2,700円
妻の保険(死亡、医療等)の保険料 6,000円
ガソリン 6,500円
自動車保険料 5,000円
自動車税 3,300円
学資保険の保険料 2万円
子の塾、習い事 9万7,000円
妻のこづかい 1万円
子供のこづかい 4,000円
計 37万3,800円

直美さんと夫との関係はすでに破綻しており、離婚という結論は出ていました。

そして離婚の話し合いを続けた結果、2人の子供の親権は直美さんが持ち、夫が直美さんに対して子1人あたり毎月8万5,000円を子が22歳になるまで支払うという条件が決まったのです。(慰謝料、財産分与など他の条件は割愛します)

そして、このまま離婚が成立すれば何の問題もないのですが、私が気になったのは「夫の年齢」です。

この夫婦は夫の年収をもとに養育費を決めたのですが、確かに夫の毎月の給与は毎月28万円、6月と12月の賞与は80万円(いずれも手取額)です。

賞与を12で割って毎月に割り振り、給与に上乗せすれば約41万円です。

ですから、夫が直美さんに対して毎月17万円の養育費を支払っても、まだ夫の手元には24万円残るので特に問題はないでしょう。

そして離婚時の年収が最後まで続くという前提で毎月の金額を計算し、そして最後まで同じ金額(子が22歳に達するまで毎月8万5,000円)を設定したようです。

旦那さんが3年後、定年をむかえるのですが、大丈夫でしょうか?

3年後、定年をむかえる

私は苦言を呈したのですが、どうやら直美さんはそのことを見落としていたようです。

夫いわく、本人が望めば、同じ会社で再雇用され、60歳から65歳まで働くことは可能だそうです。

しかし、夫の年間の手取額は以前に比べ、約35%も減少し(496万円から320万円へ)夫の毎月の給与は毎月20万円、6月と12月の賞与は40万円(いずれも手取額)で、賞与を12で割って毎月に割り振り、給与に上乗せしても約26万円に過ぎません

「旦那さんが毎月17万円の養育費を支払うと、手元には9万円しか残らないので生活できないのではないでしょうか?」

私は直美さんに確認したのですが、さらに夫が65歳以降、同じ会社に勤務できるかどうか、現時点では不透明です。

今回のケースでは夫65歳時に、子供はまだ20歳ですが、今のところ、子供は大学進学を希望しているので、まだ大学に在学している可能性があるのです。

このように60歳、65歳のタイミングで夫がお金の面で息詰まるのは目に見えており、何らか手を打たなければなりません

「こんなことになるなんて…どうしたらいいでしょうか?」

直美さんは不安そうな顔を浮かべますが、夫の退職金、夫婦の預貯金から計1,128万円を養育費に補填すれば何とかなりそうです。

具体的にいうと夫の再雇用による収入減によって、養育費を支払った後、夫の手元に残るお金は以前に比べて毎月15万円減るので、夫の再雇用中(60歳から65歳の間)は毎月15万円を資産から補填します(子が16歳から20歳の間。4年間で計720万円)

そして夫が65歳に達すると、それ以降、最悪の場合、夫の賃金収入は途絶えるので、養育費を全額(毎月17万円)、資産から補填します。(子が20歳から22歳の間。2年間で計408万円)

もちろん、子供が大学等に進学せず、20歳以降、学校の在学していなければ、補填する必要はありません。

なお、夫は65歳から年金を受け取る予定なので、それ以降、自分の生活費は自分の年金で何とかすれば、まだ資産を取り崩すまでもないでしょう。

夫も息子さん、娘さんに不憫な思いをさせたくないので最終的には上記の提案を受け入れたようです。

子どもに不憫な思いをさせたくない

「本当は子供が巣立ってからの老後の資金にしたかったのですが」

直美さんは後悔の念を口にしますが、夫の退職金(1,200万円)、夫婦の預貯金(670万円)を子供の養育費(1,128万円)を補填したので、残りは742万円です。

これを夫2分の1、妻2分の1という割合で按分したのですが、本来、退職金や預貯金は老後の蓄えだったはずです。

結局、お互いの手元に残ったのはわずか371万円なので心もとないのですが、子は親(親の年齢)を選んで産まれてくることはできないので、「子はかすがい」だと思えば、やむを得ないでしょう。(執筆者:露木 幸彦)

この記事を書いた人

露木 幸彦 露木 幸彦»筆者の記事一覧 (18) http://www.tuyuki-office.jp/rikon01.html

露木行政書士事務所 代表
1980年生まれ。国学院大学・法学部出身。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7,000件、離婚協議書作成900件を達成した。サイト「離婚サポートnet」は1日訪問者3,300人。会員数は20,000人と業界では最大規模にまで成長させる。「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。読売、朝日、毎日、日経各新聞、雑誌「アエラ」「女性セブン」「週刊エコノミスト」テレビ朝日「スーパーJチャンネル」TBS「世界のこわ〜い女たち」などに取り上げられるなどメディア実績多数。また心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し、累計部数は50,000部を超え、根強い人気がある。
<保有資格>:行政書士、AFP
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