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「年金制度」を破綻させてはいけない 年金を守るための「3大重要素」を知る

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「年金制度」を破綻させてはいけない 年金を守るための「3大重要素」を知る

振り返れば、私が年金の専門家になろうと思ってから30年以上がたちます。

1980年代末、1961年の国民皆年金の制度発足からまだ30年に達していなかった時期です。

当時は、高齢者の生活を支えるというと、「年金」というよりも「恩給」という言葉の方がなじまれていたような時代でした。

実は、昨年3月に私自身が年金受給者の仲間入りをしました。

まさか自分が年金受給者になるとは、年金は本当に生涯にわたるものだという思いとともに、銀行口座の入金確認をして実感しました。

年金は電気・ガス・水道と同じ最重要な生活インフラの1つです。

あって当たり前の時代となった現在、公的年金の意義とその価値、上手な付き合い方、そして公的年金をいかに守っていくのか、もう1度しっかりと年金を復習するタイミングかもしれません。

年金は最重要の生活インフラ

年金は最重要の 生活インフラです

偶数月の15日に、

全国で約4,000万人以上の方に入金がある

つまり国民の3人に1人が年金受給者なのです。

30年間、年金制度を見守ってきた人間からすると、当たり前のことなのですが、考えてみると大変なことではないかと思えます。

新聞やテレビなどのメディアでは、「年金は大丈夫なのか」とか、「年金破綻」という言葉が簡単に使われています。

実際に、2か月ごとの年金入金に支障が生じるようなことがあれば、大変なことになってしまいます。

年金受給者にとっては、最重要な生活インフラの1つが年金です。

私は阪神淡路大震災で、電気・ガス・水道などの生活インフラでのブラックアウトを経験したことがあります。

日本全国、津々浦々まで捲きこむような巨大な地震はありません。

しかし、年金というインフラは、全国ほとんどの日本人に影響を及ぼします

ただ、震災のように目に見えないだけです

年金を守る時代に 年金の3大重要素

年金の最重要の3要素

自分が年金受給者になったから言うわけではないのですが、いよいよ年金制度そのものを守る時代になったのではないかと思います。

守らなければならない年金の最も大事なことが3つあります。

それは、現在の年金制度そのものを特徴づけている要素でもあります。

この3つに大きな修正や変更が加えられると年金制度にとっては大問題となります。

その3つとは、

・ 保険
・ 賦課方式
・ マクロ経済スライド

です。

1. 公的年金は老齢・障害・死亡「保険」

公的年金は、なじみのある医療保険や自動車保険と同じ保険という仕組みを使っています。

保険に加入する人からお金を集め、対象となることが起こると保険金が支払われるという仕組み

です。

医療保険や自動車保険は、対象となることが自動車での事故や病気や死亡などです。

社会保険とは、老齢・障害、疾病、労働災害、失業、死亡などにこの保険という仕組みを活用しようというものです。

もちろん、国民全体を対象にした事業としてです。

世界で最初に制度化したのは、1880年代のドイツで、疾病、労災、老齢・障害(年金)です。

これが社会保険の始まりだといわれ、紆余曲折はあるにしても現在でも続いているわけです。

日本では、すでに述べたように1961年からです。

例えば、

・ 老後に備えて貯蓄をしていても、何歳まで生きるかわからない。

・ いつ障害を被るかわからない。

・ 小さな子供がいるときに配偶者を亡くすかわからない。

・ 老後の物価や賃金の変動が予測できない。

といった具合に個人での貯蓄では賄えないことが多いものです。

公的年金は公的な保険であるからこそ、亡くなるまで支給される「終身年金」であり、障害年金や遺族年金といった実質的な価値に配慮した年金を受け取れるものです。

2. 賦課方式

保険という仕組みとともに知っておきたいのが、賦課方式です。

世代間扶養ともいわれて、年金受給世代への年金原資に現役世代が支払う保険料をあてます。

子供が老いた親に仕送りを送るようなものなので世代間扶養といわれます

具体的には、平成29年度末で年金受給者数は延人数で7,464万6,000人、年金総額は約55.4兆円です。

年金受給者数推移

≪画像元:厚生労働省「成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(pdf)」≫

一方で、年金保険の被保険者、つまり保険料を支払っている現役世代の総数は6,733万5,000人です。

基本的な仕組みとしては、徴収された保険料と税金が支払い年金の財源にあてられるということです。

2018年度の年金積立金(運用資産額)は、159兆2154億円です。

簡単に計算してみると、年金受給者1人を被保険者1.65人で支えていることになります。

少子高齢化の議論のなかで、現役世代4人で高齢者1人を支えるといわれていました。

年金に限ると、それが現在では現役世代1.65人で高齢者1人となっています。

しかしながら、年金財政として支障は生じていません(詳細は除きます)。

3. マクロ経済スライド

3つ目がマクロ経済スライドです。

これは2004年の年金改正の際に導入されたものです。

年金は、人の一生に対応するものですから長期的な賃金、物価、人口の変化などに対応していくことになり、必要に応じて年金財政の修正を行うことになります。

その修正方法としてマクロ経済スライドという仕組みが導入されたのですが、これが優れものなのです。

優れた点はいくつかあるのですが、一例をあげると

・ 政治プロセスを経ることなく自動的に給付を調整できる仕組み

・ すでに受給している年金をも対象にしている

ということです。

マクロ経済スライドの詳細については、また別途解説したいと思います。(執筆者:井戸 美枝)

《井戸 美枝》
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井戸 美枝

井戸 美枝

CFP®、社会保険労務士。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに数々の雑誌や新聞に連載を持つ。 <保有資格>:社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、キャリアカウンセラー(GCDF)、産業カウンセラー、発酵マイスター 寄稿者にメッセージを送る

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