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「アパートローン審査」で銀行はここを見る!【第3回】 収支:収支について詳細に~「家賃」と「金利」

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「アパートローン審査」で銀行はここを見る!【第3回】 収支:収支について詳細に~「家賃」と「金利」

ハウスメーカーなど業者がアパート経営を提案する時は、「提案書」などで収支のシミュレーション結果を示してきます。

アパートローン審査においては、実のところこうした業者提案書を、銀行はそれほど重視していません。

なぜなら銀行独自で収支を予想して審査するので、業者提案は参考程度にしかならないのです。

これは第2回:動機の項で説明しました。

同じく「銀行シミュレーションで用いる数値は、審査の根幹にかかわる極秘事項です。

万一これが公表されれば、すなわちその数値に合わせたシミュレーションを作られることになるからです。」とも説明しました。

収支の予想はアパートローン審査の最重要項目です。今回はこの収支を左右する以下の2点について更に詳しく説明していきます。

 (1) 家賃:収入の根幹~だからこそ予想が難しい!
 (2) 金利:支出の根幹~ネガティブな想定だが、それが現実!

  

家賃:収入の根幹~だからこそ予想が難しい!

家賃について~銀行の考え方


収支:業者予想と銀行予想はなぜ違ってくるのか?

前項「第2回 動機」で収支について説明したとおり「アパート経営は儲からない」という銀行の基本スタンスがあります。

下記要因が作用し、収支予想では業者提案と銀行試算で大きな違いが生じます。

(1) 業者予想は「理想形」⇔銀行は「最悪のパターン」
(2) 空室のリスク、契約のリスクを盛り込むので銀行予想はネガティブ
   
業者は提案する⇔銀行は審査する、このスタンスの違いが大きく影響するので、業者、銀行では収支予想に違いが生じます。

これは「業者がウソで、銀行が正しい」といっているのではありません。それぞれの基準で収支を予想しており、その基準が違うだけなのです。

こうした基準について、以下家賃にかかわる「空室率」「家賃設定」を例に説明します。

空室率について

アパート経営において収支の収 → 収入は家賃です。ハウスメーカー業者の家賃保証、サブリース付きが現在アパート経営の主流です。

家賃保証なしのアパートも地方などでは見受けられますが、やはり大部分は家賃保証付きです。

家賃保証のある業者提案では、空室率は当然0(ゼロ)です。

一括借り上げですから、オーナーが入居の心配をせず、安定した家賃収入を見込める。それが家賃保証、サブリースなのですから。

家賃保証、サブリースは絶対ではない?

しかし銀行の審査では「家賃保証、サブリースは絶対ではない」と想定しています

当初何年間という契約で、次回以降も更新していくはずの家賃保証が、実際には更新されない場合があるからです。

この点は契約書にもしっかり記載されていることではありますが、いわば「途中でハシゴを外される」のは、アパート経営ではよくあることで、収支予想で銀行はこの点を盛り込んで考えるのです。
  

銀行が想定する家賃収入

家賃収入の予想は非常に困難です。上記のように家賃保証も、いつどうなるか予想ができないからです。

このことから、銀行は想定されるなかで最もネガティブなシナリオで家賃収入を予想します。(*保守的な銀行の場合です。融資審査のスタンスは銀行によって異なります)

ネガティブなシナリオとは? 具体的に説明


ネガティブなシナリオとは、例えば以下のとおり

「家賃保証なし、空室率は周囲にある古いアパートの平均値と同じ」

実際には家賃保証があっても、審査上では無視します!

