目次
令和2年度より新学習指導要領が始まる
令和元年が始まりました。
令和3年度より新学習指導要領が全面施行される予定です。
子供の教科書も厚くなっていますが、今後の教育費に備えるのに何が一番いいのでしょう?
教育費を用意するには
「奨学金で間に合うのでは? 」
「外貨建ての保険の方がいいのでは?」
「掛け捨てでも大丈夫なのでは?」
など、迷う人も多いようです。
学資保険について、メリット・デメリットを考えてみましょう。
また学資保険と他の保険や奨学金との比較も行ってみます。
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教育費は右肩上がり
文部省の平成28年度学習費調査によれば高校までの教育費は、
・全て私立だと約1,770万円
・幼稚園と高校が私立だと約792万円
・幼稚園だけ私立で、後は公立だと約616万円
でした。
これらは全国の平均で、「塾や習い事はさせていない」人も入った金額なので、「大きな都市に住んで塾や習い事をさせる」なら、上記の額に100万円はプラスして予定した方がいいでしょう。
教育資金の総額や家計で負担できる額は知っておいた方が良いです。
高校までの学費と自治体の補助については以下の記事も参考にしてください。
大学の学費が右肩上がりに上がっています。
文部科学省の調査によれば、平成18年度と平成28年度の私立大学授業料は83万6,296円から87万7,797円と5%値上がりしています。
授業料の他に入学金が約30万円、施設費も約10万円かかり、文系でも初年度納付金が130万円超える大学は多いです。
ちなみに日本政策金融公庫の調査をもとにすれば、
・私立・文科系は約700万円
・私立・理科系は800万円以上
必要とのことです。
少なくとも教育費としては大学だけで500万円は用意しておく必要があります。
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文部科学省の私立大学授業料より日本政策金融公庫の金額が多いのは、複数の大学の受験料や滑り止め大学の入学金等が入っているからです。
昨年は、各大学が合格する学生数を減らした影響もあり、今後ももっと値上がりする可能性もあり、子供を大学にやりたい場合、教育費の準備は必須です。
不足額が多いようなら、収入を増やすか、教育資金の総額が少なくなる形で計画した方が良いでしょう。
使う時期が決まっている教育費は、財形貯蓄や学資保険など簡単に引き出せない金融商品で確実にためることが、より望ましいでしょう。
学資保険って元本割れするの?
まず、教育費を用意する「定番」とも言える「学資保険」について確認してみましょう。
学資保険とは子供保険とも言われます。
通常、保護者が保険契約者、子供が被保険者で契約し、子供の入学や進学に合わせて、祝い金や満期金を契約者が受け取ります。
「運用率が低いので自分で運用の方がいい。」
という意見を聞いたことがありませんか?
確かに低金利下、元本割れの学資保険もあります。
その代わりに子供の医療保障(日帰り入院含む)もつけるなど、保険機能も兼ねた学資保険もあります。
ちなみに契約期間中に契約者(保護者)が万一死亡したときの育英年金を保障するタイプの学資保険は現在なくなりました。
学資保険のメリット、デメリット
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学資保険の運用利率は現在確かに低いのですが、保険機能は契約者(保護者)が死亡時に保険料が払い込み不要になる特約だけにし、貯蓄機能を重視すれば年0.4%で運用したくらいの額になる学資保険もあります。
低い利率ではありますが、自分で運用した場合、必ず年0.4%超毎年資金を増やせるでしょうか?
今は低金利でプロも運用に難航しているのです。
学資保険では、年間支払い保険料のうち4万円(他の生命保険料とも合算)までの「生命保険料控除」が使えるのは大きなメリットです。
契約者が年収700万円なら年8,000円(所得税率20%で計算)の節税となります。
学資保険のデメリットは、契約期間中(最長22年)の運用が契約現在の低利率で固定されることでしょう
デメリットはありますが、学資保険は教育費を準備するには、現実的な保険ではないでしょうか?
