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銀行融資の「取上げ基準」を知ろう【第4回】 押さえ(担保)と保証人について

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銀行融資の「取上げ基準」を知ろう【第4回】 押さえ(担保)と保証人について

押さえとは?

押さえとは、つまり担保のこと

銀行融資の押さえとは

銀行は、万一融資金が回収できなくなった場合にそなえて、融資金を回収するための手段をあらかじめ講じておきます。

例えば住宅ローンやアパートローンでは土地・建物、事業資金なら店舗や工場、機械や商品も担保にします。

担保になっているモノを売って、貸したカネを回収することを「担保権を行使する」と表現します

担保権を行使する目的物が「担保」であり、押さえとは担保のことを意味します。

例えば融資の相談を受けた銀行員が上司に相談すると、「この融資案件の押さえは何だ?」と上司に聞き返されます。

「担保は何だ?」ではなく「押さえは?」です。
  

担保とは融資を保全するモノのこと

ではそもそも担保とは何でしょう?

担保権を行使する目的物 → 返せなくなったときに売り払って融資金の回収にあてるモノ、それが担保と上記したとおりです。

融資の押さえ(担保)をとることを、銀行では「融資を保全する」と表現します。

「保全」とは保護して安全であるようにすること、という意味です。

融資を保護して安全であるようにすることが「保全」

融資を「保全」するモノが「担保」

融資を「保全」することができるから、「担保」は融資の「押さえ」である

これらは銀行との付き合いの中でよく登場しますので参考にしてください。

融資の押さえは2種類ある

物的担保と人的担保

融資を保全する押さえは下記の2種類です。

(1) 物的担保
(2) 人的担保

物的担保は不動産や動産などモノの担保を指します。

モノですので、売却して回収にあてる → 担保権の行使ができる担保が物的担保です。

いっぽう人的担保は保証人です。

以下それぞれの内容と、注意すべき点について説明していきます。

融資の押さえは2種類

物的担保

物的担保も下記の2種類に分かれます。

不動産担保:不動=動かない(動かせない)のが不動産担保

動産担保:動=動く(動かせる)のが動産担保

不動産担保は個人向けローンでは一般的な担保です。特に説明は不要でしょう。

動産担保とは、自動車や小規模な機械(大規模機械は不動産に分類)などです。

最近では養豚業での豚、養殖の魚など生き物も担保になります

また近年増加しているものでは、売掛債権(売掛金のこと)や棚卸資産(在庫商品や原材料のこと)を担保にするABL(Asset-Based-Lending)融資があります。

ABL融資では商標や特許などのいわゆる知的財産も担保にする場合があります
  

物的担保における注意点

動産担保について特段の説明は不要でしょう。

例えば商品や在庫などは、返済に困ったなら、たとえ担保になっていなくても、売却して資金化するものだからです。

問題は不動産です。自宅は担保にしない! これが非常に重要なのです。

もちろん住宅ローンでは不可能ですが、例えばアパートローンのケースなどです。

(1) 銀行からアパートだけでは担保が足りないといわれた

(2) アパートと自宅は同じ敷地の上にある

(1)、(2)ともよくある事例です。

では、なぜ自宅を担保にするべきではないのか? 次項詳細に説明します。 

ちなみに上記で自宅の担保をどのように回避するかというと、

・ 定期預金や国債、生命保険などを担保にして自宅担保を避ける

・ 敷地を分筆して、担保はアパートだけにする

2つともお金がかかりますが、そうしてでも自宅を担保にすることは避けるべきだからです。

自宅の担保、実は銀行もやりにくい

アパートオーナーでも個人事業主でも、自宅を銀行の担保にするのはイヤです。

もちろん銀行の担保になったからといって(銀行では担保にすることを「担保を取得する」と表現します)、「この土地は〇〇銀行の担保です」などと看板が立つことは絶対にありません。

自宅として住むことに何の支障も、当たり前ですがありません。

しかしながら、自宅の担保は非常に重いのです。

もしも借金が返せなくなったら、自宅は銀行に取上げられる。
   ↓      
自宅は二束三文で売り払われてしまったので、借金は全て帳消しにしてもらえず、
   ↓      
借金はまだ残っているのに、もう住むところも失った。今日の寝床もないし、手元にはほとんどカネがない…

