※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

【お悩み相談】30年間、妻の実家に搾取され続けた56歳の婿殿 財産分与をせず離婚するには?

税金 相続・贈与
【お悩み相談】30年間、妻の実家に搾取され続けた56歳の婿殿 財産分与をせず離婚するには?

父親の遺産相続のせいで、娘夫婦が熟年離婚

父親の遺産の分け前をめぐって、娘夫婦の関係がおかしくなり、離婚を避けられなくなる…

そんなケースも世の中には一定数、存在するのですが、今回は私のところの相談実例をご紹介しましょう。

「いずれ遺産をもらえる」という前提で、婿入りから30年間、給料の全額(月3万円のこずかい以外)を実家に渡し続けてきたのに、結局、相続時に一銭ももらえず(返してもらえず)妻との離婚を決断したという、まさに「正直者がバカを見る」を地で行く悲惨な男性の話です。

桜木徹、56さい

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:桜木徹(56歳)→会社員(年収900万円)旧姓は渡辺。☆今回の相談者
妻:桜木明美(53歳)→専業主婦
妻の父:桜木清(享年78歳)→1年前の逝去
妻の母:桜木和子(77歳)→年金生活
妻の妹:桜木信子(51歳)→専業主婦
娘:桜木真衣(28歳)→会社員。徹と明美夫婦の子

結婚の条件

「家内とはかれこれ30年連れ添ったんですが、実は別れようと思っています。すべてが馬鹿馬鹿しくなってきちゃって…今まで桜木家のために身を粉にして尽くしてきたのに…」

徹さんいわく、妻と結婚するにあたり、妻の両親から3つの条件を付けられたそう。

1つ目は妻の両親と同居すること。
2つ目は義母の世話をすること。
3つ目は両親の面倒を最後まで見ること。

徹さんが「婿入り」という条件を受け入れたのは、妻の父親が「桜木家の財産はすべて徹君に任せる」と約束してくれたからです。

結婚の条件

結婚生活

「お恥ずかしいことですが、実はほとんど貯金がないんです。」

結婚当時、徹さんの手取りは毎月25万円。

一方、徹さんのこずかいはわずか3万円に抑えられていたそうです。

しかも、昼食代が含まれた金額なので、徹さんが自由に使えるお金はほとんど皆無でした。

まともな大人が月3万円でやっていくのは至難の業。

月3万円のお小遣い

「タダで住まわせるわけないでしょ! ちゃんと入れるものを入れなさいよ。」

妻の母親がそんなふうに言い出したそうです。

もちろん、食費や水道光熱費、公共料金など日々の生活費を両親が支払っているので、徹さん夫婦が「自分たちの分」を両親に渡すのなら、まだ話は分かります。

しかし、実際には逆でした。

日々の生活費はとりあえず徹さんの給料ですべて支払っていました。

だから、本当なら両親が徹さんに対して「自分たちの分」を渡さなければなりませんが、残念ながら、徹さんが両親からお金を受け取ったことは、30年間ほとんどなかったそうです。

「他のところでアパートを借りたら家賃が発生するでしょ! だったら、うち(実家)に住むにしても家賃を払うべきでしょ!」

そんな身勝手なやり方が、母親の流儀。

そもそも実家は先祖代々受け継いできたもので、当然のことながら住宅ローンは存在せず、家を維持するのに必要なのは、せいぜい固定資産税と徹繕費くらいです。

もし、徹さんが両親へ家賃を上納すれば両親は丸儲けです。

しかし、結婚から30年間、父親の口座へ毎月6万5,000円を滞りなく入金し続ける羽目になったのです。

とにかく今だけ我慢すれば、いずれ自分が桜木家を継ぎ、すべての財産を継ぎ、そして何もかも自由になると思っていたそうです。

父親の死

父親の死

しかし、父親が亡くなっても「遺産協議」の場に呼ばれることはなく、すでに逝去から10か月が経過。

もちろん、徹さんは「長女の夫」として、遺産協議の場で意見を言うつもりでいました。

「これを見てください。これがお父さんの遺志ですよ。何か文句はありますか?」

妻の妹が徹さんに対して突きつけてきたのは、戸籍謄本のコピーでした。

徹さんは当然のように自分の名前が「養子」として書かれているものだと思い込んでいました。

父親は婿である徹さんと養子縁組をしていなかったのです。

法律上、「長女の夫」という立場では、父親の財産を相続する権利(法定相続分)は発生しません。

法定相続分を主張するには「父親と養子縁組」をしなければなりませんが…

この時、30年間張り詰めていた緊張の糸がプッツリと切れてしまったようで、徹さんは「妻との離婚」を決断したのです。

「現金な奴と罵られても結構です。とにかく桜木家と縁を切りたい。素直にそう思いました。」

父親の財産

父親の財産

徹さんは、婿の立場のため財産目録(遺産の内訳、合計などを記した書面)を見せてもらうことは難しいです。

徹さんが掴んでいたのは、

1. 家賃の積立
2. 市からの補償金
3. 実家の土地

という3つだけでした。

1. 家賃の積立

1つ目は家賃の積立ですが、前述の通り、徹さんは結婚から30年間、妻の実家で暮らし、父親に対し、家賃として毎月6万5,000円(360回。計2,340万円)を納めてきました。

一方で、両親の生活費も徹さんが負担してきたので、今までの家賃はそっくりそのまま残っている可能性が高いでしょう。

昨年、妻の父親が亡くなり、遺産は妻の母親が2分の1、妻、妻の妹が各4分の1という具合に相続したのですが、これまでの家賃が手つかずのまま残っているとしたら、前述の按分割合を当てはめると、妻の相続額は585万円になります。

