日本では、年に1回は国内のどこかの地域で、大規模な水害や地震による被害が発生しています。
今回は無事でも、いつ自分が被災者になるか分かりません。
もし、何らかの自然災害で大きな被害を受け、自宅が全壊や大規模半壊で「もう住めない」という状態になった場合に、まだ住宅ローンが残っている人はどうすればよいのでしょうか。
条件をクリアすれば、住宅ローンを大幅に減免できる制度があります。
目次
自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(通称「被災ローン減免制度」)とは
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東日本大震災以降、多額の住宅ローンを抱えたまま自宅を失った人を救済するために、全国銀行協会や弁護士が中心となって「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下「被災ローン減免制度」)を策定しました。
このガイドラインを利用することによって、住宅ローン等を借りている被災者が、破産手続きなどの法的な倒産手続によらず、銀行などの金融機関との話し合いにより、ローンの減額や免除を受けることができます。
2016年の熊本地震の被災者が初の適用となったこの制度ですが、まだ一般に浸透しておらず、被災者の対応にあたる自治体職員でも知識のある人が少ないのが現状です。
「被災ローン減免制度」を利用するためには
まず1番にすることは、地域の弁護士会に相談することです。
「被災ローン減免制度」の利用は、まず
になっています。
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しかしながら、銀行によっては対応が悪かったり、窓口担当者が「被災ローン減免制度」を知らなかったりする場合があります。
そのため、被災者はまず
という手順で進めた方が、話が早いのです。
「被災ローン減免制度」は無料で弁護士に依頼できる
「被災ローン減免制度」は、無料で弁護士に銀行との交渉を任せられます。
「自営業(個人事業主)で、ローン返済が残っている工場や機械が使用不能になってしまった」
このような人は、自治体からの義援金までローンの支払いに充ててしまい、自分たちの生活再建に使うお金がローン返済でどんどんなくなっていくという最悪の状況になってしまいます。
と考えてしまいますが、まずは地域の弁護士会へ連絡してください。
相談は無料です。
弁護士会の連絡先は「お住いの都道府県名 弁護士会」で検索するとすぐに分かります。
「被災ローン減免制度」の対象と利用条件

「被災ローン減免制度」の対象は、住宅ローンだけではありません。
「被災ローン減免制度」の対象
・自動車ローン
・事業性ローン(個人事業主のみ)
も対象です。
「被災ローン減免制度」の利用条件
利用するための主な条件は以下の4つです。
(1) 災害の影響で住宅ローン(またはその他のローン)が支払い不能または支払い困難確実と見込まれる。
(2) 災害後の世帯年収が730万円未満になる。
(3)「既存のローン返済額 + 新たな住居の家賃支払い」が世帯年収の40%超になる。
(4) 災害前にローン返済をきちんと行っていた(ローンの滞納がなかった)。
※ 年収や返済比率の要件には例外もあります。
「被災ローン減免制度」のメリット
この制度を利用するメリットには、次のようなものがあります。
(1) 500万円程度の現預金を手元に残せる(自己破産の場合99万円)。
(2) 金融機関のブラックリストに掲載されない。
(3) 原則として連帯保証人への支払い請求はされない。
(4) 500万円の現預金とは別に、被災者生活再建支援金や義援金等の「被災者へのお金」は手元に残せる。
「被災ローン減免制度」を利用することで、住宅ローンの支払いが減免されるだけでなく、自己破産した場合よりも多い金額を手元に残せます。
「住宅ローンを払い続ける」、「自己破産」するより条件がよい
「被災ローン減免制度」では、被災前の住宅ローンがすべて免除となるわけではありません。
手元に500万円(および被災者生活再建支援金や義援金等)だけを残して、土地を含めて持っている財産を処分してローンを返済し「それでも払いきれない部分を銀行に免除してもらう」という制度です。
しかし、住めなくなった家の住宅ローンをずっと払い続けたり、自己破産したりするよりは、条件はよいはずです。
被災後の生活再建のため、この制度をぜひ活用してください。(執筆者:2級FP技能士 久慈 桃子)