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「9月末までの退職」は社会保険でお得になる? 退職のベストタイミングについて解説いたします。

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「9月末までの退職」は社会保険でお得になる? 退職のベストタイミングについて解説いたします。

厚生労働省が2018年8月31日に発表した、7月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月比で0.01ポイント上昇して、1.63倍だったそうです。

有効求人倍率は「有効求人数÷有効求職者」で算出するため、これが1倍を超えるということは、求職者よりも求人数が多い状態になります。

しかも2014年から継続的に、1倍を超えているため、慢性的な人手不足というわけですが、こういった中でも年間を通じて見ると、求人数や求職者が多い月と、少ない月があるそうです。

例えば新年度が始まる前の月の3月あたりは、年度の切り替えに伴う退職者の、後任を採用しておく必要があるため、他の月より求人数が増える傾向があります。

また、下期が始まる前の月の9月あたりも、下期から開始する新規事業の人材を確保しておく必要があるため、他の月より求人数が増える傾向があります。

ただ求人数が増えると、それに伴って求職者も増える、つまりライバルが増える傾向があるため、例えば経験の浅い求職者などは、この時期を狙わない方が良いそうです。

このように再就職の点から考えると、9月の退職はお得な面だけでなく、損な面もあるのですが、次のように社会保険の点でも、同様ではないかと思うのです。

僕はいつ退職したらいいのか

社会保険の保険料は1年に1回、4月から6月の給与を元に改定する

月給から天引きされる、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料は、入社したタイミングで、入社時の月給を元に決定します。

ただ定期昇給があったり、各種手当が支給されるようになったりすると、入社時の月給と現在の月給との間に、ズレが生じるようになります。

そこで1年に1回、原則として4月から6月の、3か月間の月給の平均額を元にして、保険料を改定するのです。

また改定した保険料は、月給に大きな変動がなければ、9月から翌年の8月までの各月に適用されます。

社会保険の保険料は1年に1回、4月から6月の給与を元に改定する

例えば、月給が30万円という方の厚生年金保険の保険料は、2018年8月時点では、月に2万7,450円になります。

この方が4月に昇給して、月給が32万円になり、4月から6月まで給与に変動がなかった場合、厚生年金保険の保険料は現制度だと、9月から2万9,280円になりますので、月に1,830円の引き上げです。

給与が同条件の健康保険の保険料は、東京都の協会けんぽに加入し、40歳未満で介護保険に加入していない場合、2018年8月時点では、月に1万4,850円になります。

これが厚生年金保険と同様の仕組みにより、9月から15,840円に変わりますので、月に990円の引き上げです。

そうなると厚生年金保険と健康保険の両者で、2,820円(1,830円+990円)の引き上げになりますので、9月から翌年の8月まで変動がなければ、3万3,840円(2,820円×12か月)の負担増です。

月末に退職すると給与から、二月分の社会保険の保険料が天引きされる

今月分の社会保険の保険料は原則として、翌月に支給される月給から天引きされます。

そのため改定された9月分の保険料が天引きされるのは、10月の月給になりますので、9月中に退職すれば、引き上げされた保険料は天引きされません。

ただ社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日になるため、例えば9月末に退職すると、資格喪失日は10月1日になります。

また社会保険の保険料は原則として、資格喪失日(10月1日)が属する月の前月までの分が給与から天引きされるため、9月末に退職した場合には、8月分の保険料に加えて、引き上げされた9月分の保険料も天引きされるのです。

ですから引き上げされた保険料を天引きされたくないのなら、9月末までに退職して、社会保険の資格喪失日を9月内にするのです。

9月末までに退職しよう

月給が低くなると厚生年金保険は、国民年金より保険料が安くなる

現在の日本は20歳以上60歳未満の全ての国民が、原則として何らかの公的年金に加入するという、「国民皆年金制度」をとっているため、厚生年金保険に加入しない方は、国民年金に加入する必要があります。

また国民年金の保険料は免除を受けなければ、収入がいくらであっても同じであり、2018年度額は月に1万6,340円です。

そのため上記のように月給が30万円の場合、「国民年金の保険料<厚生年金保険の保険料」になります。

しかし、例えば月給が「16万5,000円以上17万5,000円未満」の場合には、厚生年金保険の保険料は1万5,555円になるため、「国民年金の保険料>厚生年金保険の保険料」になるのです。

これよりも月給が低ければ、更に厚生年金保険の保険料は下がります。

よって、月給が17万5,000円未満の場合には、9月末まで働いて、9月は国民年金の保険料ではなく、厚生年金保険の保険料を納付した方がお得になるのです。

また、例えば厚生年金保険に加入している方の配偶者が、国民年金の第3号被保険者になっている場合には、この保険料を納付する必要はありません。

しかし退職した後に、すぐに再就職しない場合、夫婦共に国民年金の第1号被保険者になるため、合計で3万2,680円(1万6,340円×2人分)となる、国民年金の保険料を納付する必要があります。

そのため、上記のように月給が30万円の場合であっても、「国民年金の保険料>厚生年金保険の保険料」になるため、9月末まで働いて、9月は国民年金の保険料ではなく、厚生年金保険の保険料を納付した方が、お得になるのです。

9月末まで働いて、退職しましょう

退職直前に有給休暇をまとめて消化すると、失業手当の金額が下がる

社会保険について解説されたウェブサイトを見ると、4月から6月の3か月間は残業を避けた方が良いという話が、よく掲載されております。

それは上記のように、この3か月間の月給の平均額を元にして、9月以降の社会保険の保険料を決めるため、この期間の残業が増えて、残業手当が多くなると、9月以降の保険料が高くなってしまうからです。

なお、例えば月末締めで、翌月の10日が給与の支給日の場合には、4月から6月ではなく、3月から5月の残業を減らす必要があります。

ただいずれにしろ、9月末までに退職するとしたら、あまり関係のない話であり、むしろ積極的に残業した方が良いと思います。

退職直前に有給休暇をまとめて消化すると、失業手当の金額が下がる

その理由として、雇用保険の基本手当、いわゆる失業手当の金額は原則として、退職前6か月の給与の合計額を元にして決められます。

ですからこの期間に残業が増えて、残業手当が多くなると、退職前6か月の給与の合計額も多くなるため、失業手当の金額は高くなるのです。

それに対して、例えば退職直前に、有給休暇の残りをまとめて消化すると、残業手当の減少などにより、退職前6か月の給与の合計額は少なくなってしまい、そうなると失業手当の金額は低くなります。

ですから失業手当を受給する予定なら、有給休暇は早めに取得し、退職直前にまとめて消化しない方が良いのです。(執筆者:木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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