2018年9月4日。関西圏を台風21号が襲いました。
紀伊水道(大阪湾)を通過した為、和歌山・大阪・神戸近辺に大きな被害が出て、特に大阪南部では、屋根瓦が飛ぶ、窓ガラスが割れるといった家に関する被害や、道端の電柱が全て倒れて停電が起きました。
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その模様は、SNSやネットニュースでも紹介されました。
停電の長さも1週間続いたところがありますが、家屋の方で大きな被害が出ていて、特に屋根の修繕が必要な家が多く、修繕待ちの家がブルーシートを屋根に敷いて、修繕待ちです。
台風による家屋の修理には「火災保険」、「火災総合保険」に入っていれば、大きな修繕にかかる負担を軽減できますが、実際はどうなのでしょうか?
今回の台風で、実際に筆者家族も被災し、筆者の実家で大きな被害を受けているので、台風についての問題として4回連載で紹介します。
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目次
今回の台風21号について
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今回関西圏を襲った「台風21号」は、紀伊水道(大阪湾)縦断コースで、昔から「大阪湾縦断の台風は危ない」と注意されていました。
今回は、まさしく大阪湾縦断コースで、学校や会社では前日に「明日は休校・休業」とし、百貨店や大型商業施設は早めの閉店をしました。
電車も午後11時までに全線止まりました。
翌日9月4日の午前中、台風は筆者宅の地域を通過し、停電が起き、シャッターを閉めていましたが、何か大きなものがぶつかる音、家自体がミシミシとうなり、筆者と子どもとで悲鳴をあげました。
風音がおさまってから、外に出てみると、カーポートの屋根1枚が飛んでいて、周囲の家では、屋根瓦が大量に飛んでいて、太陽光パネルをつけていた家は、パネルが見事に剥がれ落ちていました。
ご近所同士で「そちらの家のものですよね」と確認して引き渡しを行っている家や、粉々に割れた瓦をまとめる作業をしました。
ここからが問題。火災保険・火災総合保険に入っているか?
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台風通過後からが大変なことになり、家屋の保険などの対応が必要になります。
自宅の屋根や壁の損傷の有無と範囲を確認した上で、工務店にすぐに修繕依頼をする必要が出てきます。
周りの被害状況を見て、すぐに連絡を入れないと、修繕の順番が遅くなってしまいます。
実家に連絡すると、屋根瓦がかなり飛んでいるということで、手伝いに行くことになりました。
しかし、停電を起こしていたので、信号機が動いておらず、恐る恐る車の運転をしました。
さて、筆者宅と、実家宅ともに、台風の被害があり、「火災総合保険」に加入していました。
しかし、筆者宅のカーポート修繕には、保険を使うことができません。
では、
(1) 火災保険と火災総合保険とでは、適用するものが違います。
住宅火災総合保険: 「住宅火災保険」では補償しない、水害や盗難などもっと補償対象を広げた保険。
地震・噴火・津波については、火災保険・火災総合保険では補償しない
とされてきました。
しかし、地震などの天災が最近増えていますよね?
地震については、今までは別に「地震保険」に加入しなければいけなかったのですが、手間を省くために、「住宅に関する総合保険」として、地震特約という形で契約できるタイプを扱う損害保険会社があります。
筆者宅と実家宅で、保険が使えないというのには理由があります。
ほとんどの火災保険(総合保険でも一緒です)では、カーポートは家屋ではなく、車を止めておくところということで、補償外になります。
反対に、実家宅は、家屋の屋根瓦が飛んで行って、被害箇所が広範囲であるという点で保険を使っての修繕になりますが、「一部損壊」という扱いになります。
カーポートの屋根1枚の修理代については、すでに見積もりを取っていて2万円とお聞きしていますが、いつ修理になるかはわからない状態です。
ところが、最近、カーポートの屋根が飛んで、隣家に損害を与えたということで、修繕費を請求されるケースが増えています。
本来は、修繕に応じる必要がないのですが、特約としてつけることができる保険が登場しています。
住宅ローンを組む際は必ずといっていいほど、最低でも「火災保険」は加入するのですが、古くからあるお家で、火災保険を一切かけていなかったというと話も少なくありません。
この機会に、
してみましょう。
(2) り災証明書発行はしてもらえるけれど、事前に保険会社に連絡を!
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台風での大きな被害を受けた場合、今回の台風被害で、り災証明書は発行されるかは停電の都合もあり、大阪府で台風による被害数が多かった各市町村は、り災証明証を発行しました。
り災証明書は、
・災害での融資制度利用
・税金や国保料、公共料金の免除・減免
・損害保険会社への保険請求
に必要とされています。
り災証明書の発行手続きは、住んでいる市町村で受け付けてもらえますが、損壊した箇所の写真提供が必要です。
ご自身で撮影しても構いませんが、危険な場合は工務店さんに代理で撮影してもらえます。
この写真提供で困ったのが、ご高齢の方のみのご家庭で、屋根がほとんど吹き飛ばされているけれど、り災証明書を出してもらいたいのに写真撮影ができないという事例がありました。
結局工務店さんもしくは地元青年団の方に撮影してもらえたということです。
り災証明書発行手続きの申請後、市から派遣される建築士によって、現地調査を行って、被害認定程度を決めますが、提出された写真から「一部損壊」と認定された場合は、現地調査は行われません。
全ての申請に対して調査を行なっていると、発行に時間がかかってしまうため、「一部損壊」の場合は、写真判定を行うようになりました。
「一部損壊」とは、「半壊」のひとつ下のランクで、家屋の損壊度が全体の20%を超えないものです。
台風21号の家屋の被害については、ほとんどがこの一部損壊と認定されることになると考えられます。
※参考資料「岸和田市役所 台風21号関連 り災証明発行について」
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しかし、今回の台風被害は、かなり広範囲で被害件数も多いということで、損害保険会社によっては、り災証明書の扱いが変わっています。
筆者の実家宅は、念のため、工務店さんに屋根の写真全て撮影してもらい、保険会社から先に問い合わせをして、
と言われ、り災証明書はとりませんでした。
り災証明書の申請は14日間と区切っている自治体がほとんどですが、大停電があったため、9月末までとしているところもありますが、り災証明書の発行受付がいつまでかの確認は必要です。
判定が終われば、順次証明書が発行されてきます。
保険会社への申請。現在の状況は?
