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かんぽ生命の「保険の不正販売」

かんぽ生命から委託を受けた日本郵便による「保険の不正販売」が、世間の注目を集めております。
この不正販売は保険を乗り換える際に発生しており、主に次のような3つのケースがあったようです。
1. 新旧の契約を併存させて、保険料を二重払いさせていたケース
新契約を結んでから6か月以内に旧契約を解約すると、旧契約の乗り換えとみなされ、局員の営業成績や手当が少なくなるため、6か月間は保険料を二重払いさせていたようです。
2. 新旧の契約の間に、無保険期間が作られていたケース
旧契約を解約してから3か月以内に新契約を結ぶと、上記と同じく旧契約の乗り換えとみなされ、局員の営業成績や手当が少なくなるため、3か月の無保険期間を作った後に、新契約を結んでいたようです。
この無保険期間に保険事故(死亡、病気やケガなど)が発生した場合には、保険金が支払われません。
3. 新しい保険に加入できず、無保険状態になったケース
大手生保では新契約の審査が完了した後に、旧契約を解約させるのが一般的なのですが、日本郵便の一部の局員は、旧契約を解約させた後に、新契約の契約手続きを進めておりました。
そのため健康状態が悪化したなどの理由により、新契約を結べなかった方が、無保険状態になってしまったのです。
体制立て直しを図るが営利目的では限界も
こういった事態を受けて日本郵便は、2019年度の営業ノルマを廃止して、顧客重視の姿勢に転換する方向のようです。
ただ2007年に郵政民営化が実施され、特殊法人の日本郵政公社は、営利を目的とする「株式会社」に変わったので、株主から選ばれた経営者は、例えば株主に配当金を支払うために、利益を出し続ける必要があります。
そのため顧客重視の姿勢に転換するといっても、限界があるのではないかと思うのです。
非営利組織が母体の共済は顧客重視の運営が可能
一方、「非営利組織」で運営される次のような金融機関であれば、株主からのプレッシャーがないため、株式会社よりは顧客重視の姿勢で運営できると考えられます。
保険によく似たものとして、「全労済」、「都道府県民共済」、「コープ共済」、「JA共済」などの共済があります。
両者を比較したウェブサイトなどをよく見かけるのですが、両者の大きな違いは、保険は不特定多数の方を対象にして、営利を目的にした株式会社で、運営されている場合が多いのです。
それに対して共済は、特定の地域に住んでいる方や、特定の職業に就いている方などを対象にして、非営利組織で運営されております。
この他に共済は保険と違って、最初に一定額の出資金を支払う場合が多いのですが、決して高い金額ではありません。
また株を買って株主になるのと同じように、出資金を支払って組合員になるのですから、「株式会社は株主のもの」であるのと同様に、「共済は組合員のもの」と考えられます。
そうなると株式会社が、株主の利益を優先するのと同じように、共済は組合員の利益を優先するため、組合員が不利益になるような不正販売は、構造的に発生しにくいのです。
これに加えて決算で剰余金が発生した場合、支払った掛金に応じた割戻金を受け取れるという点は、組合員になるメリットだと思います。
ゆうちょ銀行以外の銀行にある預金も保護を検討しよう

日本郵便による保険の不正販売が問題になる前は、銀行が販売手数料の獲得を目的にして、顧客のニーズに合っていない「外貨建て保険」を販売していたことが、問題になっておりました。
ですから、ゆうちょ銀行にある貯金だけでなく、銀行などにある預金の守り方も、考える必要があるのです。
この方法のひとつとして、
ことがあげられます。
これらの金融機関は銀行と違って、特定の地域に住んでいる方、特定の地域で小規模の事業を営んでいる方、労働組合や生活協同組合で働いている方などを対象にして、非営利組織で運営されております。
また共済と同じように、最初に一定額の出資金を支払う場合が多いのですが、出資金を支払うからこそ、組合員(会員)の利益を優先した運営が行われるのです。
なお信用金庫、信用組合、労働金庫の預金は、銀行の預金と同じように、「預金保険制度」によって保護されております。
そのため、これらが経営破綻した場合には、「1金融機関ごとに、預金者1人あたりについて、元本1,000万円までと破綻日までの利息等」が保護されます。
また、例えば労働金庫はコンビニのATMなどで手数料無料でお金を引き出せる場合が多いため、銀行より事業規模が小さいことを心配する必要はないでしょう。
社会福祉協議会なら無利子・低金利でお金を借りることができる

各都道府県にある社会福祉協議会は、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯を対象にして、「総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金」の4種類に分かれている、「生活福祉資金貸付制度」を実施しております。
借入を申し込む際には原則として、連帯保証人を立てる必要があるのですが、連帯保証人を立てなくても、申し込むことができます。
また、例えば総合支援資金の貸付利子は、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立てない場合は年1.5%になるため、銀行のカードローンなどより低い利子で、お金を借りられるのです。
その他に、2022年3月末で申込受付が終了する予定ですが、老齢年金などを受ける権利を担保にして、保健・医療、介護・福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入のための、小口の資金の貸付が受けられる、「年金担保貸付制度」があります。
制度の詳細について知りたい方は、独立行政法人福祉医療機構のウェブサイトをご覧ください。
このように金融機関以外の組織でも、金融機関が行っているような業務を実施している場合があります。
しかも金融機関より低金利で利用できる場合があるため、手持ちの資産の目減りを防ぐために、役立つのではないかと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)