空室率も、周りにある古いアパートと同水準で考えます。現実では新築のほうが当然古いモノより入居率は高くなりますが、ここでもネガティブに想定します。

ネガティブに考えるのが融資審査の基本

家賃保証付きなのだから、少なくとも最初の契約期間中くらいは空室率0で考えられないのか? そう思われる人もいるとは思います。しかし、これが銀行融資審査の基本です。

家賃保証はない、として審査したうえで融資したものであれば、本当に家賃保証がなくなってもローン返済は続けられるはずです。

なぜなら「最初から家賃保証はないものとして審査した」のですから。

「転ばぬ先の杖」ではなく「歩いていれば必ず転倒する。でもその時のケガは最悪でもこのくらいだから大丈夫」と考えるのが銀行です。

金利:ネガティブな想定だが、それが現実!

業者と銀行の違い

業者の考える金利


業者提案ではよく『金利は〇〇%で一定と仮定しました』という表現があります。

これはウラを返せば『〇〇%で一定で無ければ儲からない』という場合もありますので注意が必要です。

なぜならアパート経営における収支の支→支出の根幹は金利(利息)だからです。

融資額が大きく、かつ借入期間が長いアパートローンでは、収支予想をする場合、金利がわずかでも上昇すると、それだけで収支がマイナス→儲からなくなる場合があります。

ですから業者は細かく調整して、収支がプラスになる金利を見つけて、しかも実際に銀行で実現しそうな金利水準調整したうえで提案書を作っています。

ちなみに空室のリスク、契約のリスク(家賃保証、サブリースが途中で打ち切られるリスク)も、業者提案では影響が少ないように調整してあったり、場合によってはこの部分がまったく抜けていたりするモノさえあります!

これは別にいけないことではありません。

提案する以上は、魅力的なモノにしたいというのは、当然の心理です。

銀行の考える金利


繰り返しになりますが、アパートローン審査の中身は公表できません

その基準に合わせて業者が提案を作る、などの事態にもつながるため、審査の根底を揺るがしかねないからです。そして金利については、その中でも最重要の項目です。

審査の公平性を保つため、銀行の想定する金利水準は、間違っても外部に漏らしてはならない点をまずご理解ください。

そのうえで、あくまで基本的な部分について説明します。

ひとことでいうと、銀行の想定する金利水準はネガティブです。しかしこれは現実に即した部分もあります。

以下固定金利タイプと変動金利タイプに分けて説明します。

固定金利タイプ

例えば「5年間は固定金利で〇〇%」「最初から最後まで固定金利で〇〇%」

上記のように固定金利タイプもいろいろありますが、基本性質は以下の通りです。

変動金利より固定金利のほうが高い

 固定金利の期間中に繰り上げ完済(他行への借り換えも含む)すると高額な手数料を払わなければならない

固定金利の期間が「短いと金利は低い」⇔「長いと金利は高い」

ちなみに手数料が高額になるタイプでは、変動金利より低い金利設定になる場合もあります。

銀行の収支予想では、固定金利タイプの場合、固定金利の期間はその金利で試算し、そのあとは変動金利になると仮定します。(変動金利は後述)

変動金利タイプ

変動金利タイプの基本性質は住宅ローンなどと同じです。

収支予想においては、実際よりかなり高い金利水準で想定します。

変動金利の宿命でもありますが、景気に左右され金利は上下しますので、銀行ではネガティブに想定します。

具体的な水準は明示できませんが、金利の低い順に並べると業者提案<銀行が公表している変動金利<想定の金利<バブル期の水準:6%以上となります。

「業者、銀行の一般的水準より高く、バブル期の水準よりは低い」といったところです。

銀行が想定する金利水準について~まとめ

業者提案では変動1%台もあり、銀行の公表水準は変動2.475%程度。バブル期水準は6%程度。

これらの中間に位置するのが、収支予想で想定する金利です。

その金利水準は読者の皆様でご想像ください。

変動金利の推移については、銀行は膨大なデータを保有しています。こうしたデータより収支を計算する場合の想定金利は、決して高すぎる設定ではありません。

それなりに実現性がある金利だといえます。つまり、ネガティブな想定ではあっても、あくまで現実に近いものなのです。(執筆者:加藤 隆二)

《加藤 隆二》
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加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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