り災証明書が必要だった会社であれば、り災証明書が届けば、
・修繕前の写真
・保険会社への申請書
は最低用意する必要があります。
しかし、今回の台風21号の被害は範囲が広いことや、被害戸数が多いため、工務店での修繕を待っている家が非常に多く、見積もりすら立っていない家が多いのが現状です。
台風通過中に、スマホから連絡をしてもすでに20件の修繕依頼が来たと、実家の家の修繕をしてくださる工務店の話がありました。
しかも、昔ながらの日本瓦の家が多いので、土台作りが昔ながらの手法ですることと、日本瓦のサイズが昔からの家の瓦のサイズが違うので、修繕に時間がかかっています。
保険会社側は「見積書があがっていれば、その見積書の金額から算出します」という連絡を受けていますが、工務店も、毎日徹夜で動いているため、なかなか見積もりに依頼された家庭にいけないというのが、現状です。
その後、どんどん雨も降って、雨漏り箇所が出てきていますので、緊急で雨漏りしている箇所へシリコン剤などを入れて、雨漏りを防ぐ作業をしています。
修繕待ちが長くなると、修繕金額もかさむので、待つ側としては困ってしまうわけです。
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支払い金額はどうなるのか? 契約時の内容説明を思い出そう
見積書で保険会社に請求をあげる場合と、修繕に来てもらってから請求をあげる場合とで、支払われる金額というのは変わらず、提出された写真と工務店からの見積書(もしくは請求書)、そして契約内容から判断されます。
それぞれのご家庭で、火災保険(もしくは火災総合保険)を契約した際の内容をしっかり確認していただきたいのですが、評価額が1,000万円の家に対して、5,000万円といった、家の本来の価格よりも高額な保険金額の設定はできませんので、覚えておきましょう。
保険会社によって、その家の築年数・工法などで算出されていきます。
支払い金額については、提出された資料から判定されますが、例えば、修繕費に総額100万円かかったとしても、必ず満額支払いが行われるというわけではなく、減額されるケースがほとんどです。
理由としては、
・契約していた保険が「一部保険」だった
・免責金額の設定をしていた
・提供された写真からの判定で修繕費が抑えられたかもと判定された
が考えられます。
上から3点は、保険証券をみればわかります。
ただし、台風での損害で自分たちが支払った修繕費より保険金額が減額されてしまうという理由のほとんどは、「免責金額を設定していた」、「提供された写真からの判定」でしょう。
免責金額とは、「自己負担金額」で、保険会社にもよりますが、0~10万円の設定ができます。
「なぜ、減額されたの?」と疑問に思われる方のほとんどは、免責金額を設定していたことを忘れていることで、この金額設定は保険会社との話し合いで決めています。
例えば、修繕費に50万かかったけれど、保険の契約では「免責金額10万円」と設定していれば、実際に支払われるのは40万円ということになります。
免責金額を高く設定していれば、保険料は安くなり、免責金額を低くもしくは0円にしていれば、保険料は高くなります。
いざという時のために、
でしょう。
そして、「写真と実際の工事内容からの判断」は、よくもめるのですが、保険会社は、過去の判例と提供写真を保管しています。
そのため、よく似た工法での修繕金額を調べ、保険内容と見比べながら保険金の金額を決めます。
膨大なデータから判定が出るので、修繕にかかった費用全額を支払ってもらうことができず、1割から2割ほどの減額が発生してきます。
「時価払い」は被災当時の家屋の評価額で算定されるもので、最近では「新価実損払い」と購入時の購入価格を考慮した保険金支払いもあります。
「一時保険」も要注意です。
「自分の家に限って、火災・天災はない」と購入時に考えて、家の評価額以下で保険金額を設定するのが「一時保険」で、万が一、家全てを失うようなことになった時に、家の評価額以上の保険金がでないという保険があります。
今回の台風21号での保険金を考えると、各家庭での火災保険などの掛け方によりますが、満額もらえる人はわずかかもしれません。
筆者の実家はというと、知人が代理店に勤めていたので、適切なアドバイスを受けられましたが、減額は免れないと話しています。
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最後に。保険内容は毎年見直しましょう
台風21号で被害を受けた範囲は広く、大阪市内でもビニールシートを屋根に敷いて、土のうを重りかわりにしている家庭は多いです。
「火災保険」、「火災総合保険」については、近年災害の度合いが大きくなっているので、地震保険が今までは別だったのが、特約としてつけられるようになっている会社もあります。
瓦などの被災で、ご近所に被害を与えてしまい、本来、損害賠償は必要ないはずなのですが、損害賠償請求を起こされるケースもあるということで、特約として損害賠償ができるようにできる保険も登場しています。
カーポートの屋根による損害についての補償する特約がつけられる保険が登場していますが、特約をつけすぎると、保険料がどんどん高くなります。
実際に、補償請求を受けた場合は、今入っている保険内容を確認し、契約している保険会社からの指示を受けてください。
災害はいつやってくるかわかりません。
災害にあってからではどうしようもないので、毎年見直していくことで、新しい特約がつけられるのであればつけて、いざというときに備えましょう。(執筆者:笹倉 奈緒美)