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起業家が「開業届」を出さない5つの誤解を解き、彼女が「開業届」を出した5つの理由を説明します

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起業家が「開業届」を出さない5つの誤解を解き、彼女が「開業届」を出した5つの理由を説明します

扶養内で働く主婦起業家や副業起業家の中には、開業届を提出するべきかと悩まれる方がいます。

お話を伺うと、悩む原因は「開業届について誤解」があることだと気づきました。

そこで開業届のよくある誤解を解いていきます

また、実際に開業届を提出した主婦起業家の開業届を出した本当の理由を紹介します。

開業届について誤解を解消

開業届のよくある誤解

誤解1 開業届は事務所や店舗を構えて開業する人が提出するもの

「事務所や店舗を構えているわけではないので開業届は必要がないと思っていた」という方がいましたが、これは誤解です。

開業届は「事業の開始の事実があった日から1月以内に提出」する

と定められています。

フリーランスの方や自宅サロン、自宅教室を始めた方なども「事業を開始した事実」があれば開業届を提出する必要があります

誤解2 開業届を出さずに事業を行うと罰される

「お小遣い程度の収入だったのが扶養の範囲を超えるようになってきた」という主婦起業家の中には「今さら開業届を出すと罰されるのではないか」との懸念から「出すべきか出さざるべきか」と悶々としている方もいます。

開業届は提出の義務がありますが、罰則規定がありません

「趣味が高じていつの間にか仕事らしくなっていた」という方は、罰されることも咎められることもありませんので、今からでも提出されてはいかがでしょうか。

開業日をいつにするか等、詳細は最寄りの税務署にご相談ください

誤解3 開業届を出したら確定申告をしなければならない

開業届と確定申告の要不要は関係がありません

「大した稼ぎもないのに開業届を出すと確定申告をしなければならない」と思い込んで開業届の提出を渋っている方もいますが、開業届と確定申告の要不要は関係がありません

開業届を出していても所得(売上 - 必要経費)が所得控除額(最低38万円)を超えなければ確定申告をする必要はありません

開業届を提出していなくても、事業の所得が所得控除(最低38万円)を超えて課税所得がある場合は確定申告を行う必要があります

なお、副業の場合は給与や年金以外の所得が20万円を超える場合は確定申告をする必要があります

また「開業届を出さなければ確定申告ができない」と思い込んで、報酬から徴収されている源泉所得税の還付申告を諦めていた方もいます。

開業届を出していなくても確定申告を行うことは可能ですし、何ら咎められることもありませんのでご安心ください

誤解4 開業届を提出すると煩雑な事務的負担が増える

「開業届を提出すると事業者として何か特別な事務作業や事業税や消費税など税金面でも面倒なことが発生する」と思っている方もいます。

開業届を提出しても個人事業者である場合、忽ち煩雑な手続きや事務が発生するわけではありません

税金面でも開業届を提出したから事業税や消費税が課されるわけではありません。

事業税は確定申告の結果、事業所得(売上 ― 必要経費)が290万円を超えた場合に賦課課税されます

つまり住民税と同じで自治体が確定申告の情報を元に計算し、税金が発生すれば納付書が送られてきます

開業届の有無に関わらず事業所得(もうけ)が290万円を超えたら支払う義務が発生します。

消費税は前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えた場合に課税事業者となって、消費税の確定申告を行う必要が出てきます。

売上が1,000万円以下の個人事業者は免税事業者となりますので、消費税の申告を行う必要はありません。

つまり売上が1,000万円を超えるまでは所得税の確定申告のみ行えば足ります

開業届を提出することによって、新たに煩わしい事務が発生することはありません。

誤解5 開業届を提出しなければ事業所得ではなく雑所得になる

開業届の有無に関わらず、事業性が認められる所得は事業所得です。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいい、対価を得て行われる資産の譲渡等を繰り返し、継続、かつ、独立して行うことと定められています。

事業所得とするか雑所得とするかで、認められる必要経費が異なったり、所得の計算方法が異なったり、どちらかが得ということはありません

しかし、事業所得にはできて、雑所得にはできないことがあります

例えば、事業所得は青色申告ができ特別控除などの特典が受けられますが、雑所得は青色申告にはできません。

事業所得に損失が生じた場合、他の所得があればそこから損失を引けますが、雑所得はこの損益通算ができません

このような違いがあります。

彼女が開業届を出した理由

開業届を出す理由

前述のように、事業を開始したら1か月以内に開業届を提出するのが原則ですが、出さなくても問題は生じないというのが実情です。

「趣味の延長線上で小遣い程度の収入を得るようになった」というような主婦起業家の場合、事業として届ける必要性を感じていない方も少なくありません。

しかし、そんな扶養内で働く主婦起業家の中にも開業届を提出している方もいます。

では、彼女たちはなぜ開業届を提出したのか、開業届を出した本当の理由を紹介します。

(1) 青色申告をしたいから

特別控除など税制上の特典が受けられる青色申告を行うためには、「青色申告承認申請書」と「開業届」の提出が必要になります。

既に事業を開始している方の場合、3月15日を過ぎると翌年からの適用となりますが、事業を開始する方は2か月以内に青色申告承認申請書を提出すれば、当年から青色申告事業者となります。

青色申告は特別控除があるという節税メリットだけでなく、損失が出た場合にも損失を翌年以降3年間繰り越せるという税制上の特典があります

「初年度は備品をそろえたり、研修に参加したり、収入より経費が大きくなりそうなので」と赤字を繰り越せる青色申告を選択するため、開業届と青色申告承認申請書と同時に提出される方が多いです。

