この記事の最新更新日:2020年8月2日

「老後破綻」、「下流老人」と、老後の資産破綻問題

過去に、老後破綻についての紹介をさせていただきましたが、「生活保護を受ければいいのでは?」という意見をいただきました。

生活保護世帯数の調査では、「若年層の申請が減っている」という結果は出ていますが、総数では生活保護数は年々増加しています。

若年層の申請が減っているのは、平成24年に第2次安倍内閣が誕生してからの雇用状況の改善が、大きな影響を与えていると考えられます。

ただ令和2年に入ってからは、新型コロナウイルスの影響により、雇用状況が大幅に悪化しているため、若年層の申請が増えていくかもしれません。

また総数では生活保護数は年々増加しているのは、日本の高齢化が大きな影響を与えていると考えられます。

その理由として高齢者の多くは、年金だけでは十分な生活ができないので、預貯金などの資産を取り崩しております。

また取り崩す資産がなくなり、老後破綻や下流老人のような状態になると、生活保護が必要になってくるので、日本の高齢化が生活保護数を増加させています

生活保護について、実情を聞けた方の話を交え、

「簡単にはできない、生活保護」

として紹介します。

生活保護とは

過去10年間の生活保護者データー

生活保護制度とは、

生活に困窮する方に対して、その困窮の度合いに応じて、必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保証するとともに、自立を助長することを目的としている

と厚生労働省が定めた制度です。

また生活保護を受けられるようになった場合、次のような8つの扶助の中で、被保護世帯が必要とするものが支給されます。

・ 生活扶助:食費、光熱費、被服費などを満たすための扶助

・ 住宅扶助:家賃や地代などを支払う必要がある時の扶助

・ 教育扶助:義務教育に必要な費用(学用品費、給食費など)のための扶助

・ 医療扶助:診療、薬剤、施術などが必要な時の扶助

・ 介護扶助:介護サービスを受ける時の扶助

・ 出産扶助:出産をする時の扶助

・ 生業扶助:生業費、技能習得費、就職支度費、高等学校等就業費などを必要とする時の扶助

・ 葬祭扶助:葬儀などを行う時の扶助

生活保護を受ける条件

・ 世帯収入が最低生活費以下であること*1

・ 預貯金、現金、保険、持ち家、車、総排気量が125ccを超えるバイク、高価な貴金属がない*2

・ 援助してくれる家族・親族(親・子・兄弟姉妹・叔父など3親等以内)がいない*3

・ 病気などの理由があって、働くことができない

・ これらのことを書類で全て証明できること

【注釈】
*1 収入については、働いて得た賃金の他に、年金、保険金、車や家の売却金、雇用保険の基本手当や児童手当などの手当、退職金、家族・親族からの仕送り、養育費も世帯収入として計算されます

*2 条件次第では生活保護対象となります

*3 自治体によっては、該当親族からの調査で、「なぜ援助できないか」という書面提出を求めています

最低生活費以下とは?

世帯収入が、最低生活費以下でなければ、生活保護を受けられません。

自分の世帯に必要な最低生活費がわからない場合は、居住地の福祉事務所もしくは、市区町村役場の生活保護課で調べて、計算した結果を教えてもらえます。

厚労省が掲げている令和元年10月1日現在の生活扶助基準額の例は、高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)では、東京都区部などで12万240円、地方では、10万2,430円としています。

生活扶助基準額とは、「最低生活費」でもあり、生活保護を決定する基準金額です。

この数字は目安であり、家族構成や年齢などで金額は変わります

例えば家賃を支払っている時は、住宅扶助が支給されるため、生活扶助基準額に住宅扶助基準額を加えたものが、最低生活費の目安になります。

支給される生活保護費の内訳
≪画像元:厚生労働省(pdf)≫

審査が通らない…

生活保護を申請すると決めれば、居住地の福祉事務所、もしくは自治体の生活保護課へ必要書類を用意して、提出すれば、調査がスタートします。

生活状況などを把握するために、ケアワーカーによる実地調査からはじまり、お金に関する調査、就労ができるかの調査、親や子供など3親等以内の親族への支援可能かの調査などが入ります。

しかし、生活保護の調査は厳しく、年齢や条件次第では却下されます。

調査の結果、却下される理由の代表例

・ 1か月分の最低生活費の半分よりも多い預貯金を持っている

・ 持ち家・不動産・車などの売却できる財産を持っている

・ 家族や親戚からの援助が見込める、もしくは支援を申し出た

・ 働ける状況である。(かなりのご高齢では除外になる場合あり)

・ 福祉事務所に非協力的で不審な点が見つかった場合

・ そのほかの理由(反社会的勢力に入っているなど)

借金がある場合でも生活保護を受けることはできますが、生活保護費を借金返済に充てないこと、定期的なケースワーカーの訪問に必ず応じることを約束することになります。

受給中も返済義務は残りますので、法テラスなどで返済方法の相談をしてください。

ケースワーカーの訪問については、生活保護法で義務付けられています。

<参考資料>
生活保護法 62条(2項より上の序文)

