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「全社員へのマネー教育」で社員が生涯で使えるお金は2割以上も変わる

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「全社員へのマネー教育」で社員が生涯で使えるお金は2割以上も変わる

今回は、企業の社長や人事・総務担当役員など、企業が社員に提供する諸々の条件を考える立場にある人に特に読んで貰いたい。

もちろん、社員の立場から彼らに向かって、「我が社も是非やりましょうよ!」と言ってくれる読者も大いに歓迎する。

「やりましょう!」の対象は「社員全員に向けたマネー教育」だ。

マネー教育の効果を考える前に、多くの企業に存在する退職金制度や企業年金制度の意味を確認しておこう。

マネー教育の重要性

退職金や年金の意味

退職金や年金の意味とは

社長に問う。

退職金制度はなぜあるのだろう?

建前で「頑張った社員へのご褒美だ」と答える社長さんが多いのかもしれないが、経済的な正解はお金を退職金で渡す方が「税金が得だから」だろう。

退職金にも所得税は掛かるが、20年までの勤続年数に対して1年当たり40万円、20年を超える勤続年数に対して1年当たり70万円の金額が、所得から控除される。

これを社員の側から見ると、同じ金額の人件費を会社から受け取れるとして、一部を退職金の形で貰うことで社員は税金で得をして実質的により大きな金額を受け取ることができる

逆に、会社の側から見ると、社員に一定の実質額を渡すに当たって退職金を利用するとそうしない場合よりもより少ない人件費負担で済むということだ。

企業年金にも同様の効果

社員は、企業年金の掛け金分の所得を現役時代の所得から控除して将来に備えることが出来、運用期間中は運用益に途中で課税されずに効率のいい複利で資産を運用することが出来る

老後に所得が減ってから年金の形でお金を受け取ると適応される所得税率が現役時代よりも低いといった税制上のメリットを受けることが出来る

企業年金でも、社員から見ると一定額の人件費を受け取るに当たって税制上のメリットがあって実質的な手取額が増えるということだし、会社側から見ると、社員に同じ実質額を渡すに当たって税制上のメリット分だけ人件費を節約できるのだ。

厳密に経済的損得を計算するには、お金を「貰う」あるいは「払う」時点の差やその間の金利などについて考えなければならない。

退職金制度や企業年金を使うことによって税制上のメリットが生じていることと、それが、社員と会社と双方のメリットになっていることがご理解頂けよう

退職金、企業年金などの福利厚生制度を適切に運用することの経営的重要性は明らかだ。

社員のマネーリテラシー向上の効果

さて、企業の人件費支出全体を考えると、もちろん給与やボーナスの形で支払われる部分が大きいだろう。

そして、社員は貰った報酬の一部を当面の生活費に充て、一部を将来への備えに回すはずだ。

殆どの場合、老後の生活費は公的年金や企業年金だけでは賄えない。

給与やボーナスの中からある程度の金額は老後の備えに回す必要があるし、このお金は適切に運用し管理するべきだ。

現役時代にどの程度の金額を老後の備えに回すべきなのかは、人によって異なる。

老後への備えとして手取り所得の20%程度を貯蓄・投資にまわす

筆者の計算では、厚生年金だけのサラリーマンの場合、手取り所得の20%程度を老後への備えとして貯蓄・投資して行くと人生の経済的辻褄を合わせられる場合が多いようだ

手取り収入が毎月30万円の人は6万円、50万円の人は10万円の貯蓄・投資が必要だ。

もちろん、企業に確定拠出年金制度があればここに積み立てる掛け金を勘定にいれていいし、個人で別途確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISAなどを使っている場合の積立額も合わせて考えていいのだが、個々の社員は結構な額のお金を自分で運用しなければならない。

マネーリテラシーの優劣差はいかほどか

20年後変わってくる

さて、ここで社長や人事担当役員に是非考えて欲しいのは、社員が自分のお金を適切に扱うことが出来るか否かで、社員が生涯に亘って実質的に使うことが出来るお金の大きさが大きく変わることだ。

仮に、1人の社員が学校卒業後に就職して65歳くらいまで40数年働き、この間にお金を運用するとしよう。

計算を単純にするために運用期間がざっくり平均20年あるとして、マネーリテラシーの優れた社員とそうでない社員とでどのくらいの差がつくだろうか。

例えば、1,000万円を20年間運用するとして、年利0.01%のメガバンクの定期預金に入れておくと一年間に1,000円しか利息が付かないので(正確には税引き後は約800円になってしまう)、殆どお金が増えないことは言うまでもない。

それでは、リスクを取って運用するとして、現在、年金基金や信託銀行など、いわゆる機関投資家が内外の株式に想定している期待リターンは「5%」くらいだ。

仮に金融商品の中身が年利5%で運用できるとして、手数料をメガバンクの窓口で売っている投信の信託報酬並みに年率1.5%取られるとすると、20年後の金額は約1,990万円となる計算だ(年利3.5%の複利運用。税引き前)。

一方、マネーリテラシーが改善して手数料を年間0.5%以内に抑えて4.5%で複利運用できると約2,412万円になる

2割以上増えている。

「手数料」について正しく理解するだけで、「金融機関の言いなり」と「自分で運用する」のとではこれだけの差が付くのだ

実際に、社員が銀行等の金融機関で資産を運用すると、信託報酬だけではなく、販売手数料を取られるだろうし、20年間の間には商品を乗り換える勧誘もあるだろうから、販売手数料を何度も取られて、もっと残念な結果になる公算が大きい。

せっかく支払う人件費が有効活用されないのだから、経営者は大いに悔しいと思うべきだろう。

重要な注意点

社員のマネーリテラシー教育は、それほど難しいものではないが、重要な注意が1つある。

それは、

取引銀行や証券会社などに社員に対する教育を「絶対に」頼まないこと

だ。


オオカミの前に生け贄の子羊をまとめて差し出すようなことをしてはいけない!(執筆者:山崎 元)

《山崎 元》
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山崎 元

山崎 元

経済評論家 株式会社マイベンチマーク 代表取締役 1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、野村投信、住友生命保険、住友信託銀行、シュローダー投信、NBインベストメントテクノロジー、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、第一勧業朝日投信投資顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所に勤務。楽天証券経済研究所客員研究員、国家公務員共済組合連合会資産運用委員会委員。1994年東洋経済高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。2005年1月に株式会社マイベンチマークを設立し代表取締役に就任。 寄稿者にメッセージを送る

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