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投資ファンドが極東貿易に株主提案 成長ストーリーは不鮮明とみる理由

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投資ファンドが極東貿易に株主提案 成長ストーリーは不鮮明とみる理由

市場はストラテジックキャピタルの株主提案を好感

投資会社の株式会社ストラテジックキャピタルなどは、機械専門商社の極東貿易株式会社(8093)に株主提案を行使した。

提案したのは

・資本コスト開示
・保有株式売却
・剰余金処分

以上の3点で、これが買い材料視され、極東貿易の株は大きく買われた

極東貿易のチャート

≪画像元:ヤフーファイナンス

株主資本コストは満たしている?

ストラテジックキャピタルの見解には注意点があるとみている。

資本コスト開示に関して、ストラテジックキャピタルは極東貿易の株価について、

投資家の求める年率リターン(株主資本コスト)をROEが満たしていないために解散価値を大きく下回る状態が継続している

との見方を示した。

しかし今現在、極東貿易のROEは株主資本コストを満たしていると思われる。

重要なのは、

ROEは簿価(帳簿)がベースとなる一方、株主資本コストは時価がベースになる

ということだ。


ストラテジックキャピタルは極東貿易に対する資本コストを8%としている。

極東貿易に投資するならば、年率8%のリターンが適正だと考えているということだ。

極東貿易のROE

≪画像元:ロイター≫

極東貿易のROEは近年だいたい5%前後

これを見れば、ROEは資本コストを満たしていなそうだ。

しかし、肝心なのは前述したとおり「ROEは簿価がベースとなる一方、株主資本コストは時価がベースになる」という点だ。

極東貿易のPBRは0.5倍前後

株価がBPS(1株当たり純資産)よりも低水準なために株式益回り(時価ベースのROE)は倍の10%にまで上昇し、資本コストを満たすことになる。

これを踏まえると、極東貿易は現時点ですでに優良銘柄とみることができ、ストラテジックキャピタルの支援なしでは株が売られ続けるという悲観的見方は通じないと思われる。

成長ストーリーはいまだ不鮮明

成長ストーリーはいまだ不鮮明

余剰キャッシュの処分について、ストラテジックキャピタルは使い道のない、または本業と関係のない使われ方をしているキャッシュを株主に還元することで、極東貿易のROEが上昇するとみている。

ファイナンス的にいえばこれは正しい。

だが、注意すべきはその効能が長期的な成長ストーリーにはつながらないという点だ。

極東貿易は産業用機械の卸売りを手がけており、売上高・利益が成長するためには拠点、人員、販売先を拡大させ、流通網を整えることで資産回転率をあげることが重要だ。

ひいては業務効率改善に向けたオペレーション施策などが肝となるのだが、ストラテジックキャピタルの提案ではそのような事業戦略の指摘はない

総合的な判断

今回のストラテジックキャピタルの提案はBSの左側である資産部分の最適化にはつながるものの、ロングスパンの株価上昇シナリオ構築までには至らないと考えられる。

もし極東貿易への長期投資を考えているのならば、前述したようなオペレーション改善に向けた具体策が出てくるまで静観すべきと考える。(執筆者:高橋 清志)

《高橋 清志》
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外資系投資会社にて株式アナリストとして勤めております。主に「株式投資」の分野で具体的な企業の例を交えながら、資産運用に役立つ生きた知識をお伝えしたいと思います。話題のテーマを取り上げ、噛み砕いてご紹介することで、企業経営や金融に対する「知的好奇心」を満たしたり、数字ベースの堅実な投資スタイルを身に付けられたりできるような記事をご提供していきます。 寄稿者にメッセージを送る

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