もし、借金返済のために、生活保護費を使ったことや、あらたな借金が発生したことがわかった場合は、返金や支給停止となります。

年金の支給を受けている方でも、年金支給額が低く、売却する資産もない場合は、審査の上、生活保護を受けられます。

注意点

年金支給額の合計が、最低生活費を超えると、生活保護は打ち切られます

特に年金支給年齢前に、生活保護が開始になった世帯は、年金支給の65歳に達した時に支給額について、相談する必要があります。

年金支給額の合計が、最低生活費以内であれば、生活保護費は減額されますが、年金の支給と生活保護を受けられます。

しかし、年金支給額の合計が、最低生活費を超えれば、生活保護の受給を止められます。

なお年金支給額の合計を算出する時は、老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金など)だけでなく、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金など)や、遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金など)も含めます。

また令和元年10月から、低所得の年金受給者に対して支給されている「年金生活者支援給付金」は、世帯収入の中に含めるため、年金と同様の取り扱いになります。

認められた代表例

却下される事項に入っていても、状況次第では審査を通過します。

・ 住宅を持っているが、ローン完済済み。売却しても利益が見込めないと判断された場合

・ 車を保有しているが、病気や公共の交通機関が悪い地域に住んでいるため、生活に問題が出る

・ 車などの売却額が低い場合(福祉事務所での判定となります)

・ 3親等(親・子ども・兄弟姉妹など)からの援助が不可

(福祉事務所からの調査に協力がなければ援助不可と認める)

・ 奨学金の返済中、住宅ローンを持っていても返済金額が少なければ認める

これらは一例ですので、ケアワーカーや福祉事務所側での判断にゆだねます。

なぜ申請しても却下されるか

生活保護申請却下

申請で却下されてしまう、途中で受給がストップしてしまうというケースがあります。

申請で却下されてしまう多くの例が、

「受給条件を徹底的に調べていない」

「事前に福祉事務所に相談していない」

ということが多いです。

20代で身体障害者2級の方で、働いていたけれど、倒産になり再雇用先が見つからず、一人暮らしで生活が苦しくなった為、生活保護の申請を考えた方がいます。

必要書類を用意して、申請をしたのですが、却下となりました。

後日、改めて福祉事務所へ相談したところ、

障害を持っているけれど、今まで働いていたという過去から、働ける体力と年齢がある

として、生活保護の対象外になるとわかり、申請を断念されました。

審査を通過して受給が始まると、所得申告をしなければいけません。

もし、パートやアルバイトに出ているならば、隠さず申告しなければ、減額や打切りはもちろん、悪質と判断されれば刑事訴訟につながります

実際に生活保護だけでは苦しくて、アルバイトに出たことを、申告せず受給を止められた方は多いです。

受給条件は満たしているけど、申請をしない

本来は生活保護対象でも、申請をしない、もしくは拒む方はいます。

母子家庭の方なら、お子さんの人数・年齢によっては、生活扶助額の加算、教育費の援助制度や無償化にする制度はあります。

しかし、お母さんの年齢や職歴などで却下されるケースや、あえて申請をしないという世帯はあります。

シングルマザー

キャリアアップの為に資格をとるために、多額の費用が必要でした。

周りから生活保護を受けた方がいいと言われたけれど、生活保護を受ければ、資格取得の費用が「所得」とみなされると知っていたので申請をしませんでした。

複数のバイトを掛け持ちして、資格取得後はすぐに雇用先が見つかったので、生活保護を申請せずに済みました。

ホームレス

本来は生活保護対象なのですが、申請を勧めても拒否をされる方もいらっしゃいます。

支援団体や支援者がいれば、申請は通りやすいのですが、

「行政からのしばりを作られること」

「親族への調査で、現況が知られてバッシングを受ける怖さ」

から、保護団体で保護をしていても、行方知れずになることが多いです。

ご本人たちは、「自給自足で十分だからいい」という答えで、生活保護は不要であると、いう考え方もあります。

参照:Quora「なぜ生活保護の制度があるのにホームレスがいるのでしょうか?」

生活保護は慎重に

生活保護を受けると監視される

生活保護の申請と受給は、該当要件がそろっていれば、すみやかに行われます。

申請がどうしても通りにくく、理不尽な理由をつけられる場合は、NPO団体などの協力を求めると、団体の職員が同席して不服申し立てをし、通過することはあります。

しかし、生活保護を受けるということは、国の税金から支給されたお金で、生活することになるので、周りが監視するという姿勢になります。

車を売却して、生活保護を受けられる条件になったあと、知り合いの車に乗り、通報されて福祉事務局で事情を長時間聞かれたというケースがあります。

社会的な状況で生活保護を必要としなければならないケースはありますが、かなり細かい調査や、親族にも迷惑をかけることも配慮して、申請について考えてください。(執筆者:笹倉 奈緒美 監修:木村 公司