
私の子どもが私立中高一貫校を受験したのは2年前になります。
複数の中学校の入試説明会に参加しましたが、「WEB出願導入」という学校が2校ありました。
願書提出を紙ベースではなく、インターネット上でのシステムで行う方法で、導入校は年々増えています。
出願システムの変化とあわせて「同日午後受験」も取り入れている学校が増えています。
こちらの受験方法については、試験初日のみに行う学校が大半です。
「WEB出願」と「同日午後受験」は、受験生にはありがたい話ですが、考えて受験しないと、お金の面で困ることになります。
では、「WEB出願」と複数校受験と関係する「同日午後受験」で、一体何がよくて何が怖くなるのかを解説します。
目次
ますます導入が広がる「WEB出願」
中学受験では願書と内申書(調査書や通知表の写しもあり)をワンセットで出すのが一般的なルールでした。
最近の中学受験は、内申書は参考程度とし、当日の試験得点から合否を判定するという方向が強くなり、複数の学校へ出願する手間を簡素化するために生まれたのが「WEB出願」です。
「超難関校」と言われる学校でも導入を開始している学校が増えています。
<参考資料>
東京・開成中学校 「平成31年度 生徒募集要項(pdf)」

内申書なしの中学校では、入学後に出身小学校へ「6年間の指導記録」などの資料提出を出すよう依頼をします。
WEB出願とは?

紙での出願では、親御さんは間違えないように下書きを行ってから、清書をする手間が必要になります。
郵送や持ち込み、受験料の振込もあり、複数の学校を受験するのであれば、親御さんは1日がかりの仕事になります。
「WEB出願」は受付期間中に、各校のホームページ内の専用サイトで、個人情報などを間違いなく入力し、事前に用意しておく「お子さんの顔写真データ」を取り込みます。
一部の学校では、顔写真は受験票発行時に貼り付けとする場合はあります。
支払い方法はクレジットカード払い・コンビニ支払いなど選ぶことができ、支払い完了になると、受験票を自宅やコンビニでプリントアウトできます。
スマホ・タブレット・パソコンから出願可能になっています。
しかし、ネット環境に問題が出た、ご家庭でプリントアウトできないという場合は、学校で事前予約か特定日にパソコン類を貸してもらうことができます。
WEB出願のメリットとして
WEB出願は、ご家庭から受付期間中、24時間いつでも手続きができる為、送料や交通費の負担が軽くなります。
本命だった学校が不合格になって、まだ受験受付を行なっている学校が「WEB出願」対応であれば、受験日の前日もしくは当日でも出願手続きが可能になりました。
学校側は、WEB出願を導入することで、受験料の入金確認や受験番号管理、合否管理と発表、入学金受理管理も簡単に済ませることができ、大きな経費削減につながります。
WEB出願のデメリットってあるの?
学校ごとで対応が異なりますが、支払い方法次第で、受験料の手数料が少し高くなることです。
子どもを受験させた時は、WEB出願時にカード払いで決済をして、1,000円の手数料が発生しました。
最近は、どの支払い方法でも、手数料を同一(800~900円)とするところがあります。
他には、
・二重送信をした。
・WEB出願をしたのに、窓口受付でも出願した。
などがあります。
学校ごとで対応は違いますが、WEB出願の場合は、受験料支払いが完了するまでは、データの修正はご家庭でできます。
支払い完了になると親御さん側での修正はできません。
慣れない出願方法で、親御さんが一番戸惑いますが、学校側に申し出れば、修正や重複分の取り消しと受験料返金などの対応に応じてくれます。
同日午後受験を取り入れている学校が増えたことについて
親御さんの考え次第で、候補を決めてから、複数校受験で乗り切ろうとするご家庭はあります。
塾でも、中学受験の受け方について、複数校受験を勧めてきます。
複数校受験で、超難関校合格者を出すと、塾側の宣伝になるので、成績のいい子にかなり勧めてくるという塾さえあります。
学校側は、より多くの受験希望者を取り込むために、「同日午後受験」を取り入れる方向に進んでいます。
優秀な子どもさんが合格して、その後入学してから学校のレベルが向上すると効果を狙っているからです。
受験する側としては、「超難関校」は1日しか受験チャンスがないのがほとんどです。
作戦として同日午後受験校を、滑り止め校もしくはチャレンジ校として受験できるというメリットが生まれます。
つまり、学校側と受験側とにメリットがあるというわけです。
<参考資料>
大阪信愛中学校 募集要項

「同日午後受験」は、受験校の数を広げ、チャレンジできる学校を増やすことになります。
しかし、受験校を増やすことは、落ち着いて考えなければ、意外な高額出費となります。
えっそんなにかかるの? 中学受験の入試費用

最近の私立中学校の受験料は、1校で2万円~3万円の範囲内がほとんどです。
しかし、複数コース受験や受験校が多くなるほど受験料の負担が大きくなります。
私の子どもが受験した学校では、受験初日の午前と午後に別々のコースを受験しましたが、1コースのみであれば2万円、同日2コース受験で、3万円を支払いました。
例として、複数の私立中学を受験したご家庭で、4校受験したケースでは、平均2万5,000円として、2万5,000円×4校=10万円となります。
よって、受験料として最低10万円は用意する必要があります。
さらに、受験校の出願方法に関わる諸費用や手数料代を考えると、金額がどんどんかさみます。
複数受験をして、合格すれば避けられないお金「入学金」

中学受験の合格発表は、基本は学校内での掲示板発表です。
WEB出願受付校では、専用サイトで合否確認ができますが、合格確認後に、すぐ入学金納付ということがありますので、学校に直接出向く必要があります。
後日、入学金を指定口座へ振込とする学校はありますが、支払わなければ、合格取り消しになります。
入学金については、全国的に見ると平均として20~30万円です。
学校によっては、入学金を納めるタイミングと同時に、施設費や諸費用を納めなければいけない学校はあります。
一旦納めた入学金について、「入学意思なし」と申し出れば、全額もしくは半額返金してくれる学校はあります。
しかし、入学金を納めれば、理由を問わず返金しない学校があります。
<参考資料>
平成31年度 灘中学校 入試要項(pdf)

実力試しでの受験校であれば、入学金を納める必要性はないでしょう。
親御さんとしては、実力試しの学校が、子どもさんが通ってほしい学校であれば、入学金を納めることで「他校がダメだった時の保険」と考える方もいます。
合格のことで、すっかり入学金のことを忘れている親御さんは、意外と多いです。
本命校の合格が入金漏れで、合格取り消しになることもあります。
出願を考えている学校の入試説明会で、必ず出願方法や諸費用は確認し、あらゆるパターンは考えつつ、金銭面のことも考えて入学金を納めるかどうかを考えてください。
落ち着いて、よく受験費用を考えよう
今では、多数のシステム会社が、WEB出願システムを開発・提供をしています。
既に多くの私立高校・私立大学の受験出願にも使われています。
<参考資料>
法政大学 インターネット出願について

WEB出願は、今では高校・大学受験に使われ、中学受験での「同日午後受験」は、受験のチャンスを広げたことにはなりますが、複数校受験となると高額出費となります。
出願校の入試要項はよく読んで、受験費用が総額でいくら必要かを計算してください。
WEB出願は便利ですけれど、子どもさんの精神力やご家庭の家計・貯蓄にまでに影響が出ないよう、よく子どもさんと考えて受験を考えてください。(執筆者:笹倉 奈緒美)