次々発覚する免震装置の偽装問題。資産価値への影響はあるの?

2015年の東洋ゴムに引き続き、今月に入ってKYB、川金が相次いでオイルダンパーの性能について国交省の認定に適合していない製品を出荷していたことが明らかになりました

最近はマンションにも多く使われている免震構造

資産価値などへの影響はどうなるのでしょうか。

資産価値への影響は?

免震装置偽装発覚の経緯

2015年3月に東洋ゴムが国土交通相の認定を受けて納入していた建築用免震ゴムで、揺れを抑える性能が基準を満たしていない製品が見つかったと発表。

そして、2018年10月に入り、KYB、川金も関連会社が製造する免震用オイルダンパーでの偽装があったことを公表しました。

既に多くの建物に使われていることが判明しており、今後は製品の交換などの対応が行われることになると思います。

しかしながら、免震装置を作るメーカーの数も限られており、オイルダンパーについては大手の2社が相次いで偽装を発表したことで、今後の供給が滞ることも予想され、混乱することは必至です。

免震装置とは

建物は建築基準法により構造上の基準が設けられています。

地震に対しては主に「耐震構造」、「制振構造」、「免震構造」のいずれかの考え方で設計されます。

「耐震構造」とは、建物の構造強度を強くし、硬さ、強さで地震に対して踏ん張る構造。

「制振構造」とは、建物内に設置するダンパーで地震に対する揺れを抑える構造

「免震構造」とは、建物と地面とを積層ゴムなどの免震装置を挟んで切り離し、建物に伝わる地震の揺れを抑える構造

それぞれに性能、価格、建物の形状や大きさなどでメリット・デメリット、向き・不向きがあり、施主と設計者とでどの構造を採用するか決定します

鉄筋コンクリート造の建物に用いられる一般的な免震装置は主に積層ゴムとダンパーで成り立っているタイプ。

基礎免震を例にとると、建物の基礎とその上の構造物を切り離し、その間に積層ゴムを取り付ける。

急激な横揺れに対し、積層ゴムが変形することで揺れが建物本体に直接伝播することを抑える。

基礎と建物の間にゴムだけしかないと、地震が収まった後も建物が揺れ続けてしまうので、その揺れをダンパーが抑えます。

免震装置にはいくつかの種類がありますが、今回の一連の偽装問題に関連する免震装置は基礎免震、柱頭免震、中間階免震などに用いられる積層ゴムとオイルダンパーを組み合わせて揺れを吸収するためタイプの免震装置となっています

国土交通省の認定とは

建築に用いられる部材は、多様な建築材料や構造方法等の導入を可能とするため、建築材料や構造方法等について、その性能が建築基準法に適合していることを国土交通大臣が認定する制度が設けられています。

一連の偽装はこの国交省の認定基準に適合しない製品が出荷されたもので、いわゆる「不良品」と言えます

建物の資産価値への影響は?

資産価値への 影響は少ない

私は、既に竣工済みで入居が終わっている建物についての資産価値への影響は少ないと考えています

各メーカーは該当製品を適合品に交換することを表明しています。

また、免震ゴムもダンパーも地震の際に全く機能しない訳ではありません

想定していた地震力に対し、想定していた機能が出ない可能性があるという点では全く影響がないわけではありませんが。

以前、耐震偽装で大きな社会問題になった「姉歯事件」がありました。

この事件は、設計者が建物の構造強度に直結する構造計算書を偽造。

審査機関が偽造を見抜けず承認。

この設計で建てられた建物は震度5強程度の地震で倒壊する恐れがあるとされ、多くの建物が改修や解体を余儀なくされ、倒産した会社もありました。

「姉歯事件」は一人の建築士による個人的な犯罪と位置付けられました。

一方、今回の偽装は大手の会社が組織的に行った悪質なものである可能性もあることから、非常に大きく報道されています

該当する建物には役所の建物や病院など、災害時には拠点として機能することを宿命づけられ、万が一にも壊れることは許されない建物も対象に含まれているため、問題は大きいといえます。

もちろん、マンションやオフィスなど民間の建物も壊れては困ります。

いつ地震が起きてもおかしくはないと言われている状況下。

想定の最大に近い強度の地震が起きる可能性もあります。

不安はありますが、交換も行われていくことでしょうから、今すぐ売却しようと思っていた方以外にはあまり大きな影響はないと私は考えています

一方、建築中、あるいは分譲中の建物については、不良品を用いているため、引き渡しが滞ることがあり得ます

既に一部のデベロッパーが提訴の動きを見せています。

購入し、あとは完成を待つのみとなっていた方には引き渡しの延期などもあり得るでしょう。

まとめ

今回、免震構造に対しその信頼性を損なうような事件となったことは残念です。

しかしながら、免震構造自体はこれまで発生した地震からも効果が実証された技術です。

私自身も以前、免震構造で建てられたオフィスビル内で勤務していた経験もあります。

震度4くらいでは「ちょっと揺れたかな?」、「まだ昨日のお酒が残っているのかな?」、「ん?めまい?」くらいで、ほとんど揺れがわかりません。

私が以前勤めていた会社が免震工事を施工した東京の某百貨店では東日本大震災の時も「商品のお皿一枚割れなかった」と非常に感謝されたと聞いています。

不安ではありますが、それほどナーバスにならなくても大丈夫だと思います。

関連する各メーカーには一刻も早く対象物件の部材の交換を進めていただくとともに、再発防止に努めていただきたいと思います

また、「黙っていればバレないだろう」と偽装を隠蔽している会社がこれ以上ないことを祈ります。

ものづくりで信頼されてきたジャパンプライドを傷つけないでいただきたいと思います。(執筆者:西山 広高)

この記事を書いた人

西山 広高 西山 広高»筆者の記事一覧 (39) http://www.nishiyama-ld.com/

西山ライフデザイン株式会社 代表取締役
慶應義塾大学卒。大手建設会社に入社し、主に建築営業とお客様の不動産の活用提案業務に従事。2015年に退職、西山ライフデザインを設立。ファイナンシャル・プランニングと不動産の知識と経験でクライアントの「ワンダフルライフ」の実現をサポートする。趣味は2006年から始めたマラソン。第1回東京マラソンに出場。その後、ウルトラマラソンやトレイルランニングの大会も出場、完走歴あり。妻と2人の子供の4人家族。1968年生まれ。東京都大田区在住。
<保有資格>:宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、住宅ローンアドバイザー、ビジネス法務エキスパート
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