銀行融資の「取上げ基準」を知ろう【第2回】 資金計画や資金使途について ~どんな計画なのか? なにに必要なのか?

資金計画 ~シナリオ・どんな計画なのか?

融資申込みをすると、銀行員から資金計画の提出を求められます。

資金計画とは「新規事業をはじめる」、「工場を新築する」といった新しい機会への挑戦という前向きな理由だけではありません。

通常の事業活動のなかで「経費節減のため生産ラインを縮小、そこで生じる一時的な売上減少に対するつなぎ資金」などの守りの理由も含みます。

つまり、

前向きな理由も後ろ向きな理由も含め、事業において何かを成し遂げるために、必要な資金に関するシナリオ

のことです。
 
計画は、事業資金融資申込みには必須です。

店頭に出向いてひとこと「貸して欲しい」ではダメなのです。

資金計画

銀行を「納得させる」筋書きになっているかがポイント

例えば、具体的に

(1) 計画の概要 「これからこんなことをする」

(2) 計画の効果、目的 「これをやれば、このように良くなる」

(3) タイムスケジュール 「そのために、いついつまでに」

(4) 資金使途 「これこれのためにこれだけの資金が必要になる」

(5) 資金調達が必要な理由 「だから貸して欲しい」

となります。

こうした説明がなければ銀行員・銀行を納得させることはできません。

納得させることができなければ融資を受けることもできません。
 

資金計画なくして事業は動かない

資金計画の大事な点は、あくまで銀行から融資を受けるというところです。

そもそも手許の資金で足りるなら、銀行から融資を受ける必要がありません。

当然資金計画も作る必要はないのです。
    
新工場建築などの大型設備では、数千万から億の資金が必要になるでしょう。

こうした資金をすべて自己資金でまかなうのは、とても無理です。

ですから、銀行に融資を受ける必要があり、銀行を納得させるために資金計画が必要となるわけです。

資金計画は事業計画ともいわれます。

「いつまでに、何をどうやって、どこにいくら払って、どこからいくら回収する。」

銀行融資を受けるために、経営者であるあなたの頭の中に常にある計画を、いかに文章にするか。

それだけなのです。

資金計画の作り方

資金計画、事業計画には決められた文章はありません。

つまり正解はないのです。

ただし盛り込むべき内容が、しっかりと盛り込まれていなければなりません。

これは上記した5つのポイント

(1) 計画の概要
(2) 計画の効果、目的
(3) タイムスケジュール
(4) 資金使途
(5) 資金調達が必要な理由

が網羅されているかということです。

(1)~(5)まで順番に並べれば、タイトルだけでもう計画のアウトラインは完成です。

あとは具体的に中身をつめていくだけです。

銀行員が好む表現をちりばめよう

この計画づくりで重要なのは、

・(1)~(5)と順番通りにすすめること。

・最後の(5)の理由は、必ず「銀行からの融資なくしてはこの計画の実現は不可能であり、ぜひ本事業計画の実現、ひいては地域経済の発展のためにもぜひ前向きに検討願いたい」といった文章で結ぶこと。

です。

融資を申込んでいても卑屈にはならず、まるで融資することが銀行の義務であるかのような印象すら与えます。

実は、銀行員はこういう文章表現が大好きなのです。

銀行員の言語

営利企業でありながら、「地域発展のために」、「お客様とともに未来へ」などと高尚な理想を掲げているのが銀行です。

本音はどうか?は別にして、銀行員はこうした高尚な言葉がお気に入りです。

またそれ以外にも銀行員特有の、好きな表現というものがあります。

これらは個人的な意見ではなく、銀行のホームページや、銀行内部で用いられる融資稟議書でもひんぱんに使われる言葉、つまり「銀行員の言語」ともいうべきものです。

以下、いくつか紹介します。

・「地域経済の発展に資する」

・「本件融資は、中小企業支援育成という当行の使命に相応しいものである」

・「当行の融資なくして当該事業者の発展は望めない」

・「本件融資を実行することで、当社における金融機関シェアは〇〇銀行を抜いて当行が第一位となる」

など、事業計画には上述したような銀行員好みの言葉を散りばめると効果的です。

資金使途 ~お金の色・なにに必要なのか?

お金に色はあるのか? なにいろなのか? これはなぞなぞではありません。

お金の色とは資金使途のことです。

工場建設なら、設備資金 →工場建設が目的なので「新設」、「拡張設備」と表現します。

上述のように、資金の目的である「なにに必要なのか?」を表すことを「カネに色を付ける」と、銀行では表現しています。

それと似た表現で「運転資金には色がない」という言葉があります。
  

運転資金は無色?

運転資金というのは、たとえ仕入や支払に使っていたとしても、一度融資して口座に入金されてしまえば、あっという間に他の売上金などと混ざって、お金の区別がつかなくなります

日常的に運転資金として使うカネなのですから当たり前…といえばそれまでですが、「運転資金に色がない」とはそういう意味なのです。

これに対し、設備資金では、設備に支払うまで厳密に資金が管理されます。

通常は別口座を作成して自由に支払ができないようにしておき、必要な時だけ資金解放しているのです。

設備資金に対して、運転資金は厳密な資金管理はされません

原則「どこにいくら支払った」などの資料提出をもとめられることもありません。

あくまで顧客を信用して、当初申込んだとおりの資金使途で使われていると、銀行は信じるだけです。

そのために、大きな落とし穴があるのです。

運転資金に大きな落とし穴

色がないからこそ、嘘はダメ

だからといって、運転資金を何に使っても良いというわけではありません。

商品仕入の資金使途で融資を受けた運転資金で、私用に使うベンツを買ってもいいのでしょうか?

もちろんダメです。

このケースでは二つ違反をしています

(1) 運転資金を設備(自動車)に流用している違反

(2) 運転資金を当初の目的以外に使用している違反

運転資金を設備資金に流用してしまうと、本来の事業で必要な資金が自動車というモノに変わってしまうわけで、当然この自動車から売上は生み出されません。

設備は設備資金で調達すべきであり、運転資金の設備流用はいけません

そして、そもそも運転資金で受けた融資金を他の目的に使っています。

当初目的以外での使用はいけません

こうした違反を総称して「資金使途違反」といいます。

資金使途違反は犯罪ではないので、逮捕されることはありません。

しかし、資金使途違反が判明したら、もう二度とその銀行で融資を受けることはできません

また、その融資は原則即座に全額返済を求められるでしょう。

場合によって、違反が悪質・高額であり、最初から銀行をあざむくつもりだったとされた場合などでは、銀行から詐欺罪で訴えられる恐れもあります。

「一度借りたカネを何に使おうとこっちの自由。ちゃんと返せばよいのだろう。」

などという勝手な理屈は通用しませんので、注意が必要です。(執筆者:加藤 隆二)

この記事を書いた人

加藤 隆二 加藤 隆二»筆者の記事一覧 (11)

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。
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