(2) 屋号付口座を開設するため

起業されたら事業用に口座を作られることをお勧めしています。

家計と切り離してお金の出入りを管理することで、お金の流れが分かりやすくなり、後々確定申告の作業もラクになります

個人事業主の場合、事業専用の口座であっても、法人格がないため個人名義の口座となります。

しかし、金融機関によっては屋号付口座(屋号+個人名)を開設できます
       
振込先として個人名だけの口座を案内するより、屋号がある方が安心感や信頼感を与える場合があります。少なくとも事業所らしい印象を与えます。

屋号付口座を開設するためには、屋号が記載された開業届の写しが必要になります。

口座開設の条件や必要書類等は金融機関にお問合せください

(3) 保育所の就労証明に必要だから

フリーランスや自営業の方が保育園の申し込みを行う場合、就労状況の申告書類として開業届の添付が必要書類とされている自治体が多いです。

自宅で仕事ができるとはいえ、やはり子どもがいては仕事に集中することができなかったり、打ち合わせなど外出の際には不都合が生じたり、仕事に支障が出るのではないでしょうか。

一般に自営業の優先順位は低くなるとのことですので、既に事業を営んでいる方が有利であり、稼働しているという証明に取引記録や業務スケジュールも提出したというお話もお聞きしたことがあります

保育園の入園を希望される方は開業届を提出しておかれることをお勧めします

(4) 保険や共済に加入するため

業務上の過失により他人に損害を与えた場合、損害を賠償する保険があります。

例えば、子どもを預かる教室やマッサージ等で身体に触れる仕事、人が集まるイベントを主催する方などが、子どもやお客様の身体にケガを負わせてしまったり、物品を壊してしまったり、損害を与えた場合に備えてこのような保険に加入しておかれると安心ですね。

このような事業用の賠償責任保険に加入する際に、開業届の写しの提出を求められることがあります。

また、「小規模企業共済」という国が運営する小規模事業者のための退職金制度に加入するため、開業届を提出した方もいます

掛金が全額所得控除になるという税制上のメリットがある上、掛金を月1千円~7万円まで機動的に変更できるため、個人事業主の老後資金対策としてお勧めしています。

個人事業主の方が加入するためには、確定申告書または開業届の控えを提出する必要があります。
届け出をする理由は覚悟の表れでもあります

(5) 気持ちの問題

上記、さまざまな開業届を出すメリットを紹介しましたが、実は最も多い理由は、

「個人事業主としての自覚ができる」

「この仕事でやっていくという覚悟できる」

というものでした。

「まだ事業と呼べるほどの収入もないけれど…」、「開業届けを出す必要はないかもしれないけれど…」と思いながらも、開業届を提出したことで意識が変わり数年後には消費税を払うほどに事業を成長させた方もいます

心に不安や後ろめたい気持ち、モヤモヤしたものを抱えたままでは伸びやかに活躍することができないのかもしれません。

3.開業届の出し方と留意点

開業届は国税庁のサイトからダウンロードができます。

個人用事業の開業・廃業届

≪画像元:国税庁(pdf)≫

次のような必要事項を記入して、郵送で提出もできます。

・ 住所、氏名、生年月日、電話番号、マイナンバー
・ 職業、屋号、事業の概要
・ 開業日、所得の種類 等

屋号は記入しなくても構いませんが、屋号付口座を開設する場合は記載されている必要があります

記入方法等、ご不明な点は最寄りの税務署にお尋ねください。

なお、開業届の提出にあたっては次の点にご留意ください。

(1) 開業届は税務署に保管されるわけではありません

開業届を提出される際には、必ず2通作成して税務署の印が押された控えを保管しておきましょう

郵送で出される場合は、返信用封筒を同封すると返送してもらえます

数年前に開業届を提出し、開業届の写しが必要になったためコピーをもらおうと税務署に連絡したところ、「開業届は保管していない」と言われ、再度開業届を提出し直したという方がいました。

開業届の原本がどこかに保管されていることはありませんので、ご自身で大切に保管しておきましょう。

(2) 開業届を提出すると健康保険の扶養から外されることがあります

配偶者の健康保険上の扶養に入っているという方の場合、開業届を提出する際に注意していただきたいのは、健康保険の被扶養者の認定基準です。

一般的には、「年間130万円未満」というように収入または所得を基準に定めている場合が多いですが、開業届の提出をもって扶養を外す、という健康保険組合があります

気になる方は、ご加入の健康保険組合に「配偶者が個人事業者の場合の扶養の認定基準」について事前に問い合わせておきましょう

新元号となった5月、「改元を機に開業届を提出します」、「屋号付口座を開設しました」とセミナーなどで出会った方からの報告が相次ぎました。

開業届の誤解がスッキリ解けて、一歩踏み出した彼女たちの晴れやかな表情と弾んだ声に元気をいただきました。

「まだ開業届は出していないんだけど…」と悶々としている方は、心機一転、令和開業されてはいかがでしょうか。(執筆者:日本FP協会CFP®認定者 小谷 晴美)

《小谷 晴美》
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小谷 晴美

小谷 晴美

しなやかライフ研究所 ファイナンシャル・プランナー(CFP®) 国立教育大学教育学部卒業。前職では中小企業診断士として商業・サービス業の経営指導に携わる。2006年、ファイナンシャルプランナー資格を取得し、「暮らしのお金」と「起業のお金」の身近な相談役として個人相談の他、研修・セミナー、執筆に従事する。zoom相談も開始し、全国から家計や起業にまつわる相談を受けており、1,000件を超える豊富な相談経験から読者の「知りたい」に応える情報発信している。 保有資格:日本FP協会CFP®認定者、日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー、住宅ローンアドバイザー 寄稿者にメッセージを送る

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