決して誇張しすぎた表現ではなく、現実によくあることです。

自宅を担保にした場合に起こり得る最悪のパターンといえるでしょう

銀行では、昔から自宅を担保取得することに積極的でした。

理由は2つ。

・ 自宅を取上げられないように、顧客は必死になるから

・ 上記最悪ケースには至らなくても、いろいろな局面で顧客との交渉に心理面で優位にたてるから。

端的にいえば、自宅という生活の根幹を銀行に押さえられてしまうということです。

もちろん、銀行にとって全てが思い通りになるわけではありません。

例えば現実に担保権を行使して自宅を売却するには、当然ながら住んでいる人間を立ち退かせなければなりません

いくら契約に基づいた正当な権利行為だとしても、例えば子供や老人が住んでいたならどうでしょう。

対外的に銀行が非難を受けるかも知れませんし、立ち退きを迫る役割など誰もやりたくないに決まっています。

積極的に担保にするといっても、じつのところ銀行にはやりにくい部分もあるのです。(私も実際に、立ち退きをせまる仕事をした経験があります。私自身辛かった思いとともに、お客様やご家族の様子を今でも鮮明に覚えています)

人的担保

保証人

人的担保とは保証人のこと

人的担保とは、いうまでもなく保証人のことです。

ひとくちに保証人といってもいくつか種類があります。

(1) 保証人
(2) 連帯保証人
(3) 物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)

(1)、(2)の違いは、銀行から借金返済を求められる(これを催告されるといいます)順番の違いです。

(3)はそもそも(1)、(2)とは性質が異なります。
   

(1) 保証人

保証人は下記のようにいくつか権利を持っています。

自分より先に、まず債務者本人に督促するよう求めることができる(催告の抗弁権)

債務者に財産があるか調べ、優先的な返済を求めることができる(検索の抗弁権)

保証人が複数いれば人数で頭割り、5人なら保証額は5分の1で良い(分別の利益)
   

(2) 連帯保証人

連帯保証人には(1)保証人のような権利がありません。

銀行は本人・保証人のどちらから督促しても良いのです。つまり債務者本人と同じ義務を持つのが連帯保証人です。

銀行で保証人といえば、通常はこの連帯保証人のことを指します。
   

(3) 物上保証人

担保を提供したことだけに限定した保証人のこと。

例えばアパートローンで敷地を父が所有、父は高齢で連帯保証人にするのは忍びないといったケース。

銀行の担保になった不動産についてのみ保証人になるので、銀行から債務者本人より先に督促されることはありません。

担保提供者とも呼ばれます。もちろん本人が返済できなくなれば、担保となった不動産は取上げられてしまいます。

それがイヤなら自腹を切ってでも返済しなければなりません。そういった意味から、特に物上保証人と表現するのです。
   

人的担保における注意点

「保証人になったばっかりに…」
「保証人になることは恐ろしい」
「保証人になどなるものじゃない」
「保証人になったばっかりに、家屋敷から財産全て失う羽目になった」

これらは世間一般でよく聞くことばです。

そして、もちろん悲しいことですが全て事実です。

仕事上の付き合いで、あるいは古くからの友人だからなどの情実的な理由で他人の連帯保証人になるひとは、今の時代そうはいないでしょう。

誰もが連帯保証人になりことの怖さを知っているからです。

また最近の銀行融資では、過度な人的担保(保証人)や過度な物的担保(不動産担保)は求めないよう法律で定められています

ですから以前のように何人も大勢の保証人を探してきたり、工場から自宅までそれこそ家屋敷全てを担保に差し出したりして、やっと銀行からカネを貸してもらえる、といったケースなどはまずありません。

しかしながら、銀行の方針や融資の金額などケースによってはやはり保証人が必要になる場合があります。

家族内だけですませられたとしても、やはり自分以外の人間に保証人になってもらうことの重大さはしっかり考えたうえで、決めるべきです。

意に沿わない保証人や担保を求められるのであれば、その銀行と融資取引することそのものをしっかり考えて決断すべきです。

なぜなら、あなたの目の前にある銀行だけが銀行ではありませんから。(執筆者:加藤 隆二)


《加藤 隆二》
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加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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