第1回目の「異文化対応スキル」に続き、第2回目は「コミュニケーション力」を取り上げる。

コミュニケーションと言うと、多くの人がすぐに思い浮かべるのが「英語」であるが、「英語」は「コミュニケーション」の一部にしか過ぎない。

「コミュニケーション」の語源は、ラテン語で、communis (共通の)communio(交わり、一致)、munitare(舗装する、通行可能にする)ということで、双方が共通の目的によって交流することを意味する。(引用元:Wikipedia

英語は双方の交流の媒体の1つに過ぎない。

では、外国人労働者を日本で受け入れために必要なコミュニケーションは、どのようなことが必要であるかを3つ程取り上げたい。

これから必要なコミュニケーションとは

1. 対等な立場を意識する

これは語源の意味から非常に重要な要素である。

外国人は犯罪者ではなく、不法で入国した方でないという前提であるが、通常の外国人の入国目的が、労働ということであれば、お互いに働くために必要な交流を指す。

外国人労働者が、企業内の中で働き、上司部下の交流となる場合、本来の「コミュニケーション」の「共通の」という部分であれば、会社のルールや、しきたりなどを指す。

ただ、この場合「共通の」という部分で、時折双方の価値観が異なる場合も存在するため、一方的に上司(または会社側)が、「言い渡す」ことのないようにしたい

「言い渡す」行為は、「指示」という言葉がより適切かもしれない。

部下の外国人を持った場合は、弱い立場にあるので、本音を言わない場合が多々存在する(外国人ではなく、日本人でも同様である)。

これは、オランダの社会心理学者ホフステッドが行った調査から導き出した5つの指標(権力格差。個人主義、男らしさ、不確実性回避、長期的視点)のうち、「権力格差」に影響する視点と、他社と特定領域だけを関わるか、複数領域(例えば仕事だけではなく、生活の領域)と関わる程度によって、説明が可能である。

例えば、下記の問いは国によって、大きく差異が出ている事例である。

上司が部下に対して、家のペンキ塗りを手伝うよう依頼した国毎に異なる部下の回答例

ペンキ塗り頼まれたらどうする

A. 手伝う必要なない。上司は職場だけのことだ。会社外では、なんの権限もない

B. 手伝うことは、その気にならないのは事実だが、上司なので、やむを得ず手伝う。上司は職場外でも無視できない存在である

出所:「異文化の波」フォンス・トロンペナールズ、チャールズ・ハムデンターナー2001年著(白桃書房)P153を筆者が加工(注:アンケート当時、日本ではペンキ塗りの家があまり存在せず、実態よりは数値が低く出ていると解説されている)

異文化の波

≪画像元:amazon

この事例は、権力格差だけではなく、仕事とプライベートを分離という要素も含まれているが、国による違いがよく表れている。

中国人の場合は特に「面子」の問題があるため、同じアジアでも、より上司からの依頼には断りにくい特徴が突出している

一方で、アメリカ人ややイギリス人等は、仕事とプライベートは、はっきりと区別しているため、上司からの依頼でも、部下は上司の依頼を断っても差し支えない様である

日本人は、すでに日本企業が進出しているタイやマレーシアだけではなく、今後より進出する地域のインド人と同様の結果が出ている。

このように、権力格差が存在している会社で、コミュニケーションを促進するためには、やはり対等の立場にたって情報交換する重要性が出てくる。

2. 外国人の意見を引き出すこと

上司の言うことは、どこの国でも「絶対的存在」ということには変わりない。

逆に部下が、言いにくい環境に陥った場合、上司は、部下の言うことをどこまで尊重するかがその組織での活性化が決まる。

1で対等的な立場となった場合、次に重要なことは、「外国人の意見を引き出すこと」である

日本語でコミュニケーションをする場合で、部下の外国人がうまく上司に話すことができない場合、それは「仕事」が原因であるか、「日本語能力」が原因であるか区別する必要がある。

いずれの場合でも、今後日本に来る外国人は一定のレベルをクリアしている人たちなので、それらを明らかにすれば、しっかりと双方の意思が流れる。

また秋田の国際教養大学を初め、英語で授業する大学が増加しているため、英語でコミュニケーションできる優秀な学生が増加し、彼らがそのまま日本で就職した場合には、直接日本人とコミュニケーションが可能である。

そういう人たちの意見、考え方を引き出すことは、今後上司だけではなく、職場の同僚とともに、必要となってくる。

それは失われたもうすぐ30年になろうとしている日本経済では、新しい考えの注入による生産性の向上、付加価値創造につながる可能性があるからだ。

例えば、外国人1人になった場合に、会議を英語にするとか、生産性向上の仕事のアイデアをその外国人〇〇さんが持っていた場合、このアイデアは〇〇さんのおかげです等意図的に取り上げることにより、意見を言いやすくなる。

つまり、外国人の意見を採用するかどうかは別としても、その意見を議論のテーブルに乗せること自体が重要であり、今後形成するチームワークにも間違いなく好影響を与える。

意見を引き出す

3. 新しい価値観を認識する

外国人が会社に入ってくると、新しい価値観にどうしても出くわすことになる。

これはよくも悪くも避けて通れない関門である。ICT(Internet Communication and Technology)と食文化の事例を各1つとりあげた。

ICTの事例

ICTの世界では、インド人と、日本人のシステムの発注の仕方は全く異なる。

わかりやすく記載すると

日本人 : 要件定義を記載し発注した後、修正をすることは問題とならない。一つのシステムができ上がるまでには多大な時間がかかる。

インド人 : 要件定義を記載し発注した後、基本的に修正しない。環境が変わってシステムの修正が発生した場合、別途発注をする。一つのシステムにかかる時間は予定通りとなる。

インド人の仕事の仕方を採用した場合、「時間が読める」、「別の仕事に時間が割ける」などのメリットが出てくる。

特に、老後の年金が10年後、20年後に本当にもらえるかわからないと不安に思っている国民が多い中で、今から将来のための趣味に時間を使い、社会の関りを持つことによって、人生がより豊かになる可能性を秘めている。

食文化の事例

外国人が日本に入ってくると、食文化も大きく変わることとなる。

日本人が海外の出張先で、現地の料理を堪能できたことが、外国人の来日により、日本での食文化も大きく変化して、日本でも味わうことができる。

下記のものが、東京だけではなく、地方にもたくさんレストランが出店すれば、楽しみが増え、日本における食文化が豊かになる可能性を秘めている。

・ 中国の麻辣香鍋(肉や野菜等を鍋の中で炒めた料理。唐辛子や山椒、ニンニク等の香辛料入)

・ ベトナムのフォー(米でできたベトナム式うどん)

・ インド、ネパール地方のカレー(豆、チキン、魚等)

現実的には、外国人が日本に入ってくることによるマイナス面も存在することは否定しないが、プラス面も多く想定できる。

食文化が豊かになる

新しい価値観を自分のものにするまでは、相当時間がかかるしそれこそ個人の価値観の問題である。

まずは外国人と接することにより、新しい価値観を認識し、次のステップには多くのメリットがあることを理解すれば、それを個々人が取り入れるかどうかの物差になる。(執筆者:廣田 廣達)