そもそも家賃の原資は徹さんの給与であり、それは夫婦の共有財産であり、同時に離婚財産分与の対象です。

だから、妻は本来、585万円の2分の1にあたり、292.5万円を徹さんに渡さなければなりません。

しかし、徹さんは同居期間中、家賃も含め、すべての生活費を負担してきたからこそ、妻や子供が経済的に何不自由ない生活を送ることができたのも動かぬ事実です。

「30年間の貢献を認めて欲しいという気持ちもあることはあるのですが、お金にこだわっていません。何より一刻も早く、桜木家と縁を切りたいんです。」

このような徹さんの気持ちを踏まえて、妻に対して「すぐに離婚に応じれば財産分与の請求権を放棄してもいい」と提案したのです。

2. 市からの補償金

2つ目は市からの補償金です。

今から6年前、市の道路建設に伴い、実家の土地と建物の一部を手放し、その代償として補償金を得たことを徹さんは知っていました。

物件移転等補償費提示調書、土地価格提示調書によると、桜木家が得た補償金は約1億円です。

そして前述の補償金で別の土地を購入し、その上に建物を建てたのですが、土地の路線価(当時)は1㎡あたり13万円なので土地の地積が165.55㎡の場合、評価額は2,152万1,500円となり、また建物の再調達価格(当時)は1㎡あたり14万円なので、1階2階の床面積の合計が114.27㎡なので、建物の評価額は1,599万7,800円です。

市からの補償金は約1億円、購入した土地は約2,100万円、建物は1,600万円なので、まだ6,300万円の現金が残っているはず

また妻の法定相続分は全体の4分の1なので、補償金が手付かずに残っていれば、妻は1,575万円の現金を相続しただろうと推測できます。

3. 実家の土地

また買い上げの対象になったのは実家の全敷地ではなく、その一部は買い上げを逃れたそうです。

だから、まだ手放していない土地があり、路線価は1㎡あたり15万円で地積は124㎡なので評価額は約1,800万円です。

相続の結果、妻は4分の1の所有権を持つことになったので、この土地を売却すれば妻は450万円を得ることができるのです。

さらに妻の父親は生前、将来的に桜木家の財産を徹さんに譲渡することを約束していたのですから、本来、前述の補償金を得る権利は徹さんにも発生していたにも関わらず、徹さんは約束を反故にされました。

「裏切られたという気持ちが強く、約束を守って欲しいのはやまやまです。しかし、桜木家の人間とこれ以上、関わりたくはないんです!」

このような徹さんの切望を反映させて、妻に対して「今すぐ離婚に応じれば、補償金の請求権を放棄してもいい」と伝えたのです。

離婚後の妻の生活はどうなる?

妻と離婚します

そもそも妻は徹さんと離婚したところで、お金の面で日々の生活に支障が出るのでしょうか?

妻の手元にある財産はどんなに少なく見積もっても、計2,610万円(補償金1,575万円、家賃の積立585万円、実家の土地の余り450万円)あるのは確実でしょう。

妻の母親は現在、施設に入居中で、しかも現在77歳とかなりの高齢です。

だから妻よりも妻の母の方が先に亡くなる可能性が高く、再度、遺産相続が発生しますが、妻の父親が亡くなったときと同じように法定相続割合に則って相続するのなら、妻も妻の妹も2分の1の遺産を得ることとなるのです。

妻は今後も実家に住み続けるでしょうし、家賃はかからないのだから、手元にある父親の遺産と、これから入ってくるだろう母親の遺産があれば、人並みの生活を送ることは十分に可能でしょう。

そして最終的には妻も離婚に応じ、晴れて徹さんは桜木家から出て行くことができたのです。

徹さんの退職金と年金は…

徹さんの退職金と年金

ところで、婚姻期間中に増加した財産は法律上、夫婦の共有であり、離婚時に夫の財産と妻の財産を合計し、その合計額を夫と妻を折半するのが原則です。

一応、妻には徹さんの退職金、厚生年金を「よこせ!」という権利があります。

まず退職金ですが、徹さんは自動車メーカーに勤めており、55歳のときに同じグループ会社へ転籍したそうです。

「妻は『同じグループ会社だから、退職金は転籍前、転籍後の分をあわせて、60歳のときに出るんでしょ』と勘違いしていたようで助かりました。」

徹さんは離婚協議中、「退職金を請求されたらどうしよう」と内心、ドキドキしていたようです。

それもそのはず。

なぜなら、正しくは「転籍前の退職金は転籍時(55歳)に支給されていた」からです。

しかも1,800万円という大金です。

徹さんは退職金を妻へ渡さずに済んだのです。

次に年金ですが、婚姻期間中、夫が納めた厚生年金の最大2分の1を妻に付け替える制度のことを離婚年金分割と呼びます。

妻は「年金分割」という制度を全く知らなかったようです。

最後に

徹さんは新しくお金を手に入れたわけではありませんが、「本来なら減らされるお金を減らさずに済んだ」という意味では、お金の面でも最低限の収穫を得ることはできたのです。(執筆者:露木 幸彦)

《露木 幸彦》
この記事は役に立ちましたか?
+1

関連タグ

露木 幸彦

露木 幸彦

露木行政書士事務所 代表 1980年生まれ。国学院大学・法学部出身。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7,000件、離婚協議書作成900件を達成した。サイト「離婚サポートnet」は1日訪問者3,300人。会員数は20,000人と業界では最大規模にまで成長させる。「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。読売、朝日、毎日、日経各新聞、雑誌「アエラ」「女性セブン」「週刊エコノミスト」テレビ朝日「スーパーJチャンネル」TBS「世界のこわ〜い女たち」などに取り上げられるなどメディア実績多数。また心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し、累計部数は50,000部を超え、根強い人気がある。 <保有資格>:行政書士、AFP 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事

特集