銀行融資の「取上げ基準」を知ろう【第3回】 返済財源や返済能力について ~どうやって、なにで返済していくのか? 何年で返済できるのか?

返済財源について

融資申込みをすると、銀行員から返済財源について聞かれます。

返済財源とは、銀行から融資を受けたあと、返済に充当するカネのことです。

返済に充当する資金のみなもと、という意味で、銀行では返済原資とも呼びます。

意味は返済財源と同じです。

(今回は返済財源で統一します。)

お金は湧き水のように湧いてくるものではありません。

事業を営み、生み出していくものです。

それは返済に充当するカネも同じです。
  

銀行員の質問には慎重に答える

銀行員の質問には慎重に答える

銀行員はざっくばらんに

「なにで返していきます?」

と聞いてきます。

ここで、

「売上とか、手元に残ったお金で返済しますよ。」

などと答えてはいけません

銀行は金貸しです。

貸したカネはきっちり回収しなければいけないのです。

「売上とか…」の答えはNGです。

返済財源を問われているのですから、明確に答えられなければいけません。

この答えでは、返済の計画性がないと宣言しているようなものです。

上記質問への模範回答はこうなります。

「商品仕入資金なので、来月から年末までの3か月に回収した売上金で返します。」

「機械を買ったお金なので、手元に残ったお金(粗利益)で返済していきます。」


運転資金なら売上で返済、設備資金は収益で返済。

これが、銀行融資の基本ルールです。

返済財源はもともと決められている

銀行員が聞いてきますと書きましたが、実際の現場ではここまで意地悪な質問はないでしょう。

大事なのは、運転資金融資を受けたのだから、売上で返すということをあなたがちゃんと知っていればいいのです。
   

基本ルールを知らないと大変なことになるかも

設備資金を借りたのに、間違っても「売上で返します」などといってはいけません

一歩間違えば、設備資金を運転資金に流用するつもりか?との誤解を受けかねません。

融資はその資金使途によって、返すカネの出所(源泉)も決まっているのです。

この点に注意してください。

返済能力について

返済能力について

商品仕入資金を例にとると、

商品仕入資金融資を受け →商品を仕入れ →販売して →売上で返済する

上記のような流れで、返済は3か月の期限に一括返済などが主流です。

運転資金は売上で一括返済する、いいかえると、売上(販売代金)を当て込んだ融資で、銀行では引当融資引当貸(ひきあてがし)などと呼びます。

運転資金は売上がすべてですので、返済能力は重視しません。

重視するのは設備資金の場合です。
 

設備資金融資では返済能力の審査が不可欠

設備資金は収益で返済です。

工場を建築したり、新しい機会を購入したり…それが設備資金融資です。

設備は、それ自体で売上を伸ばすことができません。

工場や機械が新しくなっても、向上するのは生産能力や品質、あるいは経費節減で、設備は売上増加には直結しません

だから、収益で返済していかなければなりません。

運転資金とは返済財源が決定的に違うのです。

設備資金の返済財源である収益、そこから導き出されるのが返済能力であり、設備資金融資の審査には必要不可欠な重要事項です。

返済能力の計算方法

設備資金融資を、返済財源である収益で返済した場合、何年で返済できるのか?

これが返済能力の考え方です。

数式にすると、以下のとおり

返済能力の数式

※D:収益=当期利益+税金―社外流出(役員賞与、株式配当金)

計算式の説明

分子:A 長期借入金、B 設備資金融資

設備資金は長期に分割返済していくものです。

ですから、返済能力を検討する時には、今回の融資(B)以外に、今まで借りて現在返済中の長期借入金(A)も加えます。

返すべき借入金は、過去と今回の長期借入金の全てということになります。

売上で即回収するとの前提で、運転資金はこの借入金には含みません。

分母:C 減価償却費

減価償却費は、設備が毎年少しずつ劣化することを金に換算していくものです。

法律で定められた計算方法で毎年経費として計上しますが、実際にどこかに支払ったわけではありません。

法律上経費計上しているだけなので、実際にはキャッシュアウト(社外に流出)していません。

ですから返済能力の計算で分母にできるのです。

分母:D 収益

収益を詳細に述べると「当期利益+税金―社外流出」になります。

事業を行って最終的に手元にのこるカネのことで、内部留保と同じです。

「設備資金の返済財源は内部留保と減価償却」ということになります。

個人事業主の場合は、青色申告特別控除額控除後の所得が当期利益に該当します。

計算例

実際の計算は以下のようになります。

計算例

返済能力の審査

返済能力の審査

分子である「過去+今回の長期借入金」は収益(利益)で返済していくことから、別名で要利益償還債務ともいいます。

この要利益償還債務を返済財源により何年で完済できるのか?

が返済能力なので、こちらも別名で償還力(償還年数)といい、返済能力=償還力は年で表現されます。

上記計算例では、償還力は10年となります。

償還力の審査には、2つの基本ルールがあります

1. 償還力は原則10年以内が理想
2. 今回融資の借入期間<償還力(年)

もちろん例外もありますが、設備資金融資では、償還力を計算し、

・償還力は10年以内か?
・今回融資の借入期間は償還力の年数以内に収まっているか?

これをクリアーしないと設備資金融資はできません。

2つの基本ルールの意味

償還力は10年以内が理想というのは、銀行の経験から来る定石とも言えるものです。

そして、今回の融資借入期間が償還力以内かどうか?

これは計算式でみたほうが理解しやすいでしょう。

上記の式で、今回の設備資金融資を1億円から2億円に増やすとどうなるか?
   

計算式

今回の設備資金借入期間10年<償還力12年

償還年数が借入期間を2年オーバーしています。

つまり今回の融資は10年で返し終えることができないということになるのです。

実際の融資審査は多角的で、償還力だけで決まるものではありませんが、銀行の融資審査の基本的事項ですので、覚えておかれると良いでしょう。(執筆者:加藤 隆二)

この記事を書いた人

加藤 隆二 加藤 隆二»筆者の記事一覧 (36)

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。
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