学資保険には、保険契約者が死亡した場合、その後の保険料を払わなくてよい保険料免除特約があります。
最低限の保険機能である保険料免除特約があれば、契約者(保護者)が死亡したらその後は保険料を払わないで祝い金や満期金がもらえるのです。
契約者(保護者)が普通に長生きしても預貯金代わりになります。
この特約が元々ある学資保険と、特約として保険料に上乗せする学資保険があります。
最低限の保険機能として、この「保険料免除特約」があるか確認してから、学資保険に入りましょう。
現在加入済の学資保険がある場合も同様です。
このように学資保険は教育費を着実にためられる商品と言えます。
保険期間を10年払いなど短くすれば運用利率を高くでき、年払いにすれば保険料も節約できます。
最近の学資保険は?
長期金利が低迷しており、契約者から預かった資金の運用が難しく、生命保険各社は相次ぎ円建て貯蓄型保険の予定利率を引き下げました。
そのため2017年4月より終身保険や学資保険など貯蓄型保険の月払い保険料は引き上げられました。
例えばある大手生命保険会社の学資保険では、30歳男性が計300万円を受け取るのに必要な月額保険料は、約1万4,500円から約1万6,000円に10%程度上がったのです。
現在契約を結ぶなら一番運用利率がいい生命保険会社の学資保険で契約期間18年で元本が約104%から約108%に増えます。
また、保険機能が充実していないけれど元本割れの学資保険もあります。
良く比較して契約した方がいいでしょう。
学資保険の代わりに終身保険は?
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とは良く聞く話です。
終身保険とは、満期保険金がなく、いつ死亡しても死亡保険金が受け取れる保険です。
一生涯死亡保障が続く分、代の期間限定の死亡保障(定期保険)と比べて、払い込む保険料は高額です。
保護者が若いときから終身保険に入っていて、子供が18歳になるタイミングで解約返戻金が払い込み保険料を上回るなら、解約返戻金を大学学費に使うのはいい方法と思います。
返戻率がより有利で保険料が割安なので「低解約返戻金型終身保険」がすすめられているようです。
払込期間中の解約返戻金が安く抑えられている終身保険です。
これは、途中で終身保険をやめると、解約返戻金が戻ってきますが、やめるタイミングによって、払い込み保険料より少なくなります。
ある低解約返戻金型終身保険の商品は、解約返戻金が払い込み保険料と同じくらいになるのが、保険契約から15年かかりますが、学資保険のある商品は10年で払い込み保険料の元が取れます。
また、保険料負担が重いと感じた時、学資保険は保険金額を減額できるので、支払い可能な水準まで保険料を下げられます。
低解約返戻金型終身保険の商品の場合、減額は一部解約と同じことになり、元本割れ期間中の減額は大きく損をします。
学資保険と終身保険、学費を貯めるのに向いているのは「学資保険」
学資保険は、解約した場合でも契約から10年ほどで解約返戻金が払い込み保険料と同じくらいになり、終身保険は15年以上かかるのです。
思わぬ事態で「保険が続けられない」ことになった場合も、10年ほどで「保険料の元が取れる」のだから「元本割れ」のリスクは終身保険より少ないのではないでしょうか?
払い込み期間に保険料の払い込みが大変に感じたときも学資保険は保険金額をさげ、保険料を下げることができ、元本割れにはつながりません。
終身保険は保険料を下げると一部解約になるので、15年以内の解約は元本割れになります。
これらの理由から「学費は終身保険より学資保険」が適しているといえるでしょう。
※払い込み保険料と解約返戻金は、個別の保険で異なりますので、詳細は各保険会社にお問い合わせ下さい。
学資保険より掛け捨て保険の方がいい?
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という質問もありましたね。
寿命が延びたことが影響して、掛け捨ての定期保険は11年ぶりに保険料が値下がりしました。
共済などで契約者(保護者)が亡くなった時に学費を出すタイプの掛け捨て学資保険がありますが、掛け捨ての保険は学費を貯めるのには向いていません。
掛け捨て保険は、保険料は安いけれど、「保護者が死亡」しないと意味がない保険になってしまいます。
子供が18歳時は保護者も元気である可能性が高く、「契約者(保護者)が平穏無事に長生きした」ときに、「学費のための掛け捨て保険」は保険料分全額損をする可能性が高いです。
例えば、「学資保険で毎月6千円は高い」と感じたとしても、こちらは「貯蓄型保険」なので保険料分が貯蓄されています。
学資保険より無利息の奨学金を借りた方が有利?
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という質問もありました。
結論を言えば、学資保険は保護者が契約し、支払う貯蓄型保険ですが、奨学金は金利無料でも子供の借金なので、性格が全く異なります。
借金は少ない方が返済する子供は楽なので、子供にとっては、奨学金より学資保険が多い方が有利と言えます。
現在では「日本学生支援機構(JASSO)」が奨学金事業を行っています。
年間の利用者が131万人ですが、仕組みが2017年度に大きく変わりました。
新たに住民税非課税など低所得世帯が対象の給付型が加わり、2018年度の新規採用は2万人です。
金額は進学先と通学形態の組み合わせで異なり、国公立大・自宅通学は月2万円、私立大・自宅外通学で同4万円です。
無利子の「第1種」と有利子の「第2種」がありますが、大きく変わったのは第1種で、1学年の貸与人数は4.4万人増の15.1万人(大学院除く)に拡大され、基準を満たす希望者が全員利用できるようになりました。
第1種に限り、「所得連動返還方式」を選べます。
「無利子の第1種奨学金」は子供の内申が3.5以上、保護者の所得制限があります。
各大学の奨学金も増え、新タイプの「予約型」などと呼ばれる給付型の奨学金もできました。
貯蓄である「学資保険」と可能なら「給付型奨学金」で用意し、足りない分を借金である「奨学金」を学校等で予約するのが得策でしょう。
学資保険よりドル建て保険の方が有利?
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という声もあります。
考え方はいろいろですが、必要な時期と額が決まっている教育費の準備に外貨建て保険は向かないという考えもあります。
最大の理由は為替リスクです。
外貨建て保険は、保険料や保険金がドル建てなので、円換算の額は為替相場が円高(例 1ドル=80円)になるか、円安(例 1ドル=120円)になるかによってずいぶん用意できる学費が違うのです。
円で外貨建て保険を契約したときに1ドルにつき50銭、外貨から円に両替する場合、1ドルにつき50銭、往復で1円手数料を取られてしまうのはデメリットです。
ただ経済の読みに自信がある人なら、子供が18歳時円安になると確信がもてそうなら、外貨で元本を保障する外貨建て保険を試すのも1つの方法です。
給付金を外貨のまま使うことができるので、海外へ留学予定がある場合は外貨建て保険を契約してみてもいいのではないでしょうか?
もし運用で教育費を増やすなら?
使う時期が決まっている教育費はなるべく元本保証の金融商品で用意した方が望ましいとは言え、ここ数年の学費の値上がりは大きいです。
貯蓄型保険や定期預金の運用利率の低さを考えると、投資に抵抗なければ、運用して教育費を増やす方法もあります。
将来の運用金利が上昇する可能性もあるので、変動金利型の個人向け国債を買ってみてもいいでしょう。
こうした確実に増やせる商品とあわせて、投資に抵抗がなければ、投資信託や株式などによる運用を考えてもいいでしょう。
運用益が非課税になる少額投資非課税制度(NISA)、つみたてNISAを利用するのが有利でしょう。
保護者が60歳のときに子供が大学入学または在学なら、確定拠出年金(iDeCo)の給付金を教育資金代わりにするのも方法です。
掛け金を全額、小規模事業主控除にすることができ、節税になります。
ただし、確定拠出年金は口座開設時、口座管理、給付金受け取り時と手数料を取られることも多いので、金融機関や金融商品を選ぶ際に注意が必要です。
子供が今何歳かによって、リスクを取れるかも異なります。
子供が生まれたばかりの赤ちゃんなら、18歳まで18年、リスクをとって運用できます。
学資保険の運用利回りが高くなってから(現在のところ子供が10歳まで)、学資保険を契約できます。
学資保険の運用利率がもっと高くなるまで、バランス型投資信託や変動利率型国債を定期的に購入し、生命保険は掛け捨ての安い保険料の保険にしておけます。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)